本機のリモコン

音は圧倒的に高純度、高速レスポンスで明晰だ。一点のくもりもなくインパクトは極めてスピードが速く応答する。トランジェントに優れ、バロック音楽の繊細な倍音スペクトラムも美しい。解像度が高く洗練されている。オーディオ機器で難題とされる高域特性もクセなく正確に表現して、S/Nも高く見事に描写される。この価格のプリメインアンプで、このような音が出るのはうれしい。同時にデジタルアンプの現状としても、これは確かに進歩の成果が見られる。

ノイズ、混濁感は皆無で透明度の高い音質で一貫したものだ。ウィークポイントとしては音がきれいに研ぎすまされていることかもしれない。中低域、低域にもほとんど緩みや甘さがなく、音場は透き通るように広大で遠近感を引き出し、情報解像力は素晴らしい。

ジャズではベースの肉厚でダンピングを効かせたエネルギーもいい。トロンボーンはいつもよりいっそう抜けきりがよく、響きは活き活きとしてリアルだ。コントラストのある躍動的なリズム感、音像の厚み、陰影がはっきりしているところなどが魅力である。

声楽は澄み切ったしっかりした存在感。弦楽器はS/Nの高い色彩感で音色が美しく、艶やかな旋律で活き活きと流れる。ヘンリー・マンシーニの1曲目「ピンクパンサーのテーマ」は、ビッグバンドの編成を、明瞭にしてダイナミックかつ克明に描写。混濁が極めて少なく、表情が明確だ。ダンピングを効かせる低音、重低音へ伸ばし、音程の分解力も優れている。レスポンス抜群である。静かで純粋な音質のXUXU(シュシュ)は4人の女声によるアカペラで空間の広さとボーカルのニュアンス、定位感が見事に再現されている。ポリーニのピアノ曲の美しさも響きのきれいな立ち上がりと冴えた余韻の美しさで表情を見事に楽しませる。

ヘッドホン出力回路はプリアンプ部から専用のアナログアンプで設計されている。透明度の高い音質、ダイナミックなレスポンス、解像度が高く、特に低音の駆動力が高くエネルギーの豊かな音が得られクオリティも高い。CDプレーヤーのヘッドホン出力よりも力感、パワーにはかなりの違いがあり有利であることがわかる。インピーダンス4 8Ωのオーディオテクニカ「ATH-W10VTG」で試聴。

電源入力はインレット方式、付属もケーブル外径10φ、2P金メッキプラグの電源ケーブルが付属している。市販ケーブルと比較検討すると、透明度は高いがレンジ感、高域特性など、もうひとつ真価は最高ではない。試聴では価格として妥当な範囲内でベストであったサエクのPL-3000D(¥21000/1.5 m)を採用した。付属は立派な作りだがグレードアップする価値は大きい。

「ひとときの音楽〜バロックの美しい歌/波多野睦美」エイベックス AVCL-25043
「ショパン夜想曲集(第1-19/マウリツィオ・ポリーニ」グラモフォン UCCG9647/8
「アルティメイト・マンシーニ」ビクター VICP62611
「モナ・リザ/神田めぐみ(トロンボーン)」ビクター VICC60408
「theB/XUXU」3361BLACK TKCK-3037
「プリズム・リズム/鼓童」ソニー SICL10003