公開日 2008/11/07 09:34

【詳報】パナソニックと三洋電機、三洋の買収・子会社化に向け協議開始 − グローバルエクセレンス実現への大きなエンジンに

国内最大の電機メーカー誕生へ前進
Phile-web編集部
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会見で握手をする大坪社長と佐野社長
速報でお伝えしたとおり、パナソニック(株)と三洋電機(株)は、両社間の資本・業務提携に関する協議開始に合意したことを発表。本日記者会見を開催した。

会見は両社が本社を置く大阪にて行われ、パナソニック(株)大坪文雄社長と、三洋電機(株)佐野精一郎社長が出席。同内容が東京にも中継されるかたちでの開催となった。

同社は今回の同意に伴い、実行プロジェクトチームを立ち上げ、パナソニックによる三洋電機の子会社化を前提とする資本・業務提携の成立に向けて協議を推進。本年12月末を目処に進捗状況を発表する予定。ただし「その前に一定の合意が成立した場合は、決定し次第速やかに開示」するとのことだ。

今年に入りケンウッドとビクターの経営統合・持株会社の設立などがあったが、大手電機メーカー同士の買収・子会社化は初めて。両社の売上高の合計は11兆円を超え、国内最大の電機メーカーが誕生することになる。

■グローバルエクセレンス実現への大きなエンジンに − 大坪・佐野社長会見


パナソニック(株)大坪文雄社長
会見の冒頭、パナソニックの大坪社長は「2社が協業しグローバルな戦略を強化することは、消費者をはじめとした多くの方々にとって良い効果を生むと信じ、今回の決断に至った。三洋電機は日本の電機産業界に於ける貴重な財産とも言える企業だ。パナソニックと三洋は、ものづくりや経営について近い理念を持っている会社でもある。誠意をもって協議を進めていく」と挨拶した。

三洋電機の佐野社長は「近年の世界的な経済状況不安定を受け、資本政策のパートナーを模索していた。企業体力があり、これからのグローバルな競争に勝ち残る上でシナジー効果が見込める会社が理想的だと考えていたが、パナソニックはまさしくその条件に合致する企業。パナソニックには物心両面からの絶大な支援をいただいたが、これは三洋の技術力や、近年の構造改革の成果を高く評価してもらえたものと考えている。今回の提携により、次なる成長のステージに向け大きな一歩を踏み出すチャンスを得た。三洋が掲げる2010年までの中期経営計画を達成し、事業のさらなる発展が見込めるだろうと考えている」と語った。

「なぜ三洋電機買収を決めたか」という記者の問いに「世界中の消費者の役に立つ企業たるべく、グローバルエクセレンスを実現するためには、パナソニックグループのなかにもうひとつ、大きな成長を担うためのエンジンが必要だと考えた。今後の事業発展のためになりそうな魅力的な事業を三洋が手掛けていたのは大きな理由のひとつ」と語った大坪社長。今後の三洋ブランドの存続について問われると、「先般、愛着あるナショナルブランドを統廃合した我々にとって、ブランド名にかける三洋の思いは痛いほどよく分かる」と切り出すも、「経営は勝ち残って初めて意味がある。佐野社長などとも話し合い、なるべく今のかたちに近い姿でスタートして欲しいと思っているが、勝つためには甘いことばかりは言っていられないのも事実。また、雇用についても同様の考えだ。ただ、2005年度の苦しい経営状態を一丸となって乗り越えてきた社員たちにより自己実現を図れる場を提供できるよう考えていかねばと思っているし、あらゆることをやっていきたい」と断固たる態度を示した。


三洋電機(株)佐野精一郎社長
雇用については佐野社長もコメント。「事実、近年厳しい実態に置かれている部門もある。事業が継続しなければ、雇用の維持もできない」と苦しい心情を述べ、「今後の三洋としてのビジョンを実現するにはパナソニックとの協業が不可欠。三洋にとって必要な構造改革はしっかり行っていきたい」との見解を示した。

ところで、もし今後も三洋ブランドが継続するとすれば、「パワーの集中」を掲げ10月1日に「パナソニック」ブランドへ統一したばかりの同社にとっては矛盾とも言える戦略だ。大坪社長はそのような指摘に対し「たしかにそのとおりかも知れない」と認めつつも「複数ブランドを並立することになっても、お互いの協業から得られるメリットが大きいと判断した」と語った。

■太陽電池などを中心にさまざまな分野でシナジー効果狙う

今回の買収により、パナソニックは三洋が得意とするリチウムイオン電池や太陽電池などの事業を取り込み、更なる事業拡大を図る考えだ。「協業による効果」として両社が説明したのは以下のとおり。

<■エナジー事業>
・充電池など二次電池市場での補完的技術協力
・パナソニックのグローバル販売網提供による三洋のソーラー事業拡販
など

<■エレクトロニクス事業(デバイス/デジタルAV/コマーシャル/白物家電など)、エコロジー事業>
・双方の製品ラインナップ拡充や販売網の相互活用
・相互技術協力による製造/開発コストの削減
・共同購買による効率化でコスト削減
など

「両社の良い部分を持った製品を世に送り出していけると確信している。特に環境に配慮した製品に関しては、パナソニックと三洋は非常に望ましい事業展開が可能だろう。消費者の『エコ』に対するニーズを真っ先に満たせる企業になるはずだ」とコメントした大坪社長。佐野社長も「企画や製造などさまざまな部分で協力していきたいと考えている。大切なのは、いかにリーズナブルで付加価値高い製品を生み出せるか。消費者のニーズに、これから送り出す製品で応えたい」と抱負を語った。

「デバイスやデジタルAVなど、両社の事業内容は大きな括りでみると一見重複する部分があるのは事実。しかしそういったところでも、必ずしも同じターゲットや市場を狙って創られた製品ばかりではない。『重複』は『ラインナップの充実』と言うこともできる。詳細を見極め、いかにシナジー効果を出していけるかが今後の課題だ」と展望を語る大坪社長。協業によって「全事業領域で収益性の向上が可能と考えている」と、両社の今後について自信を示した。

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