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【連載】ガジェットTIPS

ヘッドホンのパッドがボロボロ...その原因は

2021/03/10 海上忍
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お気に入りのヘッドホン、ふと気がつくとパッド表面がボロボロ、薄い小さな布片が耳周辺に貼り付いていた、という経験はありませんか? その原因のひとつには「加水分解」が挙げられますが、パッド表面によく利用されているポリウレタンに限定していえば、事態はもう少し複雑です。

J-Stageで閲覧できる学術論文「ポリウレタンの劣化と安定化」(PDF)によれば、ポリウレタンの劣化には、大気に含まれる酸素やオゾンによる劣化、紫外線による構造的な化学変化、水による加水分解、熱による構造的な化学変化という科学的な要因と、熱による機械的破壊と膨張・収縮によるクリープ負荷という物理的な要因があり、それが自然環境下で複合的に作用することで劣化が進むのだそう。

パッド劣化の原因は?

パッドという肌に直接触れる素材の場合、皮膚から放出される水蒸気や汗が触れれば加水分解が進み、体温で暖められることでそのスピードが増すと考えられます。そのうえ水(H2O)は空気中にも含まれており、加水分解を完全に防ぐことは難しいことから、ポリウレタン製のパッドは劣化が避けられそうにありません。

ただし、ポリウレタンにはエーテル系とエステル系の2種類があり、前者のほうが加水分解されにくいとされています。もし、パッドの素材がエーテル系のポリウレタンで、空気や光(紫外線)に晒されることなく、乾燥剤などで乾いた場所に保管するのなら、数年といわず長持ちする可能性はあるでしょう。もっとも、それではヘッドホンとしての機能を果たせませんから、パッドは消耗品と割り切り、製造中止となる前に交換用パッドを手配しておくことが現実的といえそうです。

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