テレビの主役がブラウン管からフラットディスプレイに急速に切り替わっているが、その変化がまさに進行中のいま、新たな潮流が生まれようとしている。薄型テレビから超薄型テレビへの進化である。

この「変化から進化」への道に先鞭を付けたのは、この冬にUTシリーズの液晶テレビを発売する日立である。「UT」はUltra Thinの略で、文字通りパネル部の厚さは最薄部でたったの35mmしかない。既存の薄型テレビに比べて一気に約1/3になったわけで、実物に接するとそのインパクトは想像以上に大きい。コンセプトモデルではなく、まもなく実際に発売される製品と聞いて衝撃を受ける人も少なくないだろう。

ここまで薄型化が進むと、当然ながらモニター本体は大幅に軽くなり、設置の自由度が高まる。これまで実現が難しかった壁掛け設置も視野に入るし、フロアスタンドに載せてリビングルームの雰囲気を一変させるのも面白い。超薄型はレイアウトフリーの始まりでもある。

UTシリーズは年内に発売される32V型に加え、来春には37V型、そして42V型が登場し、第一弾のラインナップが完成する。パネルはいずれも高効率で視野角の広いIPS方式を採用し、37V型と42V型はフルHD仕様になるという。今後、UTシリーズは、既存のプラズマテレビ・液晶テレビに加えて日立の薄型テレビの中心を担う存在になると考えていいだろう。薄型テレビも高付加価値が求められる段階に入ったが、日立は超薄型をキーワードに薄型テレビ市場を牽引していくことを宣言したのである。

先陣を切って12月に発売される32V型のUT32-HV700を例にとり、UTシリーズの新しさを検証してみることにしよう。

本機はコントロール部とモニター部で構成されるセパレート型を採用した。両者の間をHDMIケーブルで接続する手法を選ぶことで、2つのメリットが生まれる。第一にモニター本体をすっきりとスリムに仕上げられること。そして、接続をコントロール部に集中させることで配線を整理できるというのが2番目のメリットだ。

【Woooステーション】UTシリーズはモニター部と、チューナー部のWoooステーションを分離。HDMIケーブルで接続して使用。iVポケットを搭載し、Woooリンクにも対応。縦置き、横置きも可能

コントロール部(Woooステーション)はリムーバブル型HDD(iVDR-S)用のiVポケットを内蔵しているので、手軽に録画機能を組み込むことができる。さらに、オプションのワイヤレスユニットを導入すればWoooステーションとモニター間の配線をなくすことすら可能なので、特に壁掛け設置では検討対象に入れておきたい。

【ワイヤレスユニット】モニター部及びWoooステーション部と、別売のワイヤレスユニット「TP-WL700H」の送信部、受信部をHDMI接続すれば、最大約9mまで離して設置が可能 【壁掛け】圧倒的な薄さで従来より10cm以上も壁面に近く設置が可能。それはまるで絵画を飾るかのような感覚

壁掛け用にはブラケットが用意されるのだが、その場合の背面と壁との間隔は僅か2cmと非常に小さいので、絵画を飾るような本当の意味での壁掛け設置が実現する。既存の薄型テレビは本体が重いのでブラケットも大きくなり、実際には壁からかなり手前に突き出した状態になってしまう。そうした理由でこれまで壁掛け設置をためらっていたケースでもUTシリーズなら諦める必要がない。

背面の美しさは今までのテレビにはない上質さを醸し出す。凹凸をそぎ落としたスリムでフラットなデザイン

モニターの薄さを際立たせているのが、背面を含む360度あらゆる方向まで意識されたデザインの秀逸さである。背面までデザインされたディスプレイというのはこれまでほとんど例がなく、放熱孔や入力端子部が無造作に並んでいるのが普通の状態だ。UTシリーズは背面にも光沢仕上げを施したうえに、誇らしげにWoooのロゴがプリントされている。放熱は下端と上端の僅かな開口部を利用し、下から上に熱を逃がすことで対応し、ファンレス構造にこだわった。

レイアウトフリーというコンセプトを実現するためには、どんな場所に設置したときにも周囲の空間と違和感なく溶け込む柔軟性が求められる。背面を美しく仕上げることもその重要な要素の一つだが、外見の美しさにこだわることも肝心なポイントである。そのための工夫を実際に見てみることにしよう。

パネル周囲はクリアパネルと光沢塗装部を前後に組み合わせることによって奥行きと立体感を演出しているが、このデザインモチーフは香水瓶からヒントを得ているという。硬いエッジをなくしていることと、この深みの表現が、これまでのテレビとは一線を画す美しさを生んでいると思う。限定色として用意されるブルーやレッドの質感の高さも際立っているので、機会があればぜひ実機に接することをお勧めしたい。

驚異的な薄さを実現した技術のなかで特に注目すべきは電源モジュールの小型化である。蛍光管を使用するバックライト機構と電源をこの厚みのなかに組み込むのは至難の業と想像するが、実際に設計陣が最も苦労したのもこの部分だという。既存の電源モジュールでは当然ながら対応できないので、パーツのレベルから新規に開発し、複数の特許を申請中と聞く。技術のブレークスルーなしに超薄型テレビの製品化を実現するのは困難という事実を証明する好例といえよう。

【狭スペースファンレス冷却構造】大型サーバで培った放熱技術など日立の技術力が結集。下から上へ空気がスムーズに流れることで冷却する。開口部は下部と上部のみで、壁掛け時にも背面に熱が伝わりにくい 【薄型液晶モジュール】通常、パネルと蛍光管の距離を短くするとムラが生じてしまうが、新方式の拡散板の採用で、パネルと蛍光管の距離を縮めることに成功。これにより従来比約1/2の薄さを実現した