公開日 2016/07/26 15:12
今注目のピアニスト・秋田慎治さん特別インタビュー「音楽家としての全てを出し切った新アルバム」
CDデビュー10周年記念アルバム「time -10」待望の発売!
先日本ニュースで、ピアニスト秋田慎治さんの10周年記念アルバム「time -10」が7月13日にCDとハイレゾで発売となったことをお知らせした(関連ニュース)。それに先立ち、オーディオファンでもある秋田さんに記念アルバムに関して特別にインタビューを行ったので、ここに掲載したい。
―― CDデビュー10周年おめでとうございます。
秋田慎治(以下、秋田) あっという間の10年でした(笑)
―― 記念のアルバムが発売されますが、今回意図したものはなんですか?
秋田 今までの3枚のアルバムは、自分の固定観念なのか、ジャズピアニストのアルバムだからという思いから、アコースティックピアノしか弾いてきませんでした。10年間振り返ってみると、自分の活動の中心ははもちろんピアノはあるのですが、キーボードを弾いていることも多いですし、シンガーの方のアルバムをプロデュースした時はコンピューターを使ったりとか、いろんなものを使って音楽をしてきたな、と思ったんです。実は楽器歴としてはピアノよりキーボードが先なんですよね。だったら今回は自分の側面も含め、全て出してみようかな。ピアニストばかりではなく、秋田慎治という音楽家の全てを、できる限り出してみようかな、と考えこのCDを作りました。この10年間、何をしてきたのかを出せた集大成だと思います。
―― 最初のソロから、アグレッシブなバンドサウンドと緩急がある曲順となっていますが、曲の選択と構成はどのように考えたのでしょうか?
秋田 1曲目は、完全なコンピューターミュージック。生の音は何も入っていないんですよ。わざと自宅のスタジオで完結するものを作ってみました。オーバーチュア的なもの、イントロダクション的なものを入れてみました。2曲目は普通にピアノの曲を入れるかな、と思われそうですが、ローズのエレピで演って、3曲目でやっとピアノに……。これが今回のアルバムのひとつのコンセプトを表していると思います。
―― オリジナル曲は今回のために書き下ろしたものですか?
秋田 それもあります。今回アルバムを作るのにあたり、昔作った曲も引っ張り出してきて、実際演ってみた結果、どんなに易しくても、どんなに難しくても自分がこれを歌いたいな、という思いで取捨選択をしています。すごく昔の2008年の曲、つまり2枚目のアルバムを出すより前なんですが、その頃に書いた曲が入っていたり。反対にレコーディング直前に書いた曲もあって、オリジナルはいろいろです。2曲目は、ライヴではよく演っていた曲ですが、アルバムには収録していなかったものです。
―― そういう意味でも集大成的なアルバムになっているんですね。今回は、TOKUさんがゲストとして参加しています。
秋田 10年間の活動の中で、歌が好きで、ヴォーカルの方と一緒に演るのが好きなことを感じてきました。収録曲でひとつは、みんなが知っているスタンダード曲を選びました。これを自分のテイストでアレンジするとこうなります、というのがアントニオ・カルロス・ジョビンの名曲「ONE NOTE SAMBA」。それと歌ものを僕が作って提供することもあるので、自分のオリジナルを1曲入れたかった。この2曲を歌ってもらいました。歌の入った曲が自分のアルバムに入っているのは初めてなんですが、ヴォーカルを誰に頼もうと考えた時に、東京に来た時にすぐにTOKUと出会って、ずっと一緒にやってきたので、彼しか考えられなかったですね。
―― デビューして10年が経ち、ひと区切りという感じですか?
秋田 区切りという感じではないですね。今までは、3、4年にアルバムを1枚作るという感じでした。前作から3年で10周年ということですが、やはり通過点という感じですね。
―― 10年間で、もっとも印象に残っている出来事はありますか?
秋田 2010年から矢沢永吉さんのライヴツアーのサポートを演っています。音楽的な部分とか、エンタテインメントとしてのコンサートの構築の仕方とか、準備の仕方とか、今までのジャズのライヴとかでは勉強、経験できなかったことなんです。こういうことを考えてショウをつくっているんだな、ということをスーパースターからいっぱい学びましたね。音楽的にも吸収できるものもたくさんありました。
―― 今回のアルバムのハイレゾ配信についてお聞かせください。
秋田 96kHz/24bitで録音していて、同時リリースとなります。個人的にはデジタルである限り、全部ハイレゾになってほしいですね。今までのアルバムは96kHz、192kHzで収録したにもかかわらずCDフォーマットになって聴き比べると、やっぱりぜんぜん違うんですよ。世の中のアナログ以外、デジタルフォーマットの音源は全部ハイレゾになった方がいいと思っています。実はアナログレコードも出したいんですけどね(笑)
―― 記念ライヴの予定は?
秋田 9月8日の名古屋を皮切りに、全国を回って10月2日の熊本まで続きます(詳細はページ下を参照)。
―― 本アルバムは非常に鮮度が高く、ピアノの響きなどもよく出ています。クオリティの高さを感じましたが、録音にこだわっている点がありましたら教えてください。
秋田 録音したスタジオは、過去2回他の方のアルバム制作で使ったことがあって、そこにあるピアノが非常に自分と相性がいいと思っていたんです。スタジオをそこに決めてもらって、エンジニアはポニーキャニオンの人でしたので、いろんなものを持ち込んでもらいました。音録りとかミックスとかでもいろいろ意見を言わせてもらって、“こんな感じ、こんなイメージで”とか、エンジニアと何度もやり取りして収録しました。ピアノはヤマハのC5で、フルコンではないのですが、ピアニシモの感じとか、そこからのダイナミクスとか、けっこう僕は好きで……。このヤマハのピアノは、スタインウェイの弦を張っているという特殊なピアノだそうです。きっとそういう細かいひとつひとつが積み重なって音に出ているのでしょう。
―― 今後の展開についてお聞かせください。
秋田 そうですね。ずっと変わらず思っているのは、もっとピアノが上手くなりたいということが常にあります。それは死ぬまで言っているのでしょうが……これが一番のベースにあります。最初は、ピアノトリオしかなかったけど、9年前からソロピアノに取り組み始めて、それが自分の中で少しずつ馴染んでいっているのが、今の状況です。これからの10年で、例えば弦があったり、ギターとのデュオとか、違うフォーマットもやってみたいですね。実は今まで、そういうことをぜんぜんやっていないんですよ。
―― 今回のアルバムは秋田さんの多様な姿を見せてくれ、何度聴いても新鮮な感覚を受ける作品に仕上がっていますね。最後に、ファンの読者へのメッセージをお願いします。
秋田 この前言われたんですが、キーボードはいろんな音が出ますよね。そういうものを絵に例えると、ピアノはどちらかというと水墨画のイメージだ、と。なるほどなぁ、と思ったんですよ。いわゆる、今までのアルバムは水墨画の非常に繊細な濃淡ですべてを表現してきたし、今回のアルバムではそういう楽曲もあるのですが、せっかく21世紀に生きているいま、コンピューターとかエレクトリックな部分もすごく発展してきて、それも含めて自分の音楽ツールとして使えるんであったら、使わない手はない。それが全部うまくまとまったアルバムになっているので、そのあたりの多様さを聴いていただけると嬉しいです。
あと1曲だけ特別な曲があります。アルバム収録は3月15、16日だったんですが、その直前に3・11の大震災から5年が経ちましたという報道があり、そして中野の劇団員の女性が殺された事件があって、その犯人が捕まったのが、3月12日。これを受けて女性の交際相手の男性がインタビューを受けていろんなことを語っていた。事件が起こった時に当事者の周りの人もいろんな思いをしてしまうとか。そこに心を動かされて作った曲が「BEHIND THE GIRL」という曲です。僕の曲作りのなかで、珍しく具体的な事象から曲ができた。このテーマだから、このコードとか、ここでは何もしないで間をあけるとか……。そういうことがすごくはっきりとイメージできた今迄になり曲ですので、ぜひ聴いていただきたいですね。
―― ありがとうございました!
秋田慎治 Shinji Akita
(ピアニスト)
<Profile>
'97年に渡米、中村照夫、Stanley Turrentine、 Hubert Lawsらと共演し、'00年帰国。帰国後は、その幅広い音楽性を元にTOKU、阿川泰子、マリーン、今陽子、サリナ・ジョーンズ、矢沢永吉、森山良子などのセッションに参加。'03年、椎名純平&篠原涼子のデュエットソング、"Time of Gold"を作曲/プロデュースし、ポップス界にも一石を投じる。その後、「東京JAZZ2005」をはじめ多数のジャズ・フェスにも出演を果たした。'06年1stアルバム『moments in life』をリリース。'10年8月、2ndアルバム『fiction』をリリース、収録曲"prelude to eternal"は洋服の青山TVCFに起用される。'12年7月からは初のCMに出演(高須クリニック)、作曲も担当。'12年4月から'13年4月にかけて毎月一曲ずつをシングル曲としてネット配信し、'13年のソロピアノアルバム『CIRCLE』にまとめられた。2016年4月からはじまったTOKYO FMの新番組 「GINZA JAZZ」のパーソナリティに抜擢されるなど、現在幅広いフィールドで活躍中である。
【アルバム発売記念ツアー(2016年)】
9/08(木) 名古屋THE WIZ
9/09(金) 大阪Mister Kelly's
9/10(土) 和歌山デサフィナード
9/11(日) 兵庫龍野クラシックアネックス
9/21(水) 水戸Cortez
9/22(木) 仙台REMEMBER
9/23(金) 渋谷JZ BRAT (ゲスト:TOKU)
9/25(日) 富山New Port
9/28(水) 新居浜サンジェルマン
9/29(木) 広島Speak Low
9/30(金) 徳山華のうつわ
10/1(土) 福岡ROOMS
10/2(日) 熊本酔いんぐ
*詳細は公式サイトで発表
―― CDデビュー10周年おめでとうございます。
秋田慎治(以下、秋田) あっという間の10年でした(笑)
―― 記念のアルバムが発売されますが、今回意図したものはなんですか?
秋田 今までの3枚のアルバムは、自分の固定観念なのか、ジャズピアニストのアルバムだからという思いから、アコースティックピアノしか弾いてきませんでした。10年間振り返ってみると、自分の活動の中心ははもちろんピアノはあるのですが、キーボードを弾いていることも多いですし、シンガーの方のアルバムをプロデュースした時はコンピューターを使ったりとか、いろんなものを使って音楽をしてきたな、と思ったんです。実は楽器歴としてはピアノよりキーボードが先なんですよね。だったら今回は自分の側面も含め、全て出してみようかな。ピアニストばかりではなく、秋田慎治という音楽家の全てを、できる限り出してみようかな、と考えこのCDを作りました。この10年間、何をしてきたのかを出せた集大成だと思います。
―― 最初のソロから、アグレッシブなバンドサウンドと緩急がある曲順となっていますが、曲の選択と構成はどのように考えたのでしょうか?
秋田 1曲目は、完全なコンピューターミュージック。生の音は何も入っていないんですよ。わざと自宅のスタジオで完結するものを作ってみました。オーバーチュア的なもの、イントロダクション的なものを入れてみました。2曲目は普通にピアノの曲を入れるかな、と思われそうですが、ローズのエレピで演って、3曲目でやっとピアノに……。これが今回のアルバムのひとつのコンセプトを表していると思います。
―― オリジナル曲は今回のために書き下ろしたものですか?
秋田 それもあります。今回アルバムを作るのにあたり、昔作った曲も引っ張り出してきて、実際演ってみた結果、どんなに易しくても、どんなに難しくても自分がこれを歌いたいな、という思いで取捨選択をしています。すごく昔の2008年の曲、つまり2枚目のアルバムを出すより前なんですが、その頃に書いた曲が入っていたり。反対にレコーディング直前に書いた曲もあって、オリジナルはいろいろです。2曲目は、ライヴではよく演っていた曲ですが、アルバムには収録していなかったものです。
―― そういう意味でも集大成的なアルバムになっているんですね。今回は、TOKUさんがゲストとして参加しています。
秋田 10年間の活動の中で、歌が好きで、ヴォーカルの方と一緒に演るのが好きなことを感じてきました。収録曲でひとつは、みんなが知っているスタンダード曲を選びました。これを自分のテイストでアレンジするとこうなります、というのがアントニオ・カルロス・ジョビンの名曲「ONE NOTE SAMBA」。それと歌ものを僕が作って提供することもあるので、自分のオリジナルを1曲入れたかった。この2曲を歌ってもらいました。歌の入った曲が自分のアルバムに入っているのは初めてなんですが、ヴォーカルを誰に頼もうと考えた時に、東京に来た時にすぐにTOKUと出会って、ずっと一緒にやってきたので、彼しか考えられなかったですね。
―― デビューして10年が経ち、ひと区切りという感じですか?
秋田 区切りという感じではないですね。今までは、3、4年にアルバムを1枚作るという感じでした。前作から3年で10周年ということですが、やはり通過点という感じですね。
―― 10年間で、もっとも印象に残っている出来事はありますか?
秋田 2010年から矢沢永吉さんのライヴツアーのサポートを演っています。音楽的な部分とか、エンタテインメントとしてのコンサートの構築の仕方とか、準備の仕方とか、今までのジャズのライヴとかでは勉強、経験できなかったことなんです。こういうことを考えてショウをつくっているんだな、ということをスーパースターからいっぱい学びましたね。音楽的にも吸収できるものもたくさんありました。
―― 今回のアルバムのハイレゾ配信についてお聞かせください。
秋田 96kHz/24bitで録音していて、同時リリースとなります。個人的にはデジタルである限り、全部ハイレゾになってほしいですね。今までのアルバムは96kHz、192kHzで収録したにもかかわらずCDフォーマットになって聴き比べると、やっぱりぜんぜん違うんですよ。世の中のアナログ以外、デジタルフォーマットの音源は全部ハイレゾになった方がいいと思っています。実はアナログレコードも出したいんですけどね(笑)
―― 記念ライヴの予定は?
秋田 9月8日の名古屋を皮切りに、全国を回って10月2日の熊本まで続きます(詳細はページ下を参照)。
―― 本アルバムは非常に鮮度が高く、ピアノの響きなどもよく出ています。クオリティの高さを感じましたが、録音にこだわっている点がありましたら教えてください。
秋田 録音したスタジオは、過去2回他の方のアルバム制作で使ったことがあって、そこにあるピアノが非常に自分と相性がいいと思っていたんです。スタジオをそこに決めてもらって、エンジニアはポニーキャニオンの人でしたので、いろんなものを持ち込んでもらいました。音録りとかミックスとかでもいろいろ意見を言わせてもらって、“こんな感じ、こんなイメージで”とか、エンジニアと何度もやり取りして収録しました。ピアノはヤマハのC5で、フルコンではないのですが、ピアニシモの感じとか、そこからのダイナミクスとか、けっこう僕は好きで……。このヤマハのピアノは、スタインウェイの弦を張っているという特殊なピアノだそうです。きっとそういう細かいひとつひとつが積み重なって音に出ているのでしょう。
―― 今後の展開についてお聞かせください。
秋田 そうですね。ずっと変わらず思っているのは、もっとピアノが上手くなりたいということが常にあります。それは死ぬまで言っているのでしょうが……これが一番のベースにあります。最初は、ピアノトリオしかなかったけど、9年前からソロピアノに取り組み始めて、それが自分の中で少しずつ馴染んでいっているのが、今の状況です。これからの10年で、例えば弦があったり、ギターとのデュオとか、違うフォーマットもやってみたいですね。実は今まで、そういうことをぜんぜんやっていないんですよ。
―― 今回のアルバムは秋田さんの多様な姿を見せてくれ、何度聴いても新鮮な感覚を受ける作品に仕上がっていますね。最後に、ファンの読者へのメッセージをお願いします。
秋田 この前言われたんですが、キーボードはいろんな音が出ますよね。そういうものを絵に例えると、ピアノはどちらかというと水墨画のイメージだ、と。なるほどなぁ、と思ったんですよ。いわゆる、今までのアルバムは水墨画の非常に繊細な濃淡ですべてを表現してきたし、今回のアルバムではそういう楽曲もあるのですが、せっかく21世紀に生きているいま、コンピューターとかエレクトリックな部分もすごく発展してきて、それも含めて自分の音楽ツールとして使えるんであったら、使わない手はない。それが全部うまくまとまったアルバムになっているので、そのあたりの多様さを聴いていただけると嬉しいです。
あと1曲だけ特別な曲があります。アルバム収録は3月15、16日だったんですが、その直前に3・11の大震災から5年が経ちましたという報道があり、そして中野の劇団員の女性が殺された事件があって、その犯人が捕まったのが、3月12日。これを受けて女性の交際相手の男性がインタビューを受けていろんなことを語っていた。事件が起こった時に当事者の周りの人もいろんな思いをしてしまうとか。そこに心を動かされて作った曲が「BEHIND THE GIRL」という曲です。僕の曲作りのなかで、珍しく具体的な事象から曲ができた。このテーマだから、このコードとか、ここでは何もしないで間をあけるとか……。そういうことがすごくはっきりとイメージできた今迄になり曲ですので、ぜひ聴いていただきたいですね。
―― ありがとうございました!
秋田慎治 Shinji Akita
(ピアニスト)
<Profile>
'97年に渡米、中村照夫、Stanley Turrentine、 Hubert Lawsらと共演し、'00年帰国。帰国後は、その幅広い音楽性を元にTOKU、阿川泰子、マリーン、今陽子、サリナ・ジョーンズ、矢沢永吉、森山良子などのセッションに参加。'03年、椎名純平&篠原涼子のデュエットソング、"Time of Gold"を作曲/プロデュースし、ポップス界にも一石を投じる。その後、「東京JAZZ2005」をはじめ多数のジャズ・フェスにも出演を果たした。'06年1stアルバム『moments in life』をリリース。'10年8月、2ndアルバム『fiction』をリリース、収録曲"prelude to eternal"は洋服の青山TVCFに起用される。'12年7月からは初のCMに出演(高須クリニック)、作曲も担当。'12年4月から'13年4月にかけて毎月一曲ずつをシングル曲としてネット配信し、'13年のソロピアノアルバム『CIRCLE』にまとめられた。2016年4月からはじまったTOKYO FMの新番組 「GINZA JAZZ」のパーソナリティに抜擢されるなど、現在幅広いフィールドで活躍中である。
【アルバム発売記念ツアー(2016年)】
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9/09(金) 大阪Mister Kelly's
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