公開日 2025/01/19 15:18

<CES>新生オンキヨーの幹部を直撃!「伝統を継承しつつ無限の音の進化に挑む」。最新アンプ&アクティブSPの音も体験

「進化した新しいオンキヨーブランドを全世界に発信したい」
新生・オンキヨーがスタート。ロゴがリニューアルされた新オンキヨー・ブランドを掲げた新ホームスピーカー「Creatorシリーズ」、新アンプ「Iconシリーズ」がCESにて発表された。モットーは「A Rebirth of an Iconic and Legendary Brand(象徴的で伝説的なブランドの新生)だ。

セントラルホールのVOXXグループの大きなブースに、新生Onkyoのロゴが。字体は同じで、字間が広くなった。伝統と過去への敬意を示しながら、字間を拡げ、未来を見据えたイメージが込められているという

ポイントは「Rebirth」だ。 「オンキヨーブランドそのものが新しく変わり、製品も魅力的にリニューアルされたことをRebirthという言葉に込めました」とPremium Audio Companyのデイヴ・ガン氏(Global Vice President/Marketing)は言った。

Premium Audio Companyの幹部たち。左からVice President of Global Marketing & eCommerceのDave Gans氏、Training ManagerのMarcus Buckler氏、 Vice President of Commercial strategyのDerek Everson氏

旧オンキヨーのAV事業はアメリカVOXXグループのPremium Audio Companyに譲渡され、今でも東大阪の拠点で製品開発しているというが、AVアンプを除いてはほとんどニュースはなく、いつしか忘れられた存在になっている。

いやいや、ラスベガスのバージンホテルの瀟洒なスウィートを訪ねると、魅力的なスピーカー、アンプが待っていたではないか。しかも、後述するが、音が良い! 私のイメージでは、かつてのオンキヨー製品から一皮も二皮も向けた、ハイ・ハーモニーな音だ。

IconシリーズのプリアンプP-80+パワーアンプM-80+クリブシュFORTEのシステム

神戸に在住しているデイヴ・ガン氏に私のインプレッションを伝えると、破顔一笑、「われわれの意気込みをぜひ知ってください。オンキヨーの歴史を調べ、たいへん尊敬に値する仕事をされてきたことが分かりました。大阪音響の創業者である五代 武氏は、実家が営む自転車店からその道を歩み始め、日本型の高品質なものづくりを学んだのです。油で汚れた床と工具の音の中で、武は父を注意深く見つめ、エンジニアリングの技術を習得し、さらに成功した会社を運営するスキルも身につけました。当時、店には松下幸之助が見習いとして働いていました。後年、幸之助は松下電器産業を設立。師匠の息子である武を雇いました。武はスキルを磨き、最終的にはスピーカー製造工場の責任者に任命されました。そして退社し、大阪音響を設立したのです。この歴史は、われわれの貴重な財産です。オンキヨーとは『音の調和』です。われわれ新オンキヨーの原点もそこにあると考えています」

■新生オンキヨーの音作りのこだわりを本国スタッフ直撃



ーーなぜ今、「A Rebirth of an Iconic and Legendary Brand」という言い方で、オンキヨーをリブランディングするのですか。そのモチベーションは?リブランディングのモットーを教えてください。

デイヴ アメリカの親会社であるPremium Audio Companyは、オンキヨーというブランド名を引き継ぎ、さらに60人の元オンキヨー技術者を迎え入れて、日本にPremium Audio Company Technology Centerを設立しました。1946年に五代 武が築き上げた約78年の歴史あるブランドと技術を継承するためです。そこにさらなる付加価値を加え、進化した新しいオンキヨーブランドを全世界に発信したい。その証として、今回、2つの新しいオンキヨー製品を発表しました。

ーー新オンキヨー・ロゴは、字体は従来と同じですが、字間がかなり開いています。その理由は?

デイヴ オンキヨーが次のステップに進もうとしていることを市場に視覚的にアピールするためです。同じフォントを使うのは、「オンキヨーの伝統の継承」を示すためです。伝統を受け継ぐ新しいブランドであることを訴えるために、文字と文字の間にスペースを入れて過去からの進化を表現しました。

ーー字体を変えないことで、これまでの視覚的ブランドアセットを保持して、伝統と過去への敬意を示しながら、同時に字間を拡げることで、未来を見据えたデザインにしたのですね。では音作りについて教えてください。どのようなモットーですか。以前のオンキヨー製品との音の違いは?

デイヴ 音作りに関しては、創業者の五代から始まった長い歴史を持つオンキヨーの音を継承していきたいと考えています。しかし、ここ数年のオンキヨー製品の音質は大きく進化していると実感しています。今回発表した製品も、飛躍的な音質向上を実現しています。その価値をお客様に認めていただけるよう、日々努力しています。

ーーなるほど。技術者のこだわりは?

デイヴ Iconシリーズでは、2010年のセパレートシリーズから追求してきた高調波歪み改善の思想を軸に取り組みました。これは、Premium Audio Company内の音に関する指摘と深く関わっています。製品ごとに高い音のターゲットを設定し、音の進化を無限のものと捉えています。その過程で常に新しい発見があり、それを限られた開発期間の中で製品に反映しています。

■CES会場にてセパレートアンプとアクティブスピーカーの音を試聴



Hi-FiオーディオのIconシリーズ。プレスリリースの「A Rebirth of an Iconic and Legendary Brand(象徴的で伝説的なブランドの復活)」で謳われた、オーディオのオンキヨーの復活を象徴する言葉「Icon」をシリーズ名に抱く、新生オンキヨーの夢が詰まった新製品だ。

シリーズはネットワーク・プリメインアンプ「A-50」、ネットワーク・プリアンプ「P-80」、パワーアンプ「M-80」の3モデルで構成。いずれもアナログ段に独自のノイズ抑制回路DIDRC(Dynamic Intermodulation Distortion Reduction Circuitry)を搭載している。日本の伝統的な「算崩し/三崩し(さんくずし、算木を崩したように、3筋ずつ縦横に石畳状に並べた縞模様)で排気口をデザインしているのも、オンキヨー、ひいては日本文化へのリスペクトであろう。

Iconシリーズのネットワーク・プリメインアンプA-50。HDMI ARCを搭載し、各種音楽ストリーミングサービスに対応

ネットワーク・プリアンプP-80は音楽ストリーミング再生、HDMI ARC、MM/MCセパレートフォノステージ搭載

プリメインアンプA-50は、DIDRC回路とAB級の3段インバーテッド・ダーリントン・アンプ。HDMI ARCを搭載、各種音楽ストリーミングサービスに対応。北米では1,499ドルにて販売予定。ネットワーク・プリアンプP-80は同じく音楽ストリーミング再生、HDMI ARC、MM/MCセパレートフォノステージ搭載。1,999ドル。Dirac社の音響補正機能「Dirac Live Room Corretion」にも対応。パワーアンプのM-80は、対称AB級増幅の3段インバーテッド・ダーリントン・アンプ。1,999ドル。

パワーアンプのM-80は、AB級増幅の3段インバーテッド・ダーリントン・アンプ

バージンホテルの瀟洒なスウィートで、IconシリーズのプリアンプP-80+パワーアンプM-80をクリプシュのFORTEスピーカーで聴いた。私の記憶の旧オンキヨーとは、まるで違う音調だ。かつては力感はあるが、細部の見渡しがいまひとつで、エモーションの出方も淡く、スピードも中庸……というのが、旧オンキヨーの音だったが、目の前に鳴っている音は、スピードが実に迅速で、微小信号まで明晰に、ダイナミックな実存感を持ち、丁寧だ。ヴォーカルでは、ブレスが生々しく、細部まで活気に満ち、音楽のエッセンスが生命感豊かに奏されている。

Iconシリーズの天面排気口は日本の伝統的な「算崩し/三崩し」でデザインされている

一方のオンキヨーCreatorシリーズは、トレンディな多機能アクティブ・スピーカーだ。「Creator GX10DB」と、HDMI ARC搭載モデル「Creator GX30ARC」の2つだ。いずれもクラスDアンプを内蔵し、Bluetooth、USB Type-C、Optical、Phono、Sub Pre-Out、Auxを搭載。GX30ARCのみ、さらにHDMIと3.5mmアナログ入力が追加されるており、多彩なインターフェイスを持つ。

CreatorシリーズのHDMI ARC搭載アクティブスピーカー「Creator GX30ARC」。ユニットは4インチウーファーと3/4インチトゥイーター

ユニットは「GX10DB」が3インチウーファーと3/4インチトゥイーター。「GX30ARC」は、4インチウーファーと3/4インチトゥイーターだ。価格は「GX10DB」が199ドル(ペア)、「GX30ARC」は299ドル(ペア)。

Creator GX30ARCの背面。Bluetooth、USB Type-C、Optical、RCA、Phone、RCA Sub Pre-Out、Aux、HDMI、3.5mmアナログ入力……と多彩なインターフェイスを持つ

「Creator GX30ARC」を聴いた。透明な質感で、音の細部まで明瞭に、そして力強く奏される。この小ささにしては、音のまとまりと描写性はとても良い。驚かされるのは、低音のリッチネス。目をつぶって聴けば、大きなサイズを思い浮かべるほどのスケール感だ。ヴォーカルの感情の抑揚感もよく表現されている。

Creatorシリーズのアクティブ・スピーカー「Creator GX10DB」。 ユニットは3インチウーファーと3/4インチトゥイーター

新生オンキヨーの第1弾のアクティブスピーカーとコンポーネントアンプには、デイヴ・ガン氏が述べたリニューアルへの溌剌とした意欲とスピリットが籠もっていた。「新生」は、キャッチフレーズだけではなかった。

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