オーディオ・ビジュアルファンが絶大の信頼を寄せる記録メディアのブランド、TDKから遂に録画用ベアタイプのBD-R/BD-REディスクが発売される。記録面へのキズに優れた耐性を発揮する「DURABIS 2」コートをはじめとする、TDKの独自技術が活かされた新製品の魅力と、未来へ向けたTDKのBlu-ray Disc開発技術の最新動向を山之内正氏がレポートする。

書換型録画用ディスクとして、初めて2003年4月に発売された「BD-RE120N」から最新の録画用・データ用ベアディスクまで、TDKはこれまでにも様々なタイプのブルーレーザーディスクを商品化してきた (写真は拡大可)

高密度・大容量記録を行うBDが実用化された背景には、記録面を保護するハードコーティング技術の存在がある。

同社はDVDが登場した直後の1998年には早くもハードコーティング技術の開発に着手しており、その4年後の2002年にはDURABISの組成と製法を確立し、「超硬」シリーズのDVDを世に送り出した。開発の最終ターゲットは次世代メディアに設定していたが、当時まだBlu-ray Discは登場しておらず、先行してDVDに導入されたのである。

翌年4月には、いよいよTDKとして初の録画用Blu-ray Discが発売されたが、最初の規格では、当初からカートリッジタイプを想定していたため、ハードコーティングの威力を実感するのは難しかった。DURABISが真価を発揮するのは、ベアタイプのディスクが家庭用Blu-ray Discレコーダーに浸透するこれからが本番なのである。

TDKが開発したハードコーティング技術の総称が「DURABIS」だが、その中身は着実な進化を遂げている。DVDに搭載された「DURABIS 1」ハードコートは、キズや指紋等のヨゴレに対する強化などを経て現在に至るが、それ以外に、Blu-ray Discへの最適化を考慮した「DURABIS 2」ハードコート、埃付着への耐性を高めて業務用ディスクに導入された「DURABIS PRO」ハードコートなど、いくつかのバリエーションがある。

人工指紋をディスクの記録面に付着させ、顕微鏡で観察した実験結果。DURABIS 2コートを施したディスク(写真右)の方は指紋等のヨゴレが付きにくく、仮にヨゴレが付いてしまった場合でも細かい粒状になり、レーザー光の透過を妨げないという特長を持つ (写真は拡大可)

キズやヨゴレからコンテンツを守るというコンセプトは共通だが、ディスクの用途によって組成や製法を微妙に変えて、最適な特性を実現しているのだという。

今回新しく発売される録画用Blu-ray Discにも、追記型のBD-R、書き換え型のBD-REともにキズと指紋等のヨゴレの、両方に強いタイプのDURABIS 2が採用されている。

「超硬DVD」で実験した時のように、今回もスチールウールや油性ペンなどを使ってディスクにキズをつけたり、ヨゴレを付着させようとしたが、何度試みても徒労に終わってしまった。この常識では考えられないディスク表面の強さが、安定した記録再生を支えてくれるのである。

最新のBlu-ray Discでチェック!キズ・ヨゴレに強いDURABIS 2コートの実力
DURABIS 2コートを行ったBlu-ray Disc(写真右)と、一般のDVD-R(写真左)の記録面にわざと油性ペンで落書きをしてみる。Blu-ray Discの方は、油性ペンのインクが弾かれてしまい、書き込むことができなかった (写真は拡大可) スチールウールを使って記録面をこすってみる。通常のDVDでは、軽くこすっただけで致命的なキズが付いてしまうが、DURABIS 2コート済みのBlu-ray Discにはたやすくキズを付けることはできなかった (写真は拡大可) 通常、DVDの記録面に付いたヨゴレを普通のティッシュペーパーで拭き取ろとうすると、かえってキズが付いてしまう恐れがある。DURABIS 2コートを採用したTDKのディスクであれば、簡単なヨゴレを手軽にティッシュで拭くこともできる (写真は拡大可)

注:スチールウールや油性ペンでのテストは、機能のデモンストレーションを目的としたものであり記録内容の品質を保証するものではありません。


今年の秋にTDKが発売するBlu-ray Discは、追記型のBD-Rと書き換え型のBD-REの2種類だ。いずれもカートリッジのないベアタイプである。BD-REは赤、BD-Rは青を基調にしたパッケージに、それぞれデジタル放送のロゴマークが印刷されており、データ用ディスクと簡単に見分けられるように工夫されている。

【取材協力】
TDK株式会社 レコーディングメディアビジネス・グループ OP商品部
商品企画課 係長
渡邉学氏

BD-REは書き換え型DVDと同様に相変化技術を用いているが、DVDとの違いは厚さ僅か0.1mmというカバー層の存在である。TDKのBDは独自のスピンコート技術を採用することでカバー層の平滑性を高め、ナノミリ単位の精度を確保している。カバー層の厚さにムラがあると信号の記録/読み取り時にサーボ回路の動作が増大し、最終的に画質や音質に影響を与えることがあるので、平滑性の確保はクオリティを左右する重要な条件なのである。

一方のBD-RはDVD-Rのような有機色素ではなく、独自の無機材料で記録膜を形成している。この材料は記録時に合金を形成するタイプなので、光の影響を受けることがない。大切な映像・音声データを安定して保存する用途に適しているのはいうまでもない。

録画用Blu-ray Discの登場は、放送のデジタル化や大画面テレビの普及など、ハイビジョンの普及を進めてきた一連の動きを完成させる役割を担っている。新世代のBlu-ray Discレコーダーは、HDDとの連携によって様々な用途を生むと同時に、ハイビジョンのままディスクに保存する用途をいっそう身近にすることが期待されている。

ハイビジョン番組をHDDに記録して楽しむ用途はすでにDVDレコーダーで実現済みだが、これからはクオリティを維持したままDVDのように気軽にBlu-ray Discに保存し、「きれいに残して、繰り返し見る」楽しみが大きく広がることになるだろう。

筆者が個人的に期待している用途は2つある。まずはオペラや映画など長時間プログラムをHDDにハイビジョンで録画し、それをBlu-ray Discにムーブして保存する用途である。特に、毎週のようにオンエアされているオペラのエアチェックにBlu-ray Discを常用することになるだろう。地上デジタルなら1層ディスクでも3時間記録できるという容量のゆとりが、Blu-ray Discを選択する最大の理由である。

もう一つの用途は、HDVカメラで撮影した映像・音声のバックアップである。すでに手元には100本近いHDVテープがたまっているが、それらのオリジナルはもちろんのこと、パソコンで編集したデータの最終的な保存形態としても、Blu-ray Discは最良の選択肢である。

録画用Blu-ray Discに投入されたTDKの独自技術

追記型BD-Rの記録システム

BD-REに繰り返し記録を行った際のアイパターン
追記型のBD-Rでは、記録膜に無機材料のSi(シリコン)とCu(銅)による合金を使った2層構造を採用。これを記録レーザ光の熱で溶融し(左図)、SiとCuを合金化することによって記録マークを形成(右図)。光の影響を受けない無機材料の特長を活かし、長期保存に有利な高信頼ディスクを実現している (写真は拡大可) 書き換え型のBD-REでは、専用に設計された高密度記録用の高感度相変化記録材料と膜構造を採用している。これにより、優れた記録・再生特性と繰り返し記録(オーバーライト)特性を実現している。10回記録時(左図)と10,000回記録時(右図)でアイパターンを比較してみても、安定した特性を備えていることがわかる (写真は拡大可)


TDKが提示したBlu-ray Discのロードマップを見ると、一番近いところでは2007年春に予定された2層ディスクの発売が注目される。オペラのような長時間番組の保存用途に最適なメディアであり、登場がいまから待ち遠しい。

それに前後して4倍速対応ディスクの発売が計画されているが、こちらはBlu-ray Discの規格策定を経て、早い時期に実現する可能性が高い。現在の規格でもすでに2倍速を実現しており、Blu-ray Discレコーダーでのダビング作業はかなり快適だが、今後実現するであろう使い勝手の改善にも期待がふくらむ。

TDKが開発を進めるBlu-ray Disc関連の最新技術と製品のプロトタイプ
CEATEC JAPAN 2006にTDKが参考出展した、青色レーザーを使った6層追記型ディスク。記録膜やスペーサ層、カバー層を精密に積み上げる同社のレイヤースタック技術と最新の信号処理技術により1層あたり33.3GB、合計200GBという大容量記録を実現している (写真は拡大可) 業務用途に展開が予定されている「インクジェットプリンタ対応(写真左上下)」と、「熱転写プリンタ対応(写真右上下)」のデータ用ディスク。熱転写によるプリント技術を共同開発するRimage社をはじめ、業務用ディスクプリンター専業メーカーとの協業によって開発された (写真は拡大可) CEATEC JAPAN 2006会場に参考出展された、Blu-ray機器に対応するクリーニングアクセサリーの試作品。BD/DVD用およびCD用の2個のピックアップレンズを搭載する機器にも対応するため、同社独自の「ツインブラシ格納システム」を開発、安全なクリーニングを実現する (写真は拡大可)

今後数ヶ月のスパンで実現が期待されるこれらの前進とは別に、さらに劇的な進化も近い将来に待ち受けている。特に、最大6層までを視野に入れた多層化については、少なくとも技術レベルではすでに目処が立っているという。一枚の記録容量が200GBを超える光ディスクがどんな用途を新たに提供してくれるのか、こちらも大いに楽しみである。

【取材・文】
山之内 正(Tadashi Yamanouchi)

神奈川県横浜市出身。東京都立大学理学部卒。在学時は原子物理学を専攻する。デジタルAVやホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。大学在学中よりコントラバス演奏を始め、東京フィルハーモニー交響楽団の吉川英幸氏に師事。年に数回、オペラ鑑賞のためドイツ、オーストリアへ渡航。音楽之友社刊の『グランドオペラ』にも執筆するなど、趣味の枠を越えてクラシック音楽の知識も深く、その視点はオーディオ機器の評論にも反映されている。

録画用 BD-R <追記型>
BDV-R25S(単品)
BDV-R25×5S(5枚パック)
¥OPEN 2006年11月15日発売
>>TDKの製品紹介ページ
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録画用 BD-RE <書き換え型>
BDV-RE25S(単品)
BDV-RE25×5S(5枚パック)
¥OPEN 2006年11月15日発売
>>TDKの製品紹介ページ
>>製品データベースで調べる

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