音元出版試聴室でVraisonをテスト。「音場全体の立体感が増す」と高橋氏
今回はヘッドホンタイプのハイエンドシステム「HP-U48.OH」をテストした。

ハイエンドシステムということで、前述のように高域は48kHzまで補間される。そこで今回は、圧縮ファイルではなく無圧縮(CD音質)の音源を用い、CDを超える音質となるのかを試してみた。

まずはパッケージ付属のヘッドホン「VH-OH48」で試聴。ちなみにヘッドホン自体は他社から供給を受けているものとのことだ。はじめにBit-Revolutionをオフにしている状態で音を確認したが、フラットバランスを基調に低域・高域に多少のアクセントを付けた聴きやすい音。解像感なども十分である。

ドライバの設定でBit-Revolutionを有効にすると、全体の印象として、音場を照らし出すライティングが一段明るくなったかのように感じた。細部、微細な音まで明瞭に聴こえるようになると同時に陰影も強まり、音場全体としてもそれぞれの音像を見ても、立体感が増すのだ。

細かなところでは、例えばスネアドラムのゴーストノートやスナッピーの響きといった、譜面には載らないニュアンスの部分が生きてくる。また、エレクトリックベースはエッジが立ってラインが躍動する一方、女性ヴォーカルはより艶やか。個々の音の魅力もいっそう伝わってくる。

そして驚くべきは、これほど明確な効果を感じさせつつ、そこに不自然さが全くないということだ。高域が補間されるからといってハイ上がりになることもないし、どこかの帯域を強調するような演出などもちろんない。本来のバランスをどこも崩すことなく、全体のクオリティが向上する。

なお、Bit-Revolutionの効かせ具合はリッチ/ナチュラルの2つから選択できる。今回はリッチ設定を中心に試聴したが、もしも実際に試してリッチは効きが明快すぎると感じたらならナチュラル設定を利用すればよい。

ヘッドホンを装着したところ。装着感は非常に良好 ボリューム操作、Bit-Revolutionのオン/オフ、サラウンドモード切り替え、イコライザーのオン/オフなどはコントローラーから操作可能 実際の使用イメージ。手元で様々な操作ができるのは非常に便利

測定した聴覚感度は保存が可能。複数のユーザーの感度を測定しておいて、使用するユーザーのデータを読み込めば、常にベストな補正が行われる

ここで例の聴覚感度補正も試してみよう。設定はドライバの「ユーザー適応」項目から行う。高域周波数のテストトーンが再生されるので、それを聴き取れたらもう一段階上の周波数に進むというのを繰り返し、聴き取れるか聴き取れないかをチェック。そのテストが完了するとそれを元にした補正が行われる。

筆者の場合は補正をオンにするとやはり補正前よりも高域が全体に足された。補正後はサ行が少し耳につく感じもしたが、普段あらゆる再生環境で補正なしの音を聴いているので、そちらに感覚が慣れてしまっているのだろうか。まあこの機能は、積極的に利用するもよし、補正しない状態の音が好みならそれはそれでよしだろう。

さて、コントローラにはライン出力も用意されているので、今回はアンプとスピーカー(いずれもおおよそミドルクラスに相当する製品)に接続しての試聴も行った。

AVアンプ、スピーカーと接続して試聴。ヘッドホンと同様、スピーカーでもBit-Revolutionは劇的な効果を見せた アンプ/スピーカーとの接続イメージ図。コントローラーのLINE OUT端子からアンプに出力する

音質向上の傾向はもちろんヘッドホンの場合と変わらないが、ヘッドホンが苦手とする音場の奥行きの描写に関しては、スピーカーで聴いた方がその向上がはっきりとわかる。全ての音を明瞭にしつつも、そのせいで全ての音が前に出てきてしまうというようなことがないのだ。

わかりやすいのはドラムスだろうか。前述のように細かなニュアンスまで描き出しつつ、前に出てきてヴォーカルとぶつかったりはしない。Bit-Revolutionオフのときと同じく後方に位置して、音場全体の奥行きを感じさせる。

当たり前のことのようだが、それを実現できている補間技術は少ないのである。全ての音が前に前にと出てきて、元気はいいが奥行きのない音場になってしまうものも少なくないのだ。Bit-Revolutionはその点を見事にクリアしている。

ヘッドホン/スピーカーのどちらで聴いても、Bit-Revolutionの効果は絶大と言えるものだった。副作用のある劇薬ではないが、これに慣れたら手放せなくなってしまいそうな、麻薬のような魅力のあるシステムである。