公開日 2014/05/13 11:39

【第86回】今回もやります!「春のヘッドフォン祭2014」高橋敦の超個人的ベスト5

[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
高橋敦
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【第3位】アナログの粋!

いろんな意味で「アナログの粋!」を感じさせる製品がいくつか出展されていてそれぞれ印象に残ったので、それらをまとめてここで紹介させていただこうと思う。

まずオーロラサウンドはアナログレコードのヘッドホン再生システムを展示していた。

本来であればヘッドホンアンプ「HEADA」の方が主役になるべきイベントだと思うのだが、ブースで説明してくれた同社代表にして設計者の唐木氏の熱意は完全にフォノイコ「VIDA」の方に傾いており、実に熱く解説してくれた。

こちらはフォノイコライザーアンプ「VIDA」

そしてこちらがヘッドホンアンプ「HEADA」

なじみのない読者の方もいるかと思うのでまず簡単に説明しておくと、フォノイコライザーアンプとは、アナログレコードプレーヤーから送り出された信号を適正な周波数バランスに調整して、以降の段(この場合はヘッドホンアンプ)に送り出す回路であり、本機はその単品機器だ。

でVIDAなのだが、その肝心の周波数バランス調整を行うイコライザー回路の心臓部とも言えるフィルターコイルが、ルンダール社による特別開発品だというのが最初のポイント。スウェーデンのルンダール社はコイル(トランス)の分野では誰もが知る一流。ハイエンドから自作までオーディオ界隈はもとより、プロオーディオ機器での採用例も枚挙に暇がない。そのルンダール社がオーロラサウンドの意向を取り入れて開発した品が、本機には搭載されている。

また回路設計としては完全DC回路を実現。信号経路にひとつのコンデンサーも使わないことを達成している。

オーディオにおいてコンデンサーは音質のキーパーツのひとつであり、高品質高音質なコンデンサーの搭載はオーディオ機器の常套句だ。しかし逆に言えばコンデンサーは多かれ少なかれ音に色を付けてしまい、あとはその大小の差や方向の違いだという話でもある。…じゃあ、コンデンサーなくしちゃえばよくね?

まあ発想としてはそういうことなのだろうが、それを実際に、オーディオ的に高い完成度で成し遂げるのは容易ではないだろう。ちなみにポータブルアンプで時折見かける「カップリングコンデンサーレス」「出力コンデンサーレス」といった回路構成も同様の意図からのものと思われる。

さて実際に聴いてみての印象は、恐るべき説得力!ジェフ・ベック氏の「Wired」を聴かせていただいたのだが、音が太く、しかし切れがよく、さらには暖かい。ギターのクリーンとクランチ、透明感と歪みの入り混じるあたりの音色のニュアンスも実に豊か。このあたりは自らもギターを演奏するという唐木氏の感性が生きているのかもしれない。まあとにかく何というか、アナログ再生の「昔ながらの最先端」を実感させていただいた気がする。

続いてはコニシスのヘッドホンアンプ「PD901」だ。外観的には普通に無駄なくコンパクトで凝縮感のあるアンプで、機能的にも普通にアナログ入力のヘッドホンアンプだ。

装飾のないソリッドな雰囲気のヘッドホンアンプ

内部にそびえる4基の巨大なヒートシンクの下には?

しかしこいつの売りは「ビンテージパーツによるディスクリート構成」であること。具体的には例えば心臓部の増幅素子としては、メタル缶パッケージの、しかもかなりでかいトランジスタを搭載している。巨大なヒートシンクをまとったそれは、樹脂パッケージのトランジスタよりも明らかに音が良いとのこと。その他、一部のコンデンサー等もビンテージパーツ。

ビンテージパーツの利点は例えば単純に、そのパーツ自体の大きさにもあるという。現代的な(例えば極端に言えば表面実装チップのような)小さなパーツとは共振点が異なり、音響的な悪影響が少ないというのだ。

何とも微細なレベルの話だが、設計や実装を突き詰めていくとそういうところに行き着いてしまうのかもしれない。そして実際、古めのジャズのシンバルの「荒い鈴鳴り」とでも言えばいいのか、そういった独特の質感までも鮮明に、このアンプは届けてくれていた。

最後に中村製作所「ACler Porta NTX-1」。当連載でも以前に紹介させていただいたシリーズの最新モデル。このシリーズはポータブルプレーヤー等のヘッドホン出力とイヤホンやヘッドホンの間に入れて使う。接続位置としてはポタアンと同じだ。

カードサイズより少し縦が短い感じで完全に手のひらに収まる程度の小ささ

こんな感じで(左に写り込んでいるのはAK100MK2)接続して使う

しかし理屈も効果も異なり、こちらはアイソレーション・トランスというパーツを用いることで、ヘッドホン出力に混入するノイズ成分を遮断してくれることが特長。その効果+トランスを通すことでの微妙な音質変化によって、実に静かで落ち着いた音色と音場を生み出してくれる。またその仕組みからもうひとつ、電源電池不要のパッシブ機器であるという利点も得ている。

そして新型の本機はより贅沢な素材を使ってさらに低損失&広帯域化したトランスの搭載、アルミ削り出し筐体等によってその効果をさらに高めている。実際、少しの試聴でも「これは…明らかに!」と実感できる音の違いだ。

なおさらに今回はおまけ要素として、従来は1対1の出力比のトランスを使っていたところを少しだが出力比を上げたトランスにしてあるとのこと。つまり少しだが、パッシブ機器なのに音量アップの効果もある。ここは本機の主目的ではなくそれ目当てで本機を選ぶところではないが、なかなかおいしいおまけ要素だ。

あとさらにさらにというか、こちらも本機の新型としての大きな売りのひとつだが、本機はバランス駆動対応だ。どういった再生機器とどういったケーブル等の組み合わせでどういった動作になるかというのは、まあ色々なので詳細は省くが、気になった方はその点もチェックしてみてほしい。

次ページいよいよ大詰め【第2位】DSD 11.2MHz=DSD256登場!

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