公開日 2011/09/21 10:00

「自分たちが欲しい商品を作った」 − ソニーのヘッドマウントディスプレイ「HMZ-T1」開発者インタビュー

ソニーの技術を結集した「オールソニー」製品
インタビュー:ファイル・ウェブ編集部
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
発表以来、非常に大きな反響を巻き起こしている、ソニーの3D対応ヘッドマウントディスプレイ「HMZ-T1」。9月10日から開始したソニーストア銀座での実機展示には、初日に多くの来場者が詰めかけ、実に7時間待ちの大行列となったという。

ソニー「HMZ-T1」

製品の概要はニュース記事や林正儀氏によるファーストインプレッションで紹介したとおりだが、もう一度、かんたんにおさらいしておこう。

HMZ-T1は、ヘッドマウントディスプレイというスタイルを採用し、超大画面をパーソナルユースで手軽に楽しめるのが最大の特徴。また独自開発のHD有機ELパネルを搭載して画質を高めたこと、さらに原理的に3Dのクロストークが発生せず、これまでにない映像体験を可能にした点も特筆される。さらにサラウンドヘッドホンが一体化されており、映像だけでなく音声までがトータルに楽しめることも覚えておきたい。

さらには、これだけの仕様を盛り込んだ製品でありながら想定売価が6万円と手頃であることも、多くの人の注目を集めている大きな理由の一つだろう。

今回当サイトでは、この話題の商品の開発を統括したソニー(株)楢原立也氏、また商品企画を担当した同社 森英樹氏にインタビュー。商品の詳細はもちろん、開発に至った背景、商品化に至るまでの様々なエピソードを語って頂いた。

開発を統括したソニー(株)コンスーマープロダクツ&サービスグループ ホームエンタテインメント事業本部 第2事業部 設計2部 5課 統括課長の楢原立也氏

商品企画を担当したコンスーマープロダクツ&サービスグループ ホームエンタテインメント事業本部 第2事業部 HAV企画MK戦略部企画3課 プロダクトマネージャーの森英樹氏

ーー 本日はよろしくお願い致します。まずは楢原さんにお聞きしたいのですが、本商品の企画に至った背景、きっかけなどを教えてください。

楢原:私はもともとレコーダーやビデオのエンジニアで、20数年間、一貫して記録系、レコーダー系を歩んできたのですが、今回、図らずもディスプレイを担当することになりました。

背景には、スマートフォンなどモバイル機器向けのデバイスがたくさん出てきたことがあります。スマホなどの存在感が高まるにつれて、非常に小さなデバイスや省電力デバイスが次々に出てくるわけです。このデバイスを使って何か面白いことができないか、いくつかのチームに分かれて色々なアイデアを出し合ったのですが、その成果の一つが、今回の「HMZ-T1」です。

ーー レコーダー畑を長く担当されてきた楢原さんが、なぜディスプレイ機器を手掛けることになったのでしょう。

楢原:面白いもので、我々の所属している事業部では、担当分野のこだわりが無いんですね。もちろん、ディスプレイにはほかに専門部署があるのですが、「レコーダー屋がディスプレイをやってもいいのでは」というノリがあります。面白ければやらせてもらえるという雰囲気があるんですね。

森:私が本格的に参加するのはもう少し後ですが、当初から、レコーダーの枠というのはとりあえず忘れて進めていこうという雰囲気がありましたよね。

■クロストークが無い3D映像を有機ELパネルで

楢原:この商品の原案に至ったのは、2009年末くらいでしょうか。当時は3Dテレビもまだ発売されていない段階でしたので、試作段階の3D表示機器では、クロストークがかなり多かったのです。

開発部門で3Dの画質を追求する中で、クロストークが無かったらどのような視聴体験になるだろうというアイディアがありました。それを検証するため、EVF用の液晶パネルとレンズを2つ並べて左右映像を映してみる、HMDの原器のようなものを試作していました。

これを見せてもらうと、今回のHMZに比べればとても小さな絵ではあったのですが、非常にきれいな3D映像が表示されました。これは開発してみる価値があると感じ、商品化を目指した開発を始めることにしました。

パネルについても、αのEVF用に有機ELパネルを開発していることを聞いていたので、これをベースに作ればできるだろう、と目途をつけました。

ーー 色々な要素技術を組み合わせていくことで、全く新しいものが作れるとお考えになったのですね。

楢原:そうです。次に考えなければならなかったのは、パネルとレンズを使ってどんな体験を作るかということ。最初は「100インチの有機EL」をコンセプトにしようと思いました。有機ELは当時、11インチのXEL-1を販売していましたが、2011年度内の商品化を狙っていたので、その時点で100インチの有機ELのテレビはまずないだろう、と。でも、どうもそれでもピンと来ない。

次ページ「劇場を作ったら」の一言で試作機を開発

1 2 3 4 5 6 7 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
クローズアップCLOSEUP
アクセスランキング RANKING
1 レコードの音楽を読み取って光るターンテーブル。オーディオテクニカ「Hotaru」一般販売スタート
2 ダイソンとPORTERがコラボした特別デザインのヘッドホンとショルダーバッグ。全世界380セット限定販売
3 LUMINの進化は終わらない。初のディスクリートDAC搭載「X2」の思想を開発担当者に訊く!
4 Spotif、2025年に最も聴かれた邦楽は「ライラック」。国内外で最も聴かれた楽曲・アーティストの年間ランキング発表
5 DUNU、7ドライバー/トライブリッド構成を採用したイヤホン「DN 142」
6 カセットテープとともに過ごすカフェ「CASSE」。12/17渋谷でグランドオープン
7 Vento、3次元特殊メッシュを採用したハイブリッド拡散パネル「DAP180 / DAP120」
8 AVIOT、最大120時間再生と小型軽量を両立したオンイヤー型Bluetoothヘッドホン「WA-G1」
9 サンワサプライ、省スペース設置できる木製キャビネットのサウンドバー「400-SP120」
10 アイレックス、ALBEDO/AUDIAブランド製品の価格改定を発表。2026年1月1日より
12/5 10:47 更新
音元出版の雑誌
オーディオアクセサリー199号
季刊・オーディオアクセサリー
最新号
Vol.199
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
特別増刊
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
最新号
プレミアムヘッドホンガイドマガジン vol.23 2025冬
別冊・プレミアムヘッドホンガイドマガジン
最新号
Vol.23
プレミアムヘッドホンガイド Vol.33 2025 SUMMER
プレミアムヘッドホンガイド
(フリーマガジン)
最新号
Vol.33(電子版)
VGP受賞製品お買い物ガイド 2025年冬版
VGP受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年夏版(電子版)
DGPイメージングアワード2024受賞製品お買い物ガイド(2024年冬版)
DGPイメージングアワード受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年冬版(電子版)
WEB
  • PHILE WEB
  • PHILE WEB AUDIO
  • PHILE WEB BUSINESS
  • プレミアムヘッドホンガイド
  • ホームシアターCHANNEL
  • デジカメCHANNEL
AWARD
  • VGP
  • DGPイメージングアワード
  • DGPモバイルアワード
  • AEX
  • AA AWARD
  • ANALOG GPX