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公開日 2004/05/18 18:57

エプソンが世界初の大型40インチ・フルカラー有機ELディスプレイを開発

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左)セイコーエプソン(株)代表取締役副社長 花岡清二氏 右)同社 OLED技術開発本部長 飯野聖一氏
●セイコーエプソン(株)は、同社の有機ELディスプレイ事業戦略に関する記者発表会を本日開催した。その中で同社は、今後2007年に向けた有機EL事業の本格展開を宣言するとともに、同社独自のインクジェット技術を応用した、世界初の40インチサイズの大型フルカラー有機ELディスプレイの試作機を展示した。


エプソンが発表した、世界初の40インチサイズの大型フルカラー有機ELディスプレイ試作機
有機ELディスプレイは、自発光材料を使用し、高コントラスト、広視野角、高速応答性など視認性に優れ、薄型軽量が可能な次世代のフラットディスプレイとして注目を集めており、同社でも有機EL事業においてこれまで開発・商品化への積極的な姿勢を打ち出してきた。同社は今回、今までは大型化が難しいとされてきた有機ELディスプレイを、これまでプリンタで培ってきた独自のインクジェット技術を応用することにより、大型TFT基板に対応した有機層成膜のインクジェットプロセスの開発に結びつけた。大型基板に有機層を、このインクジェット技術にて一括形成することにより、今回発表された40インチサイズの有機ELディスプレイのプロトタイプを実現できたという。また同社では今回、大型基板に対応できる有機ELディスプレイの製造プロセスを確立したことで、有機ELディスプレイの大型化と、大型TFT基板での多数個取りによる中小型の低コスト化へ見通しが立てられたことを明らかにしている。

本日の記者発表会には、同社より代表取締役副社長(CTO)である花岡清二氏、ならびにOLED技術開発本部長の飯野聖一氏が出席した。

はじめに花岡氏より、今回の製品における開発の経緯と、同社の有機EL事業に関する戦略の説明が行われた。花岡氏は同社のディスプレイ事業戦略として「エプソン 3i戦略」の内容を明らかにした。これによれば、「i1 imaging on paper(プリンター)」「i2 imaging on screen(プロジェクター)」「i3 imaging on glass(ディスプレイ)」の3つの領域において、今後エプソンブランドは「画像と映像の融合領域を目指した」事業戦略を展開していくという。

「エプソン 3i戦略」が明らかにされた

本日発表された有機ELに関する事業展開については、既に同社より発表されているリアプロジェクションテレビと併せた「i3 imaging on glass(ディスプレイ)」のフィールドにおける戦略展開の中に組み込まれることとなり、「40インチ以下の商品は有機ELで、40インチ以上はリアプロジェクションでそれぞれカバーする」という戦略内容が明らかにされた。今後、有機ELに関して同社は、「携帯電話、PDA、TV、フォトビュワー」まで、モバイルから大型ディスプレイに渡り幅広くエンタテインメントの分野においてユーザーに活用される商品を実現していく構えであるという。


エプソンの有機EL製品事業戦略イメージ

同社がプリンター事業で培ってきた、独自のインクジェット技術を応用し、大型基板に有機層を成膜する
飯野氏からは、今回の試作機を含む、同社が今後「2007年までに製品化を目指し開発を進めていく」という、有機ELをメインデバイスとしたテレビ事業の概要が伝えられた。飯野氏は「有機ELのターゲットはエンターテインメント市場である」ことを明言し、リビングをはじめ、パーソナルな環境やモバイル環境で映像を楽しむための商品開発へ注力していく考えを明らかにした。飯野氏は「ユーザーの皆様に感動してもらえるディスプレイ製品を実現したい。「今回の40インチサイズ試作機の開発によって、有機ELの持つ特徴を磨き上げ、課題を明らかにすることができた。2007年を目標に、エプソンブランドの有機EL事業の成功を実現したい」とその意気込みを語った。

本日の記者発表会の会場には、40インチの大画面ディスプレイの他にも、モバイル用途を想定した2.1インチモデル、パーソナルユーズを想定した12.5インチモデルの試作機がそれぞれ展示され、注目を集めた。


12.1インチ有機ELディスプレイを搭載した、パーソナルサイズのテレビのコンセプトモデル

2.1インチ有機ELディスプレイを搭載したモバイルTVのコンセプトモデル
以下に本日の会場にて行われた質疑応答の詳細をお伝えしていこう。

Q:御社が有機ELディスプレイの製品化時期として想定している2007年には、液晶TV、PDPを含めた薄型大画面市場は、技術・価格の双方で今と大きく状況が変化していると思われるが、その際も今回発表のあった40インチディスプレイを市場に投入していく考えは変わらないか?
A:基本的に今回発表した大画面ディスプレイを製品化する考えだが、その時のエンタテインメント用途のディスプレイ市場をみながら、どの商品を出すかを考えていきたい。価格については、有機ELでは液晶テレビと同じ基板を使うことができるので、商品化の時点では資材調達の工夫次第でコストを抑え、液晶テレビと競える価格帯の商品が投入できると思う。プラズマディスプレイにもコスト面では対抗していけると考えている。

Q:今回は4枚のパネル張り合わせ技術を採用しているが、まだ張り合わせの継ぎ目が目立つように感じる。製品化の段階ではこれを克服できるのか?
A:今回の試作機開発では張り合わせの継ぎ目をなくすかどうかではなく、インクジェットでの成膜、大画面化が課題だった。製品化の段階で、現状での課題を克服していくことは十分可能であると考えている。

Q:今回の有機ELの製品とリアプロとを併せ、エプソンとしてテレビ事業に本格参入を考えているのか?技術の外販についての計画は?
A:エプソンブランドで自社製品を開発するとともに、他社への技術供給も行う。2つを軸として考えていきたい。

Q:今回40インチの大画面をインクジェット技術で達成した、技術的ブレイク・スルーはどこにある?
A:インクジェット技術については「インクの量/精度/後の処理」に大きな飛躍を遂げることが出来た。また、大画面ということで、必要とされる大型の装置についてもその精度がポイントとなるが、そこでも一定の技術を確立できた。

Q:有機ELで課題とされる「テレビとして製品化する際の寿命」についてどれくらいが商品化の目処と考えているか?また今後でてくる課題をどのように克服する考えか?
A:寿命については、PDPが当初1万時間から市場に投入されたので、まずはそこを実現したい。これを実現するためのブレイク・スルーは今回の試作機開発で材料が見つかった。今後はその材料のブラッシュアップを進め、それを用いるパネルの構造も併せて進化させていくことが課題だ。

Q:今回御社では、将来有機ELとリアプロで、ディスプレイ商品をフルサイズでラインナップしていく考えを明らかにしているが、これは総合TVメーカーとしてのブランド立ち上げを宣言するものと解釈してよいのか?
A:私たちは弊社独自の技術を使って、エプソンらしさがアピールできる製品を2007年頃を目標に実現化したいと考えている。これは既存の家電メーカーに対抗し、TV事業に参入することを狙ったものではない。現時点では、2007年の商品化を目指し努力を重ね、あとはその時の環境を考慮して決めていきたい。

Q:有機EL事業にはどのくらいの投資を行うのか?
A:現時点ではまだ答えられる段階ではない。

Q:(液晶事業で協業を発表している)三洋電機との協力関係は?
A:三洋は低分子OLEDをコダックと研究開発している。現時点では有機EL事業での協力は考えていない。

Q:有機EL事業について、設備投資の計画は?
A:2007年に商品化を実現するためにはもちろん早い段階での投資が必要だが、現時点では事業計画のディティールを固めてから決めていきたいと考えている。

Q:有機EL事業のための開発費用について、増額を見込んでいるか?
A:開発費用は増額されるものと予測しているが、これはエプソン全体の開発費用の中で決定されるものであると考えている。

Q:今後駆動基板の開発などについて、必要なものは外部調達も考えているか?
A:外部調達が有効な部分については、それを選択肢のひとつとしてフレキシブルに考えていきたい。

Q:先頃、キヤノンと東芝が開発を発表した次世代大画面ディスプレイ技術「FED」についてはライバルとして意識されているか?
A:とくにそのような意識は持っていない。FEDの場合、小型の製品を開発することは困難であると認識している。一方で有機ELは大型から小型まで幅広い製品を実現できるアドバンテージがあるものと考えている。

<40インチフルカラー有機ELディスプレイ プロトタイプの概要>
●画面サイズ:対角40インチ
●画素数:1280×RGB×768dots (W-XGA)
●駆動方法:アクティブ・マトリクス
●精細度:38ppi
●色数:26万色

(Phile-web編集部)

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