公開日 2015/09/24 16:24

【インタビュー】民放5社の見逃し配信「TVer」は “若者のテレビ離れ” を食い止められるか?

<山本敦のAV進化論 第70回>

「詳細はまだいろいろなユースケースを想定しながら詰めている段階ですが、おそらくスマホはLTEネットワークでのデータ通信を使って観る方も多いと思いますので、あえて300〜400kbps程度の低ビットレートで視聴できるモードを用意すべきと考えています。上はPCなら2Mbps、スマホやタブレットは1.5Mbpsぐらいの一般的な帯域幅になるのではないでしょうか。解像度についても未定ですが、だいたい1,280×720画素ぐらいになるだろうと思います。通信環境や視聴するデバイスに応じてアダプティブに配信できるよう、PCで4つ、モバイル機器で4つぐらいの分類になると思います」(須賀氏)

プレゼントキャスト 須賀氏

NetflixやdTVなど定額制動画配信サービスの陣営は、膨大な映像アーカイブの中からユーザーが見たくなるようなコンテンツを効果的におすすめするレコメンド機能の開発に力を入れている。TVerの場合は参加する5局がそれぞれにドラマやバラエティ番組を中心に、毎週10番組ほどを1週間前後オンラインに公開していくという基本方針を掲げている。

つまりTVerには毎週50本前後のコンテンツが入れ替わりながら公開されている状態になる。定額制動画配信のようにコンテンツの総数が膨大にあるわけではないので、高度なレコメンド機能は必要ないかもしれないが、それでもTVerならではの動画をスムーズに楽しむための機能を付けたいと須賀氏は語る。

「TVerに公開されるコンテンツの掲載期間は基本的に1週間だけなので、そのぶん『新着コンテンツ』や『昨日から配信がはじまったコンテンツ』といった切り口で、ユーザーが見たい番組を見逃さないようにわかりやすく通知する機能は用意したいと考えています」(須賀氏)

各局のコンテンツがTVerに公開されるタイミングはどれもが番組の“放送終了直後”になるとは限らない。なぜなら放送で使うための権利処理はクリアになっていても、インターネットでの2次使用までは権利を確認できていないというコンテンツもあるからだ。

このような番組の場合、放送で使われた音声や写真を差し替えたり、場合によって大がかりな編集が必要になる可能性もあるため、放送直後が配信のスタートになるとは限らない。新着番組が公開されたことをアラートできるサービスがあれば、ユーザーがより便利にTVerを使えるようになるはずだ。


須賀氏がもう一つTVerへの実装を検討しているのは、「出演者」ごとに見たい番組が探せる機能だ。

「当社が運営に協力している『ハミテレ』というプロジェクト(http://hamitv.jp/)では、視聴者は出演者をチェックして見たい番組を探しているという傾向が表れています。TVerの場合も、あらかじめ好きなタレントを登録しておけば、そのタレントが出ている番組が始まった時に教えてくれるというノーティフィケーションをできる限り初期の段階から搭載したいと考えています」

現在テレビ局が配信向けとして用意している動画コンテンツには、番組に関連するおおまかなメタ情報しか含まれておらず、例えば出演者情報は番組概要の中に名前がベタうちのテキストとして入っているだけだという。これをきちんと出演者のID情報として別途項目を立てて持たせることで、精度の高いメタ情報として作り込んでいくと須賀氏は構想を語る。


シェア機能についてはどうだろうか。須賀氏はこれも前向きに検討したいと語っている。

「TVerの中に番組の詳細ページが立ち上がったら、そのページをシェアする機能を提供したいと考えています。番組自体への感想を投稿する機能を内包する計画はありません。こちらはTwitterなどほかのSNSを使っていただくことになると思います」

なお、本件取材を行った8月中旬時点ではまだ開発中のTVerのアプリを見せてもらうことはできなかったが、プレーヤーのざっくりとした仕様がどうなるのか、須賀氏に構想を訊ねた。プレーヤーの画面からは配信ビットレートや画質が選べるようになり、再生・一時停止にボリューム操作、シークバーによる頭出しができるようになるという。チャプターについてはその概念を持たないため、送り操作の機能は設けられない。

■見逃し配信だけでなくライブ配信への拡大はあり得る?

TVerはテレビ番組の見逃し配信サービスだが、一方で今年の7月1日から東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)が、同チャンネルで放送されているアニメ番組などから毎日何本かのコンテンツをピックアップして、インターネット経由でiOS/Androidスマートフォンやタブレットに向けて同時再送信を行う無料アプリ「エムキャス」の実証実験を始めている。

次ページインターネット対応テレビでは利用できないのはなぜ?

前へ 1 2 3 4 5 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
クローズアップCLOSEUP
アクセスランキング RANKING
1 XREAL、XREAL Oneが入った「開運福袋2026」を12/11から販売。200セット限定
2 HARBETHの魅力は“声”にあり!色褪せぬエバーグリーンなサウンドを、あえてのアニソンで斬りまくる!
3 5万円で激変、“DCリニア電源”をどう使う?トップウイングの「DC POWER BOX」徹底使いこなし!
4 AVIOT、LDACにも対応した1万円切りの“ピヤホン9”「TE-U1-PNK」
5 mora、ハイレゾ配信12周年キャンペーン第2弾スタート。「ハイレゾ大使」には森口博子が就任
6 『続・太鼓判ハイレゾ音源はこれだ!』#2【後編】- かつしかトリオ『“Organic” feat. LA Strings』リリース記念インタビュー
7 AURAS東京、シアターの常識を覆すかんたん操作&美しいデザインの“エンターテイメント空間”をカスタムメイド
8 LG、リアルタイムAIプロセッサー搭載の4K有機ELテレビ「OLED C5M」
9 【Qobuzダウンロードランキング】ブルーノート東京、夏の風物詩!矢野顕子トリオのライブ盤が1位にランクイン
10 Bowers & Wilkins、「801 D4」を六本木ISETAN SALONEにて特別展示。12/25まで
12/12 10:48 更新
音元出版の雑誌
オーディオアクセサリー199号
季刊・オーディオアクセサリー
最新号
Vol.199
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
特別増刊
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
最新号
プレミアムヘッドホンガイドマガジン vol.23 2025冬
別冊・プレミアムヘッドホンガイドマガジン
最新号
Vol.23
プレミアムヘッドホンガイド Vol.33 2025 SUMMER
プレミアムヘッドホンガイド
(フリーマガジン)
最新号
Vol.33(電子版)
VGP受賞製品お買い物ガイド 2025年冬版
VGP受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年夏版(電子版)
DGPイメージングアワード2024受賞製品お買い物ガイド(2024年冬版)
DGPイメージングアワード受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年冬版(電子版)
WEB
  • PHILE WEB
  • PHILE WEB AUDIO
  • PHILE WEB BUSINESS
  • プレミアムヘッドホンガイド
  • ホームシアターCHANNEL
  • デジカメCHANNEL
AWARD
  • VGP
  • DGPイメージングアワード
  • DGPモバイルアワード
  • AEX
  • AA AWARD
  • ANALOG GPX