ウェスタン・エレクトリックによる究極の“オーディオ体験”。ヴィンテージの魅力を体験できる「サウンドミュージアム」開催
ウェスタン・エレクトリック機器による音楽再生
オーディオの魅力に取りつかれた人は、すばらしい音楽ソフトと、その再現を可能にする機器を集めるのが常である。普通の人はここまでだが、そのソフトと機材を公開して、より多くの人とすばらしさを共有し、次世代に伝えて行きたいと考える人がまれに現れる。
P&G、日本コカ・コーラで華々しい実績を残した和佐高志さんは、音楽とオーディオ好きが高じて、2023年にマーケティングとコンサルタントの法人「株式会社Jukebox Dreams」を興し、ジュークボックス、ヴィンテージオーディオの蒐集を通じて次世代にオーディオ文化とイノベーションをつなげる活動を開始している。
また、すでにこの世を去った演奏家、アーティストのレコード音源も集め、その演奏を再現することにも力を注いでいる。
その活動の具体化として、8月29日(土)に、横浜・新山下の拠点で「サウンドミュージアム」を開催した。和佐さんは自宅でハイエンドオーディオ機器を揃えてさまざまな音楽を楽しんでいるが、知人を通じてウェスタン・エレクトリック機器による音楽再生を体験したことを契機に、これは次世代に遺すべきものと確信し、ウェスタン・エレクトリックのスピーカーシステムと、それを鳴らすさまざまな機材を集めている。
いずれはそれらを展示する博物館を作りたいと考え、現在はまだその途中ではあるが、現状を若い音楽ファンに聴いてもらおうと企画したのが、この「サウンドミュージアム」である。
当日は12ページもの立派なプログラムが配られ、和佐さんのオーディオ再生にかける意気込みがよく理解できた。機器の詳細な解説と、どのような音源を使用するかが紹介されている。会場は倉庫の一角にある200平方メートルほどのスペースで、正面にウェスタン・エレクトリックと、室内音響調整用に日本音響エンジニアリングの「AGS」が設置されていた。
プログラムのすべてを消化できたわけではないが、少なくとも来場者はオーディオの魅力の一部を味わえたことだろう。
本イベントは14:00から16:30と17:30から20:00の2セッションが行われ、第1部には20名、第2部には25名が参加した。
ジュークボックスによるサロン音楽体験
「サウンドミュージアム」は前半がジュークボックスによるレコードとCD再生によるサロン音楽体験で、飲み物や軽食を楽しみながら曲のリクエストを行う趣向。ワーリッツァー、マーシャル、エーエムアイ、サウンドレジャーなど6台が揃えられ、係員がコインを入れて選曲し、再生中の曲は大型ディスプレイにタイトルとジャケット、歌詞が表示されるシステムが構築されていた。
リクエストは1980年代の内外ヒット曲が多く、音声は内蔵スピーカーではなく、オクターブ「V70」真空管プリメインアンプに入力し、ヤマハ「NS-1000M」とステファン・トゥルーソニック「E3」で鳴らしていた。ややローファイにして時代の雰囲気を出し、昔ボウリング場で聴いたような楽しさを思い出させてくれた。リクエストをした人も体を揺らして曲を楽しんでいた。
最新デジタル音源をLINNとウェスタン・エレクトリックで聴く
後半はお待ちかねのウェスタン・エレクトリックのスピーカーによる音楽再生。露払いとしてリンのEXAKTシステムによるデジタル音源再生(ストリーミング)で、ステレオ再生の最適な聴取位置ではスピーカーが消える体験をしてもらい、和佐さん選曲でオーディオデモ効果の高い曲を再生した。
次にG.I.P.ラボラトリーのレプリカ品を使用したミラフォニックシステムで、低域はGIPのホーン型エンクロージャーGIP-7396+2本の460mmウーファーGIP-4181A、高域はGIP-597A+ウエスタンラボ596Aホーントゥイーター、中域はウェスタン・エレクトリック594Aドライバー+24Aホーン、ネットワークはウェスタン・エレクトリックの3ウエイTA-7293で、クロスオーバー周波数は300Hzと6kHzである。
これら励磁ユニットの電源にはタンガーバルブによるウェスタン・エレクトリックTA-4144Aを使用した。LINNから切り換えると、明瞭度の高い音が容赦なく耳に届く。ストリーミングでも角が落ちない鮮明な音が出ている。しかも大音量でもうるさくない。
中域をウェスタン・エレクトリック555レシーバー×2+レプリカ16Aホーン、高域をウェスタン・エレクトリック596Aに替えると、ピアノやボーカルですばらしい魅力を放つようになり、これもまた衝撃的な体験だ。こちらはRCAの励磁電源装置を使用し、クロスオーバー周波数は100Hzと6kHzである。
パワーアンプは6L6パラレルプッシュプルのウェスタン・エレクトリック「118A」で、出力50Wのモノラルアンプを使用した。
レコード再生時にはLINN「LP12」アナログプレーヤーとマランツの真空管プリアンプ「#7」チューンアップ品を使用した。またアナログプレーヤーを「EMT927」、パワーアンプを300Bプッシュプルのウェスタン・エレクトリック「86C」に替えると、いっそう音楽の力が強くなった。86Cは300Bプッシュプルで出力15Wと控えめだが、927の巨大プラッターとモーターの力強さと相まって、圧倒的な表現力で音楽を再現した。
21世紀でも通用するウェスタン・エレクトリックのサウンド
これらウェスタン・エレクトリックの機器は、アメリカの映画産業全盛期であった1920 - 40年代に劇場用拡声システムとして開発され、当時最高の材料と技術を投入して製造されたもの。当時のものが至高のオーディオ機器で、以降は量産とコストダウンで音が悪くなっているという意見すらある。
スピーカーは磁気回路が励磁型で、ホーンを使うため能率が高く、15Wの出力でも大きな数千人収容の映画館の隅々までセリフと音楽を届けることができたという。
90年ほど前に作られたこれらのオーディオ機器が、21世紀の現在でも色褪せずに音楽を朗々と鳴らし、しかも現代最新のオーディオ機器とも互角以上の魅力を放つことはスゴイことだ。
来場した若い世代の人は、ウェスタン・エレクトリックの機器を初めて見聞きし、イヤホンなどとは異次元のサウンドに驚いていた様子。
次回の開催は未定だが、さらに音楽を聴かせる企画になるに違いない。
























