公開日 2016/02/26 19:43
『STEINS;GATE』などを手がけるゲームミュージッククリエイター・阿保 剛ハイレゾ作品集の魅力を本人に聞いた
デジタルならではのハイレゾへのアプローチ
圧倒的なシナリオにより一時代を築き上げた、『STEINS;GATE』などで知られる科学アドベンチャーシリーズ。あまりの余韻から現実世界に帰ってくることを拒否するプレーヤーを量産した『メモリーズオフ』シリーズ。未だネタバレ厳禁と言えるアドベンチャーゲームの金字塔Infinityシリーズ − これらの音楽は、全て一人の作曲家によって生み出されている。ゲームミュージッククリエイター、阿保 剛。その作品が、ハイレゾで続々リリースされている。
その名もズバリ、「作曲家・阿保 剛ハイレゾ作品集」というこの企画。スタートしたきっかけは、阿保さんが所属する株式会社MAGES.が展開する5pb.Recordsレーベルのラインアップの中で、ハイレゾとCDクオリティのものを聴き比べした際、ハイレゾ化による効果を最も感じられたのが、ゲームのサウンドトラックだったからだという。
けれど、ラインナップのなかには随分前のゲームのタイトルも含まれている。ゲームをプレイ中に再生されるもの、もしくはCD版のサウンドトラックと、ハイレゾで聴くことができる今回のリリースタイトルにおいては、色々と違いが生じるのではないだろうか?
そこで今回は、阿保さんご本人に、ハイレゾ化されたタイトルについて解説していただいた。デジタル環境において制作された音源をハイレゾ化する、その過程においてはどういった変化が見られたのか。実際の波形データなども公開してもらってのコアな取材からは、ゲーム音楽ならではの魅力と、ハイレゾというフォーマットがどのように活かされているのかを知ることができた。
−−早速ですが、阿保さんがゲーム音楽を制作されるにあたっては、どういったことを重要視されていますか?
阿保 剛氏(以下、阿保) もう最近は、物語を中心に考えています。これは、“演出としての音楽”をいかに作るか、ということです。演出の効果を出すためには、その物語を理解していないといけないので、物語重視になるんです。昔はハード的な制約も考える必要がありましたが、今はそれが無いに等しいので。
−−では、物語の展開をあらかじめ知ってから、制作に取り掛かるという流れになるのでしょうか?
阿保 そうできれば取り組みやすいのですが、必ずしもそうではありません。ゲームのタイトルによって、こんな音楽が欲しいというソングリストががっちりとできていることもあれば、まだ途中の段階から参加することもあります。逆に、シナリオを先に読ませていただいて、このシーンにはこんな曲が合うだろうというものをこちらでイメージして、リストを作ってしまうこともあります。この場合の順番としては、まずその作品のテーマとなる曲を最初に作り、その後で、リストに沿って各シーンに合わせた曲を作っていきます。最後に、汎用性の高いと言うか、色んなシーンで活用できる曲を作ります。『STEINS;GATE』などの科学アドベンチャーシリーズや『12RIVEN - the Ψcliminal of integral - 』はこのパターンですね。
たとえリストを先にいただいたとしても、それだけで作るわけではないんです。やっぱり、シナリオを全部読んでからになりますね。だから、工程的にはそれほど変わらないかもしれません。いきなり激しい曲がゲームの序盤から流れることは想定しづらいので、クライマックスに向けて盛り上げていく、といったことを音楽でも意識しています。
−−物語の流れも踏まえたうえで音楽が作られていくわけですね。サウンドトラックの曲順なども、そういった面は反映されているのでしょうか?
阿保 そうですね、曲順も自分で決めさせていただいています。物語の流れに沿ってみたり、重要なシーンは後に来るようにしたりと、こだわっています。
−−曲名なども、シンプルなものから意味深なものまで、その曲名がどれも音楽が流れるシーンを想起させるものになっていますが、これは?
阿保 それも、自分で。リストを作った段階でイメージが固まっているので、そのキーワードがそのまま曲名になっていますね。「M-01」とかにしてしまうと、あとで何の曲か分からなくなってしまいますし(笑)
−−ゲーム音楽の作曲家の方が、最初の段階から曲名をつけて、それがそのまま正式に採用されていくのは珍しいのではないかと思います。深く作品を理解する阿保さんならではですね。では音楽そのもので考えた際には、どこを起点に制作に取り組まれるのでしょうか?
阿保 この曲を作ろうと思って音色を作るアプローチと、最初に音色を作ってそれを曲に使っていくアプローチの2つのパターンがあります。音色は、誰も使っていない音色を使いたくなるので、アナログ楽器を意識しないで、エフェクトを掛けてみたり、逆再生してみたりして、違う音にすることもあります。
どこかで使いたいという音色はたくさんあって、ここぞという時に入れてみたりしています。入れてみても合わなければ、また寝かしておいて、次の機会を待つことになります。だいたい来ないんですけれど(笑) 結局、新しく作ってしまいますから。
メロディはどちらかと言えば、後回しにしています。あまり音楽が主張してしまうと、悪い意味で耳に入ってしまうというか、ゲームの邪魔になってしまいますから。いっそメロディをなしにしてしまう、ということもあります。一度作ってから、時間を置いてみて、やっぱりおかしいと思えば調整する、の繰り返しですね。
−−ちなみに、ゲーム音楽は使用されるシーンの間、ループしてずっと流れていますよね。サウンドトラックでも、音楽をループさせてフェードアウトしていくような構成のイメージがありますが、この辺りはいかがでしょう?
阿保 実はゲーム本編で使えるようにループさせているバージョンと、ゲームの音楽鑑賞メニューやサウンドトラック用に曲として終わりをつけたバージョンの2パターンを必ず作るようにしています。だから曲数としては、2倍作っていることになります。絶対にサウンドトラックを出したい、という気持ちがありますし、こうしておけば、音源データはあるからいつでも出せるよ、とこちらからお願いすることもできますから(笑)
−−なるほど、ついにその思いが結実したわけですね。では、実際に配信されている“阿保 剛ハイレゾ作品集”のタイトルについて、それぞれお話をお聞かせください。
その名もズバリ、「作曲家・阿保 剛ハイレゾ作品集」というこの企画。スタートしたきっかけは、阿保さんが所属する株式会社MAGES.が展開する5pb.Recordsレーベルのラインアップの中で、ハイレゾとCDクオリティのものを聴き比べした際、ハイレゾ化による効果を最も感じられたのが、ゲームのサウンドトラックだったからだという。
5pb.Recordsと言えば、積極的にハイレゾに取り組み、数々のアニメ・ゲーム音楽をハイレゾで展開するレーベルだ。その取り組みは先進的であり、極めて真面目。確かなこだわりのもと、音源が制作されている。そこから自信を持ってリリースされているとなれば、音のクオリティは疑うべくもない。
けれど、ラインナップのなかには随分前のゲームのタイトルも含まれている。ゲームをプレイ中に再生されるもの、もしくはCD版のサウンドトラックと、ハイレゾで聴くことができる今回のリリースタイトルにおいては、色々と違いが生じるのではないだろうか?
そこで今回は、阿保さんご本人に、ハイレゾ化されたタイトルについて解説していただいた。デジタル環境において制作された音源をハイレゾ化する、その過程においてはどういった変化が見られたのか。実際の波形データなども公開してもらってのコアな取材からは、ゲーム音楽ならではの魅力と、ハイレゾというフォーマットがどのように活かされているのかを知ることができた。
−−早速ですが、阿保さんがゲーム音楽を制作されるにあたっては、どういったことを重要視されていますか?
阿保 剛氏(以下、阿保) もう最近は、物語を中心に考えています。これは、“演出としての音楽”をいかに作るか、ということです。演出の効果を出すためには、その物語を理解していないといけないので、物語重視になるんです。昔はハード的な制約も考える必要がありましたが、今はそれが無いに等しいので。
−−では、物語の展開をあらかじめ知ってから、制作に取り掛かるという流れになるのでしょうか?
阿保 そうできれば取り組みやすいのですが、必ずしもそうではありません。ゲームのタイトルによって、こんな音楽が欲しいというソングリストががっちりとできていることもあれば、まだ途中の段階から参加することもあります。逆に、シナリオを先に読ませていただいて、このシーンにはこんな曲が合うだろうというものをこちらでイメージして、リストを作ってしまうこともあります。この場合の順番としては、まずその作品のテーマとなる曲を最初に作り、その後で、リストに沿って各シーンに合わせた曲を作っていきます。最後に、汎用性の高いと言うか、色んなシーンで活用できる曲を作ります。『STEINS;GATE』などの科学アドベンチャーシリーズや『12RIVEN - the Ψcliminal of integral - 』はこのパターンですね。
たとえリストを先にいただいたとしても、それだけで作るわけではないんです。やっぱり、シナリオを全部読んでからになりますね。だから、工程的にはそれほど変わらないかもしれません。いきなり激しい曲がゲームの序盤から流れることは想定しづらいので、クライマックスに向けて盛り上げていく、といったことを音楽でも意識しています。
−−物語の流れも踏まえたうえで音楽が作られていくわけですね。サウンドトラックの曲順なども、そういった面は反映されているのでしょうか?
阿保 そうですね、曲順も自分で決めさせていただいています。物語の流れに沿ってみたり、重要なシーンは後に来るようにしたりと、こだわっています。
−−曲名なども、シンプルなものから意味深なものまで、その曲名がどれも音楽が流れるシーンを想起させるものになっていますが、これは?
阿保 それも、自分で。リストを作った段階でイメージが固まっているので、そのキーワードがそのまま曲名になっていますね。「M-01」とかにしてしまうと、あとで何の曲か分からなくなってしまいますし(笑)
−−ゲーム音楽の作曲家の方が、最初の段階から曲名をつけて、それがそのまま正式に採用されていくのは珍しいのではないかと思います。深く作品を理解する阿保さんならではですね。では音楽そのもので考えた際には、どこを起点に制作に取り組まれるのでしょうか?
阿保 この曲を作ろうと思って音色を作るアプローチと、最初に音色を作ってそれを曲に使っていくアプローチの2つのパターンがあります。音色は、誰も使っていない音色を使いたくなるので、アナログ楽器を意識しないで、エフェクトを掛けてみたり、逆再生してみたりして、違う音にすることもあります。
どこかで使いたいという音色はたくさんあって、ここぞという時に入れてみたりしています。入れてみても合わなければ、また寝かしておいて、次の機会を待つことになります。だいたい来ないんですけれど(笑) 結局、新しく作ってしまいますから。
メロディはどちらかと言えば、後回しにしています。あまり音楽が主張してしまうと、悪い意味で耳に入ってしまうというか、ゲームの邪魔になってしまいますから。いっそメロディをなしにしてしまう、ということもあります。一度作ってから、時間を置いてみて、やっぱりおかしいと思えば調整する、の繰り返しですね。
−−ちなみに、ゲーム音楽は使用されるシーンの間、ループしてずっと流れていますよね。サウンドトラックでも、音楽をループさせてフェードアウトしていくような構成のイメージがありますが、この辺りはいかがでしょう?
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次ページシュタゲやロボノなど、アルバムごとのエピソードに迫る!
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