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<山本敦のAV進化論 第70回>

【インタビュー】民放5社の見逃し配信「TVer」は “若者のテレビ離れ” を食い止められるか?

公開日 2015/09/24 16:24 山本 敦
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作り込んだストーリー性の高い動画コンテンツを配信するNetflixやdTVなどのVODサービスに対して、既存のテレビ放送局が圧倒的な強みを発揮できるフィールドが「放送中番組の同時配信」だ。これをTVerで実現することはやはり難しいのだろうか。長谷川氏に訊ねた。


「TVerを起案した当初は検討の俎上に乗せたことはありますが、結論から言えばどれだけニーズがあるのかわからないという観点から、今のところは見送っています。例えばスマホならフルセグやワンセグ機能が搭載されていて、録画機器を併用すればリモート視聴機能も使えるからです。

NHKは今後インターネットを活用した番組提供にも力を入れていくことを発表しており、私たちもその動向に注目しています。同時再送信が一般的になる時代が来れば対応しなければならないとは考えていますが、現在のところは例えば権利処理など色々な課題に対して慎重に対応する段階です。

もう一つはテレビ固有の事情ですが、テレビの放送局は県単位で免許を与えられていますので、放送を届けられる地域が厳密に決められています。本来は各地域に限定したかたちで放送できる番組が、インターネットによって全国に流れてしまうことの是非について、まだ議論を重ねる必要があります」


ラジオの場合は以前に当連載でも取り上げたIPサイマルラジオサービス「radiko.jp」(関連記事)がエリアフリーで番組を聴取できるサービスを有料でスタートしているが、テレビの場合は同じことを実現するのが難しいのだという。テレビの場合、放送法で管轄されている「電波を使った放送」は提供できるエリアが厳密に決められているからだ。

インターネットの場合は放送法で定義する対象にならないため、例えばMXテレビのエムキャスは問題がないのだという。残るは民間放送固有の問題であり、例えば東京の放送がインターネットを通じて全国で視聴できてしまうと、各エリアの系列局で番組を見る視聴者への影響や、各局のビジネスモデルに及ぼされる影響についても配慮しなければならなくなる。

ここで一つ確認しておきたいことは、TVerに公開されたコンテンツは全国のどの地域で見られるのかという点だが、これについては在京5局が製作したコンテンツが全国で見られるようになるという。反対に地方の系列局が製作したコンテンツがTVerのプラットフォームに乗って配信されることもあるのだろうか。

龍宝氏は「細かい部分のルールはこれから整備していくことになるだろうが、現時点ではキー局が系列局と議論しながら最適な形でコンテンツを視聴者に届ける方法を一緒に考える段階。系列局が各々にTVerに番組を提供するということはないだろう」と語っている。

キー局で製作されたコンテンツがインターネットを通じて全国で見られてしまうことには問題はないのだろうか。長谷川氏によれば、放送の電波を使ってリアルタイムに送っているものについては提供できるエリアが決められているので、これを遵守しなければならないが、インターネットによる通信の場合は番組内で権利関係さえクリアできていれば、別のものとして扱われることになるので問題はないという。各局が製作した番組をDVDにして全国で販売しても問題がないのと理屈は一緒だ。

ただし、同時再放送については電波による放送の延長線上で考えるならば、提供エリアを気にしながら慎重に運営したほうが良いという立場を長谷川氏らは示している。

■インターネット対応テレビでは利用できないのはなぜ?

TVerを視聴できるデバイスはパソコンとスマートフォン、タブレット。昨今のスマートテレビに代表される、インターネット接続機能を持つテレビでの視聴に対応しなかった理由はどこにあるのだろうか。

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