2003年に発売された「LITTLE JAMMER」は、ジャズと小さなプレーヤーの動きをシンクロさせた、大人のためのエンターテイメント・オーディオとして高い人気を獲得した。僕もその存在を早くから知ってはいたが、少し面白い玩具、という程度の認識であった。

しかしプラダ、エルメス、ティファニー、エンポリオ・アルマーニ、ジョン・ロブ、コーチ、バカラ、ロイヤルコペンバーゲン、そしてレストランミクニ、etc,etc、著名ブティックやカフェ、レストランが居並ぶ丸の内中通りの僕が良く行くブティック近くに、ケンウッドスクェア丸の内がある。そこに、よりリアリティを高めるとともに、音質向上を果した「LITTLE JAMMER PRO.tuned by KENWOOD」が飾られていた。
周囲にはスーツ姿のビジネスマンやファッショナブルな女性たちが行き交っている。それに昨年末には、この界隈に「COTTON CLUB」もオープンした。「COTTON CLUB」とは有名なジャズアーティストであるデューク・エリントン、キャブ・キャロウェイ、リナ・ホーン等アメリカ音楽史に名を残す偉大なスターたちが誕生した伝説のクラブだ。そんな事を考えながらショウウィンドウの中の小さなアーティストたちを眺めていると、禁酒法時代の1920年代、ニューヨークのハーレムに在った「COTTON CLUB」のステージが頭の中に浮かんできた。かつてはビジネス街だった丸の内だが、現在はウィークデー以外でも様々な人が訪れる大人の街へと変貌を遂げている。その一角に「LITTLE JAMMER PRO.tuned by KENWOOD」が在ったのは単なる偶然ではないようだ。
(株)ケンウッド 音質研究室 特別職/音質マイスターの萩原光男氏。LJ PRO.の音質は萩原氏の全面的な監修のもとで作り込まれた
前作「LITTLE JAMMER」を楽しんでいるのは、ほとんどが40〜50代の遊び心を持った大人の男性という。今回の「L J PRO.tuned by KENWOOD」も基本構成は前作と変わりはなく、音と小さなアーティストの動きのMIDIデータを記録したROMカートリッジ内のデータをコントロールボックスが解析。各パートのプレーヤーに音と動きのデータを伝送する。音は各プレーヤーの台座のスピーカーとコントロールボックスのサブウーファーから放出される。そして、各パートの演奏に合わせてフィギュアがそのパートの演奏者らしい動きをする。

今回の「LITTLE JAMMER PRO.tuned by KENWOOD」では、従来の8bitから16bit規格のMIDI音源に変更され、256階調から256倍の65.536階調へと飛躍的にアップし、個々の楽音のリアリティが格段に向上している。また個々のフィギュアも本物志向になると同時に、可動箇所も増し、個々の楽器奏者らしい雰囲気が漂っている。

例えばピアニストとギタリストは白人系アーティストで、クールで知性的な面持ちは「いかにも」という感じ。またベースとドラムスは黒人系でノリが良さそうだ。サウンドは個々のフュギュアの台座に搭載したスピーカーとコントロールボックスのサブウーファーから流れてくるが、個々のアーティストの担当楽器に合わせたチューンが施されている。

コントロールボックスの操作部
コントロールボックスの背面部。各プレーヤーに専用の端子が割り当てられている
ウッドベースやキックドラムといった低音楽器の質感がリアルである事に加え、音源のアレンジが巧みで、ジャズ独特のビート感が巧く醸し出されている。長年ジャズ・ベースを演奏してきた僕でも十分に楽しめるサウンドとアレンジが嬉しい。

また各楽器の音色も巧く作られているし、フィギュアの動きも音楽の流れに自然にリンクしている。さらに個々のアーティストの位置から、その担当楽器の音が聴こえてくるのも、普通のステレオ再生では得がたい臨場感を生み出していると思う。

オーナーとなったなら、自分がプロデューサーになったつもりでステージングを工夫するのも良いだろう。オプションによってホーンセクションやゲスト・ヴォーカリストを招き入れることができるなど、システムを発展させることができるのも好ましい。小さな演奏者の姿を眺めながら聴くジャズは、CDを聴く以上に心癒される時間となるだろう。

音元出版試聴室で本機の音質をチェックする小林氏
本物さながらのプレーヤーの動きには、小林氏も思わず腕組みをして感心しきり

企画デザイン担当:仲山 拓也氏

リトルジャマーの開発コンセプトは、「見る音楽」。
だから、主役たちであるプレイヤーの姿や動きにもとことんこだわっています。
それぞれのプレイヤー造形は、骨格から考え、そのシルエットが本物のアーティストを彷彿とさせるようなリアルさを追求しました。トランペッターの背中のカーブやピアニストの後姿なんか、味があってとてもいい雰囲気がでたと思います。
プレイヤー台座を丸型に改良したのは、プレイヤーが常に正面を向かなくてもいいという考えから。
お気に入りのライブハウスのジャズメン達をイメージしながら、オリジナルのレイアウトを楽しんでください。
開発スタッフ全員が、大好きな音楽をずっと大切にする気持ちや、手元にあるだけでわくわくしてくるようなモノ作りを常に心がけています。ご期待ください。

楽曲アレンジ担当:丸茂宏氏

カートリッジで“LIVE”をヘッダーにしたのはオーナーの皆様の御自宅でライブ演奏される、というイメージを伝えたかったからです。拍手も小さなジャズバー風・コンサートホール風など3種類用意しましので、楽曲だけでなく演奏後の空気感の違いもお楽しみ頂ければ幸いです。
LJ PRO. は音質解像度が従来品の256 倍(!)と飛躍的に高くなりました。なにより音質の向上によって各プレイヤーが独り立ちしやすくなったため、ソロ・ピアノやトリオ演奏・バラードなどのアレンジも出来るようになりました。
また、是非彼らの足元を見てください。LJ PRO.ではフロントラインのプレイヤーが足踏みでリズムを刻みます。通常ジャズでは2拍4拍にアクセントを置く「後ノリ」でリズムをとることが多いのですが、激論の末(?)、さまざまなパターンでリズムを刻んでいます。「LIVE !」感を追求することがそんな些細なアレンジにも現れています。

音源・システム担当:澤尻雄二氏

「音」に関してのこだわりは、音源、音色、音質の3大要素ですね。まず、「音源」についてですが、CDを聴いているような「音楽が空間に溶け込む」音源作りではなく、「主張性」と「まとまり」を両立させることを意識して作りました。それによってプレイヤーとの距離感がわかるライブ演奏が実現できるようになったんです。実際のライブでもアーティストとの距離感が感じられることがライブの醍醐味ですからね。次に「音色」について。LJ PRO.では色々な曲調を演奏できるように音色を増やしました。一番効果が高かったのはピアノプレイヤーからストリングス(バイオリンセクション)の音が出ることです。壮大なスケールの映画音楽から、泣ける旋律まで表現できるようになりました。サックスプレイヤーにはサックス音色だけでも3種類搭載されています。そして「音質」について。ご存知ケンウッド音質マイスターの萩原さんチューニングによって、音楽に「ニュアンス」を注入していただきました。なんと、この「ニュアンス」によってジャマー達に生命が宿るようになったんです!それを視聴した時の感動は今でも忘れられません。

ドラム ベース ギター
ピアノ サックス トランペット
専用ROMカートリッジはコントロールボックスの上部に挿入する 本機に付属する赤外線リモコン 各プレーヤーは写真のようなコネクターでコントロールボックスと接続する
 ●演奏パート:ピアノ・ギター ・ドラム・サックス・ベース・トランペット
 ●音源部:16bit80音ポリフォニック音源71音色(内ドラムセット用46音) 19効果音
 ●サブウーファー:φ75mmコーン型スピーカー
 ●プレイヤー:φ50mmコーン型スピーカー
 ●接続端子:レギュラープレイヤー接続端子×6個 ゲストプレイヤー端子×2個ボーカル端子×1個
 ●オーディオアウト(Φ3.5mmステレオミニ)
 ●ACアダプター用端子
 ●表示機能:LCDによる15文字×3段と各種アイコン
 ●時間表示:24時間表示 時報/アラーム機能
 ●電源:コントロールボックスDC9.0V(専用アダプターを使用)/リモコン DC3.0V(単4乾電池2本付)
 ●総プレイヤー稼動箇所:25箇所
 ●演奏モード:ライブ演奏モード、シャッフル演奏モード、プログラム演奏モード、リピート演奏モード
 ●メーカー保証:1年間

小林貢 Mitsugu Kobayashi

東京・浅草生まれ。ビートルズやヴェンチャーズの登場に触発され中学時代からギターを初め、高校時代までロックを中心にバンド活動を行う。高校3年になる頃ベースに転向、大学入学と同時にジャズを始める。日本大学法学部へ通うかたわら尚美高等音楽院にてコントラバスを習得。大学卒業後、70年代の日本ジャズ界をリードしたスリーブラインドマイス(TBM)レコードに入社。企画制作に携わると同時にマスタリング監修も務めた。その頃からオーディオ専門誌で執筆活動を開始。国内外のハイエンドからエントリーモデル、クラフトやカーオーディオ関連までと守備範囲は幅広い。近年、再び音楽制作に乗り出し、自身のレーベル「ウッディ・クリーク」を興す。高音質かつ音楽性の高いCDを発売し、内外から高い評価を受けている。