OPSODIS技術について、マランツ ブランド カンパニー オーディオ開発本部 システム設計部 部長の神野栄一氏に解説して頂いた

数々のショーや展示会で、その群を抜いたフロントサラウンドの効果を見せつけてきたOPSODIS(オプソーディス)。だが、スピーカー音源のリスナーに対する正確な配置でこそ効果を発揮するOPSODISに、住環境いかんで二の足を踏むユーザーは少なくなかっただろう。

ここに、朗報がある。薄型大画面テレビとピタリと一致する、ワンピース設計のシネマリウム ES7001が登場した。だが、本機が「どれだけOPSODISなのか」は、多くの方が興味を持たれるところだろう。

OPSODISの配置ルールを代行するには、音源から放射される音の角度をその都度変えればいいわけだが、それはできない。マランツ技術陣は本機の設計にあたり、新しいパススルーとして、入力時に各スピーカーが受け持つ再生周波数をOPSODIS曲線に沿って適応的に変化させる手法を考え出した。本機のために新設計された3ウェイ6ユニットの各スピーカーは、6台のデジタルアンプで独立してマルチチャンネルドライブされ、ここにDSPで処理した音声情報を送り込んで5.1chの定位や移動感を表現する。

一般の2ch再生の場合、オーソドックスなリスナーに対し60度の音源配置で再生を行う。この場合も音場情報を認識して従来の再生でできなかった広がりと深みのある音場を作り出す。音量を下げていっても同じ音場を作ることができるのも特長だ。

「上下、左右の音場の動きを見事に描き出す」と大橋氏

シネマリウムES7001のサラウンドは、バイノーラルと5.1chに切りかえられる。OPSODISの特長はバイノーラル録音の再生に最も発揮される。しかし、ソース自体が少ないので、5.1chモードで映像ディスクを試聴してみよう。ブルーレイディスクの『イルマーレ』(The Lake house)のCH12、主役男女がパーティの喧騒をよそに夜の庭で語らうシーンは、ポール・マッカートニーの「ディス・ネヴァー・ハップンド・ビフォー」が最初遠いBGMとして右上方から聴こえ、次第に二人の間の出来事そのものとして音場を支配する。このトランジションが粋なのだが、50V型テレビの下、専用ラックRM7001に収納されたシネマリウムES7001は上下から左右への音場の推移を見事に現出させて驚く。DVDの『オペラ座の怪人』では、CH5、クリスティーヌが代役の舞台に立ち「シンク・オブ・ミー」を歌いきるシーンだ。水平方向の豊かな広がりとふくらみには感心させられる。

2chのムターのモーツァルト・バイオリンソナタ全集は、再生のかなり難しいソースだ。独奏バイオリンが左右に引っ張られやすく、ピアノの両手との前後左右高低の微妙な位置関係を引き出す力を問われる。ここでも、シネマリウムES7001は独奏バイオリンの紡ぎだすようなつややかな音の糸を安定して空間に煌かせた。

シネマリウムES7001は音をコントロールするドライバーである。開発担当者はそう語っておられたが、何しろマランツのオーディオ製品である。音質に抜かりはない。本機が、家庭での映画鑑賞を楽しく、そして美しく変えてくれるに違いない。