画面サイズの選択肢が増えたとはいっても、相変わらず高画質テレビは40V型以上の大画面モデルが主役で、32V型未満ではフルHD機を探すことすら困難だ。デスクトップ用など、小型で高精細なテレビが欲しいときはどうすればいいのか。

そんなとき、まず候補に挙げたいのがEIZOのFORISシリーズ、なかでもプライベート空間に最適なサイズの「FX2431TV」に注目したい。デジタル放送に加えてパソコン、ゲーム機とも相性がいいマルチモニターの最新モデルだ。

FX2431TV-SR   FX2431TV-BK
シルバー(FX2431TV-SR)とブラック(FX2431TV-BK)の2色を用意

フルHDを完全にカバーする1,920×1,200画素の24.1V型VAパネルを採用し、テレビの基本である明るさとコントラストを確保し、さらにEIZOの得意分野であるデータ表示性能も進化を遂げている。ここで注目したいのはAdobeRGB比96パーセントという広色域パネルを採用したこと。深みのある豊かな色彩表現は特に写真鑑賞で真価を発揮するに違いない。

機体背面
PC入力2系統(デジタル/アナログ)の他、HDMIを2系統装備

動画と静止画どちらも妥協のないクオリティで表示することは、これからのディスプレイに不可欠な要素だ。その条件を先取りした実例として画質を検証してみよう。

 
広色域パネルを採用した効果は、写真の色再現の違いとしてすぐに気付く進化ポイントだ。木々の緑は鮮度が高く立体的で、青空は吸い込まれるような深い階調がある。特に、日差しが強い部分で平坦になりがちな緑が、ピクチャーモードに切り替えた途端に潤いを増し、緑のなかでの微妙な階調の違いが浮かび上がってくることに感心した。

コントラストのレンジは十分な余裕があり、ピークをある程度抑えても、伸びのある白から引き締まった黒まで、鮮やかな対比を見せる。テレビ視聴を視野に入れた明るさの確保が、写真など静止画でもプラスにはたらいている印象を受けた。

WUXGA相当の高精細パネルの強みはディテールの豊かさで実感できる。広角レンズでとらえた建築など、画面に近付くほどに細部が浮かび上がる緻密な描写に目を奪われるし、余分な強調に頼らず、自然に遠近感を引き出している点も評価できる。

 
■FX2431TV・写真画質チェック
【テスト写真】撮影:藤井智弘


深みのあるブルーの再現や木々の緑の描き分けなど、色彩表現力の豊かさは広色域パネルを採用した成果だ。微妙な差を忠実に見せるので画像補正の効果を確認しやすいし、レンズの描写の違いなどもよくわかる。パソコン画面のテキストやグラフィック表示はさすがに精細度が高く、一般的なテレビのRGB入力モードのような甘さとは無縁だ。WUXGAの画面は垂直方向にも余裕があり、高解像度の静止画データを編集するときにも効率がいい。(山之内)

 
BDの映像表現は期待以上の完成度を見せ、本機の懐の深さを見せつけた。『きみに読む物語』では段差のないなめらかな階調表現に気付くが、これは10bitガンマ補正など高画質テレビに迫る高度な映像処理が功を奏したのだろう。

屋外シーンは透明感が高い色彩と自然なコントラスト感に説得力があり、ナイトシーンは暗部の色純度が予想以上に優秀だ。引き締まった黒を見せつつ暗部はよく粘り、しかも余分な色付きがほとんど気にならない。

『ブレイブハート』では精細感の高さに由来する自然な立体感と遠近感が浮かび上がる。「コントラスト拡張」をオフにして自然な階調を引き出したうえで、森のなかを移動するシーンを見てみよう。木々と人物の距離感、クローズアップ時の立体感に、大画面テレビでは体験できない緻密さを感じるはずだ。まるでマスターモニターを見ているような誇張のない遠近感は、見る者に強いインパクトを与える。

写真、インターネットを中心に、これからのテレビは静止画表示性能が従来以上に問われる。しかも、表示できるというレベルではなく、いかに表現するかという領域での性能が肝心だ。FX2431TVが実現した動画と静止画双方のクオリティは、確実にその領域に到達している。

 
■FX2431TV・BD画質チェック
VA方式ならではのコントラストの高さは動画で本領を発揮、黒の沈み込みの深さは最近の高画質テレビに迫る高水準だ。「シネマ」モードは暗部から中間輝度にかけての階調再現に硬さがなく、柔らかい立体感を引き出すため、映画をじっくり楽しむ用途でも不満に感じることはない。特筆すべきは透明感の高い色彩の美しさと自然な立体感で、モニター調の暗くクールなタッチではない。アクティブでビビッドな色彩表現も期待通りにこなす。(山之内)
【視聴ソフト】
 
きみに読む物語
ハピネット
 
ブレイブハート
20世紀フォックス
 
【SPEC】●液晶パネル:カラーTFT(オーバードライブ回路搭載・表面ノングレア仕様) ●視野角:178度 ●最大輝度:360cd/m2 ●最大表示色:約1677万色 ●表示階調:256階調 ●デジタルチューナー:地上・BS・110度CSデジタル ●主な入力端子:HDMI×2、DVI-D24pin×1、コンポジット×1、S×1、コンポーネント×1、D-Sub15pin×1 ●本体外形寸法・質量:566W×444〜480H×230Dmm・約11.1kg
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執筆者プロフィール

山之内 正 Tadashi Yamanouchi

神奈川県横浜市出身。出版社勤務を経て、音楽の勉強のためドイツで1年間過ごす。帰国後より、デジタルAVやホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。大学在学中よりコントラバス演奏を始め、東京フィルハーモニー交響楽団の吉川英幸氏に師事。現在も市民オーケストラ「八雲オーケストラ」に所属し、定期演奏会も開催する。また年に数回、オペラ鑑賞のためドイツ、オーストリアへ渡航。音楽之友社刊の『グランドオペラ』にも執筆するなど、趣味の枠を越えてクラシック音楽の知識も深く、その視点はオーディオ機器の評論にも反映されている。


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