ファインテック・ジャパン専門技術セミナー

大型有機ELの現状と課題 − 最大のライバル「液晶」にコストと付加価値で勝てるか

Phile-web編集部

前のページ 1 2 次のページ

2009年04月17日
本日まで東京ビックサイトで開催された「Display 2009」では、ソニーが21V型の有機ELディスプレイを参考出展し、来場者から熱い視線を浴びている。次世代ディスプレイデバイスとして注目を集める有機ELディスプレイだが、現時点で実際にテレビとして製品化されたものといえばご承知の通りソニーが2007年12月に発売した11V型の有機ELテレビ「XEL-1」のみ。


ソニーの11V型の有機ELテレビ「XEL-1」
本記事では、なかなか実用化に至らない大型有機ELディスプレイの課題と今後を、「Display 2009」と弊催する「第19回 ファインテック・ジャパン」で行われた有機ELに関する専門技術セミナーの講演を通してお伝えしたい。

そもそも有機ELディスプレイの優位性とは?


有機ELと液晶の特徴(コダック辻村氏の講義より)
有機ELについておさらいすると、有機ELは有機体自体が発光するため、LCDのようにバックライトが必要なく薄型化が可能なことと、高効率発光表示による高画質化、駆動電力が低いといったメリットがあり、テレビ向きのディスプレイとして期待されてきた。一方でパネル寿命時間が短い、大型化が難しいといった問題点もある。

駆動方式には液晶ディスプレイ同様、パッシブ型とアクティブ型の2種類がある。パッシブ型は構造が簡単で、安いコストで大量生産が可能。ただし小型サイズでは問題ないが大型化すると寿命が短くなったり消費電力が大きくなるなどの問題が発生するため、中小型ディスプレイに向いている。一方でアクティブ型は応答速度が速く高解像度、画質を維持しながら大型化も実現できるとあって、テレビ向きとされている。しかし複雑な回路が必要となるため、量産化、大型化には莫大な開発コストが必要といった面があり、メーカーの負担は大きい。

有機ELディスプレイ市場について解説したアイサプライ・ジャパン(株)の増田淳三氏によると、ディスプレイ市場は全世界で1,000億ドル規模だが、そのうちの8割をLCDが占めており、有機ELディスプレイの市場はわずか1,000万ドルにも満たない(08年時点)。その小さな市場の中で、3分の2をパッシブ型のディスプレイが占めている。


ディスプレイの世界市場


有機ELディスプレイのパッシブ型とアクティブ型の内訳予測(金額)

有機ELディスプレイのパッシブ型とアクティブ型の内訳予測(数量)
「パッシブ型は携帯電話、MP3プレーヤーなどの小型ディスプレイに採用されており、数量ベースでは現在有機EL市場のほとんどを占め、今後も増加傾向にある。しかし小型ディスプレイは単価が安く、価格下落のスピードも速いので、金額ベースで考えればこのままでは市場は縮小していく。今後有機ELディスプレイ市場を拡大させるには、単価の高いアクティブ型の普及が必須」と福田氏は説明する。


主要メーカーの開発基盤現状
■「グリーンディスプレイ」としての有機ELディスプレイ
− アイサプライ・ジャパン(株)増田 淳三氏

アイサプライ・ジャパン(株)増田 淳三氏

増田氏の講演では、有機ELディスプレイの優れた環境性能を取り上げ、「グリーンディスプレイ」になりうることを説明していた。

経済産業省の外郭団体であるNEDO技術開発機構により昨年発足した「グリーンITプロジェクト」では、プロジェクトの一環として、2010年後半に40インチ以上の有機ELディスプレイを量産実用化し、さらに消費電力をフルHD40インチ以上のディスプレイで40W以下に抑えることを目標に掲げている。ちなみに現在、フルHDの40V型液晶テレビで最も消費電力が低いモデルはシャープの“AQUOS”「LC-40AE6」(09年4月10日発売)。同製品の消費電力は約120W、年間消費電力は120kWh/年を実現している。

福田氏は「いずれテレビの消費電力は○○W以下でなければならない、といった規制がでてくるはず。有機ELディスプレイが消費電力40W、年間消費電力67kWh/年を達成すれば、単なる次世代ディスプレイというだけではなく、環境にやさしいグリーンディスプレイだと言えるのではないか」と期待する。

なお本プロジェクトの研究費用の目安は年間約7億円(期間は5年間)だが、「大型の有機ELディスプレイ開発には数百億円規模の資金が必要になるのでは」とも言われており、福田氏は「より積極的な開発投資が必要」と強調する。

各メーカー担当者は有機ELビジネスの現状をどう考えているのか?

前のページ 1 2 次のページ

関連記事