高域補間のイメージ。上のMP3信号では16kHz以上のデータがすっぱり切り落とされているが、補間後は48kHz程度まで伸びている
ビットレボリューション・テクノロジーは、マクセルと九州工業大学・佐藤寧教授との共同開発によるものだ。ひとことでいうと倍音成分の補間である。CDでは44.1kHzのサンプリングにより、ほぼ20kHz以上の成分が失われる。またMP3やWMAなどの圧縮であれば、上限はせいぜい16kHzまでだ。これは本来の音楽情報にはほど遠く、高域の空間情報や微妙なニュアンスに差が出て当然だろう。

この失われた高域情報を、どうやって補間・復元するのか。例えばCDであれば20kHzまでのデータはもっている。その基本となる音楽データを抽出、コンピュータで超高速解析することで、「この音にはどんな高音があったんだろうか」と類推する。埋もれていた高域情報がみごとに蘇るわけだ。ビットレボリューションでは、最高で48kHzまでの高域補間が可能だという。また圧縮音声の16kHzが一気に48kHzまで伸びるのも画期的だ。いままで他社でも補間の機能はあったけれど、レベルが違う。「MP3の音をCD音質へ」から「MP3もCDもSACD音質へ!」という、前例のないスーパー・ハイクオリティ再生が実現するのだ。

だが周波数軸(横軸)のワイド化だけでない。縦軸となるダイナミックレンジの拡大についても、スムージングと呼ぶビット拡張技術にてクリアしている。CDやMP3は16ビット信号だが、強弱の変化をさらにキメ細かに再現すべく、24ビットに拡張変換するわけだ。ビット数は2ビットにつき倍々ゲームだから、16ビットに比べ音の分解能が8倍にもなる。滑らかさが8倍だ(公称のダイナミックレンジは120dB以上)。音の情報は面積だから、48kHz×24ビットが、ビットレボリューションの最高クオリティとなるわけだ。

ビット拡張のイメージ
もとのアナログ波形。滑らかな曲線を描いている
CDレベルの16ビット/44.1kHzでは、上図のようなデジタル波形となる
ビットレボリューションによるビット拡張により、もとのアナログ波形に近い滑らかなデータに復元できる

少し難しいのだが、48kHzの高域を得るには2倍の96kHzでアップサンプリングすることになる(シャノンの法則)。つまりパソコンのドライブにセットした好みのCDソフトから、96kHz/24ビット処理によって、まさにSACDに迫る高音質が聴けるといっても、言い過ぎではない。

さらにビットレボリューションでは、人に優しい「聴視感度補正」ということまでやる。耳の特性、聞こえ方は年齢などで個人差があるからだ。18才をピークに高音域がだんだん聞こえづらくなるというデータもあるほどで、ふだんの生活の中で実感されている方も多いだろう。DAPで難聴になるのは社会問題だが、一般に高い音、小さい音ほど聞こえづらいものだ。そこで耳の特性を測るアプリケーションを内蔵していて、実測することができる。周波数ごとにキメ細かくチェックして耳のクセを割りだし、その人にあわせたイコイジング(高域補正)で補正してくれるのが「聴感度補正」である。これはヘッドホンで「ピッ、ピッ」という発信音をききながら「はい、いいえ」で答えていく。個々のユーザーに適した、より自然で原音に近い聴感となる。実にユーザーフレンドリーなカスタマイズ機能だ。

ユーザー個々の聴覚を測る測定機能を搭載。一般的に18歳をピークに聴力は下がるとされている。この機能を使えば、聞こえにくい帯域を持ち上げることで、本来の音を再現することができる
ヘビー←→ライト、シャープ←→ソフトの軸上にポイントを押く、直感的な操作が可能なイコライジング機能も備える

これだけの膨大な処理をこなすには、以前ではワークステーションでも難しかっただろう。それがPCのマシンパワーで可能となったのが、本システムが生まれた背景ともいえる。ちなみに、ここまでパソコンをホームオーディオで活用した例はない。