ゼンハイザーからいよいよ発売されるフラグシップモデル「HD800」。前回、オーディオ評論家 岩井喬氏による最速レポートにて、究極のヘッドホンと呼ぶにふさわしいその実力をご紹介した【レポートはこちら】。今回は、AVアンプ開発技術者でありオーディオへの造詣が深い金井隆氏をサウンド・クオリティ・アドバイザーに迎えたSACD「カモミール・ベスト・オーディオ」がオーディオファン、音楽ファンから絶大な支持を受け、日本をはじめとするアジア各国で活躍されている歌姫 藤田恵美さんが登場。青山にあるゼンハイザーショールームにてHD800を試聴していただき、その感想を伺った。(構成・写真:Phile-web編集部 )
 
HD800

オーディオファイルヘッドホン
HD800

¥OPEN(予価 160,000円前後)
※2009年6月下旬発売予定

●型式:ダイナミック型 ●タイプ:オープン型 ●インピーダンス:300Ω ●:再生周波数帯域:6Hz〜51kHz(-10dB)、14〜44,1kHz(-3dB) ●感度:102dB(1V rms) ●歪率:0.02%以下 ●ケーブル線材:銀メッキOFC線 ●ケーブル長:約3m ●質量:約370g(ケーブル除く)


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私が初めてヘッドホンを使って音楽を聴いたのは中学生の時。その時の衝撃は今でもよく覚えています。カーペンターズを聴いたのですが、外界を一切遮断して、そこに存在するのは自分とカレンだけ。「ヘッドホンで音楽を聴くってこんなにすごいの!」と魅了されてしまいました。

HD800を聴いていて、音楽をすごく大切に聴いていたあの頃を思い出して懐かしい気持ちになりました。カーペンターズの「マスカレード」を試聴しましたが、とても綺麗。ヘッドホンなのに音場が広く、奥行き感までしっかり再現されるのに驚きました。

HD800を手にインタビューを受ける藤田さん。取材はゼンハイザーのヘッドホン現行ラインアップが揃う青山ショールームで実施。HD800のほかに、HD650、HD 25-1 IIも試聴して音質の傾向をチェックしていただいた

マスカレードは、私に音が良いということが制作者の意図や歌い手の想いを伝えるための1つの表現の手段であるということを教えてくれた思い入れの深い曲なんです。「カモミール・ベスト・オーディオ」で金井さん(サウンド・クオリティ・アドバイザーとして本作を監修)と一緒にお仕事させていただくことになった時、金井さんの試聴室で聴かせていただいて。カレンの気持ちがひとつひとつ手に取るようにわかるようなその音を聴いて、自然と涙が溢れていました。

私の作品「愛の景色」でもHD800の再現能力の高さを実感することができました。この曲は比較的狭いホールの中で楽器も歌も同時録音して制作したものです。録音時の楽器の位置関係も把握しているので生音と再生音の違いがわかりやすいかなと思って試聴曲に選んでみたのですが、やはり音が立体的。どの楽器も同一線上にいるのではなくて、ここにピアノがあって、ここにチェロがあってっていうのが音を通して見えてくる感じ。録音時に実際に体験した映像がそのまま浮かんできました。

ゼンハイザーのもうひとつの銘機HD650でも同じ曲を聴いてみましたが、こちらはあたたかい音が印象的で、人の温度や楽器のぬくもりがすごく伝わってきますね。どちらが良い・悪いというのではなくて、両機とも楽曲をうまく再現しているなと思いました。伸びやかで綺麗な音に包まれながら、全体の広がりを感じたい人にはHD800、ひとつひとつの音がもう少し身近で、温かい芯のある音色を楽しみたい人にはHD650、というように好みやスタンスで選ぶのがいいかもしれませんね。

普段ヘッドホンはスタジオでモニタリング用として使用する機会が多いので、比較対象としてモニタリング用ヘッドホンHD 25-1 IIも試聴させてもらいました。スタジオで使用する機材は繊細なニュアンスも歌えるように、いい音というより、重視するのは聴き取りやすさ。HD 25-1 IIも1つ1の音がたっていて聴き取りやすい。一方でHD800は観賞用のヘッドホン。観賞用とモニター用では求められる性能が全然違うのだと感じました。

リファレンスソフトを選定中。「マスカレード」はカーペンターズのSACDハイブリット盤「シングルス 1969-1981」(品番:B0002996-36)に収録されているものを試聴。ほかにもコリン・メイ、フェアーグラウンド・アトラクションなどを持参していただいた HD800を紹介するゼンハイザージャパン(株)コンシューマー営業チーフの渡辺 直樹氏。「HD800はヘッドホンの心臓部分にあたるダイヤフラムが世界最大の大きさなんです」とHD650と比較しながら説明する
 

HD800で音楽の世界に没頭する藤田さん
先ほどの「愛の景色」が収録されているアルバム「ココロの食卓〜おかえり愛しき詩たち〜」は、50年代中心の邦楽を中心にセレクトしたカバー集です。家族みんなでテレビを囲んでドリフを観て、その日に番組でかかった曲を覚えて・・・っていうお茶の間をイメージして作りました。私が子供の頃、まさに経験していた風景です。

音質面では、オーディオファンの方にもご好評いただいた「カモミール・ベスト・オーディオ」と同じチームで、レコーディング段階から高音質を目指して制作しました。ほとんど同時録音の一発録りで行っていて、声や楽器の生音の再現にこだわった作品になっています。また世の中には演奏も大げさで、サウンド的にも音をぎっしり詰め込んだような刺激的な曲も多いですが、このアルバムは自然に耳に馴染むようなつくりにしました。音のボリュームも普通のCDとくらべて全体的に小さいんですよ。

今は聴いている曲に飽きたらすぐに次の曲に飛ばすことができるし、家で音楽をかけていてもついつい何か他のことをしながら流して聴いてしまうこともありますよね。昔のようなレコードを毎回取り替えて、ジャケットを眺めながら1曲1曲聴いて、っていう、あの音楽との腰を据えた向き合い方とはずいぶん変わってきました。

制作者としては、作品に詰め込んだ想いがひとりでも多くの方に伝わればと思っていますし、中学生の頃の私のように大切に聴いてもらえれば嬉しい。HD800は良いオーディオ機器がそのままここに凝縮されている感じで、すごく贅沢な音楽空間を味わうことができます。音楽を聴くのが楽しくなるヘッドホンですよね。

つけ心地については「申し分ありません。持ってみると結構重いのに、フィット感がちょうど良くて装着していてすごく気持ちいい」と藤田さんもお墨付き 藤田さんは「オーディオのことはあまり詳しくない」といいながら、数種類のヘッドホンを試聴し製品の性質について的確にコメント。カタログをこっそり読んでいたんですか!?と周りのスタッフを驚かせた

私の作品は、もちろん現状持っている機器でも最大限の音質を引き出すことができる作品にはなっているのですが、せっかく金井さんと一緒に音にこだわったアルバムを作ったので、是非一度いい環境で楽しんでみてほしいなと思います。でも日本の住環境や金銭的な問題でなかなか高級なオーディオ機器を揃えることができない方も多いと思いますし、こちらからも言いづらい(笑)。このヘッドホンはそういう方にとってもひとつの選択肢になりますよね。何百万のシステムを揃えなくても16万円でこの音が手にはいると考えれば、リーズナブルと言えるかもしれません。

HD800のような良質な製品がでてくることで、私たちが伝えようとしている音を体験してもらえる機会も増えてくる。それは制作者にとってとてもやりがいのあることです。ゼンハイザーにはこれからも音楽を楽しむ環境を提供し続けてもらいたいです。(談)

 
今回試聴した藤田恵美さんの作品
ココロの食卓〜おかえり愛しき詩たち〜/藤田恵美
レーベル:PONY CANYON
品番:PCCA.60022
¥3,200(税込)

>>ポニーキャニオンの作品紹介ページ
カモミール・ベスト・オーディオ/藤田恵美
レーベル:PONY CANYON
品番:PCCA.60019
¥3,200(税込)


>>ポニーキャニオンの作品紹介ページ
藤田 恵美 Emi Fujita

1994年に“Le Couple”のボーカルとしてデビュー。1997年に「ひだまりの詩」で180万枚の売り上げを記録しNHK 紅白歌合戦に出場。2001年からソロプロジェクトを始動。『聴きながらゆっくりと眠れるアルバム』をコンセプトにした洋楽カバーアルバム3枚が香港のオーディオマニアから火がつきアジア各国で大ヒット。アジア10カ国で30万枚を超えるセールスを記録し『聴くクスリ』や『ハイファイ・クイーン』と呼ばれている。国内では、伊豆大島の「さくら小学校」の校歌を作曲するなど作曲活動に力を入れ、2007年、「虹の橋」、「心の輝き」 をリリース。また、ボランティアとして、手話バンド『こころおと』の手話ボーカルKuniyと〜音楽と手話でひとつになろう〜をテーマに『心のバリアフリー音楽会』を学校などで開催している。2008年9月17日に初めての邦楽カバーアルバム「ココロの食卓 〜おかえり愛しき詩たち〜」をリリースしている。
>>藤田恵美さん公式サイト

 
HD800が試聴できる!
ゼンハイザー 青山ショールーム

ゼンハイザージャパンが運営する東京・青山のショールーム・サービスセンター。ゼンハイザーブランドのヘッドホン、マイクロフォンが揃い、ヘッドホン現行機種全ラインナップの試聴・購入が可能。最新フラグシップ「HD800」のサウンドをじっくりと試聴することもできる。

>>ゼンハイザージャパン ホームページ
>>Phile-web ゼンハイザー 青山ショールームのレポート

場所:東京都港区南青山1-1-1(新青山ビル西館2F)
東京メトロ銀座線/半蔵門線、都営地下鉄大江戸線 青山一丁目駅下車1分
営業時間: 平日 11:00-18:30 ※土日祝祭日休業