「DEEPBLACK」が実現する未知の世界を探る 今まで見たことのない黒がエプソン・EMP-TW2000には、ある レビュー&インタビュー

山之内 EMP-TW2000の製品開発上のポイント、画作り上の狙い等をお聞きすることにしましょう。

より豊かな映像表現を可能にする為には「広い色再現領域」と「広いDレンジ」が必要と考えています。前者についてはエプソンシネマフィルタ搭載により十分な広い領域を確保できています。そこで本機の開発では、後者のDレンジの拡大という点にポイントを絞りました。白側についてはD7パネルを採用することで20%以上の明るさ向上を達成し、黒側については、新技術の「DEEPBLACK」テクノロジーにより、従来の1/3程度の明るさに抑え込みました。結果として、アイリス使用時で50,000対1(ダイナミックモード/オートアイリスオン時)、ネイティブでも従来の3倍以上という高水準のコントラスト値を達成しました。

取材にご協力いただいた方々
セイコーエプソン(株)映像機器事業部 VI事業推進部 主任(光学設計担当)
林大輔 氏
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セイコーエプソン(株)映像機器事業部 VI事業推進部 主任(画質設計担当)
倉内新次郎 氏
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セイコーエプソン(株)映像機器事業部 VI事業推進部 部長(ホームプロジェクター総責任者)
古畑睦弥 氏
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倉内 このDレンジの拡大はD7パネル、DEEPBLACK、そしてエプソンシネマフィルタとの合わせ技により、暗部の階調性を保ちつつ、黒を沈め、白側のピークも同時に表現することに成功しております。また、コントラストが飛躍的に向上したため、オートアイリスに頼らない自然な階調表現の実現も可能としました。

山之内 階調性を高めれば、当然良い画を得られるはずですね。

Dレンジの拡大、高いコントラスト比は階調表現だけではなく、解像表現の向上にも一役買っています。

山之内 今回のモデルでは、レンズ自体が持つ潜在能力を上手に引き出しているように感じます。

倉内 画作り担当、光学設計担当、回路設計担当と徹底的に議論を重ねた結果です。数値を追求するだけでなく、エプソンとしての画作り上の狙いを関係者にきちんと伝え、より良い画を実現するための設計を施しています。

山之内 大事なことですね。

倉内 セクション別にバラバラに動くのではなく、全体的に「面」としての動きを心がけました。

山之内 エプソンはグループ内にパネル生産のノウハウも持っています。プロジェクター設計上の総合的な力を持っているのが他社にない強みと言えそうですね。

他ブランドに真似の出来ないエプソン独自技術について語る古畑睦弥氏(写真は拡大します)

古畑 セイコーエプソン製の最新液晶パネルを用いた製品は他社からも発売されています。同じパネルを使いながら、最終完成品でエプソンとしての独自性と優位性を保つことが出来たのは、総合的な技術力が向上したことと合わせて、ノウハウの蓄積がものを言っている部分もあります。

山之内 なるほど。

古畑 なんといってもエプソンは、業界全体のデファクトスタンダードを作り上げたメーカーですからね。パネルの特性を熟知し、その能力を100%引き出すだけの技術力を有しています。パネル以外の部分、いわゆる光学エンジンの技術開発力が差別化のポイントとなります。

山之内 本機に搭載されている技術は、他社には真似が不可能なものということですか?

古畑 そう簡単ではないと思います。

山之内 このリードを今後も保っていかなければいけませんね。

古畑 他社が現在のエプソンが持つ技術を会得した時には、エプソンはさらにその先を行かなければならないと思っています。

山之内 AVファンにとっては大変心強いコメントですね。


画作りの担当者として目指す究極の映像について語る倉内新次郎氏(写真は拡大します)
山之内 エプソンが考える究極の画とはどういったものですか?

倉内 かつての3管式プロジェクターが実現していた、スクリーンに「密着している」ような映像を3LCDプロジェクターで見せるということが最大の目標です。

山之内 なるほど。

倉内 3管式プロジェクターは、映っている映像の存在そのものをわざとらしく感じさせない立体的な表現力を有していました。ただ、3管方式にもデメリットがあり、それは明るさが決定的に不足していること、色域が狭いという点です。現在進行中の3LCD技術を用いれば、これらの不足要素を的確に補うことが出来ます。3管式が持つ無限の階調性とLCDの最新テクノロジーを組み合わせた、究極の映像を実現していきたいと考えています。

山之内 はい。

倉内 プロジェクターは映画を観るツールとして使われることが多く、単純に映画フィルムの画に近づけることが基本的な目標となりますが、実際はそれだけでは駄目です。観る側の視点に立った製品作りが必要なのです。

山之内 つまり、作品に没入出来るような完成度を持つ製品作りが必要ということですね。

倉内 「観ている」ことを行為として意識させずに鑑賞出来るのが究極だと思いますね。

山之内 EMP-TW2000は、最終目標にどの程度近づいていますか?

倉内 目指している方向性を的確に捉えて、その幾つかを実際に盛り込んだ優れた製品であると自負しています。


山之内 プロジェクターのリーディングメーカーとしてのエプソンが、この市場を広げるためにどのような方策を考えているのか、お話をお聞かせ下さい。

山之内 正氏に本機の優位性を解説するエプソン技術陣
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古畑 目の肥えたAVファンにご満足頂けるEMP-TW2000だけでなく、よりライトなユーザーの方に対しての提案として、DVD一体型モデルも2ライン用意しています。私たちが掲げる「映画館のある暮らし」というテーマをより多くの方に享受頂くための努力をこれからも行っていきたいと考えています。

山之内 EMP-DM1には、持ち運び用のハンドルも付いていますね。

古畑 テレビでも100インチを越えるサイズのものもありますが、値段も高いですし使用箇所の制約がつきまといます。EMP-DM1は、超大画面をフレキシブルに持ち運べるだけでなく、壁や天井に映すという新機軸も打ち出しています。そういった新しい提案を積極的に行い、プロジェクターファンの裾野を増やしたいですね。

山之内 今後も期待しています。

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