バッファローといえばパソコン周辺機器でおなじみのブランドだが、
同社の前身であるメルコは、かつて30年ほど前に
ハイエンドのアナログプレーヤーを発売していたことがある。
そのバッファローがAV機器とパソコンをつなぐ
高音質のホームネットワーク機器を発売するというのは、
どこか当時とのつながりが感じられて興味深い。
バッファローが開発した新しいカテゴリーのネットワークワークメディアプレーヤー「LinkTheater」は、パソコンのHDDに保存した音楽、動画、静止画データをテレビやオーディオ装置で再生するための機器である。信号のやり取りは有線または無線のネットワークを利用するので、テレビやオーディオ機器とパソコンを直接つなぐ必要はない。

そもそもパソコンの映像、音声出力を、形式を変換したりクオリティを落とさず外部に取り出すのは簡単ではない。映像出力は信号方式が異なるので直接つながらないし、音声はアナログ、デジタルともにノイズの影響から逃れられない。たとえ無理につないでも、動作ノイズが大きいパソコンをオーディオの近くに置くのは、できれば避けたいものである。

BUFFALO「PC-P3LWGK/DVD」。関連ニュースはこちら LinkTheaterと家庭内機器との接続例(BUFFALOウェブサイトより)。同社のTVチューナー製品と組み合わせれば、本機から録画予約を行うこともできる

本機に付属のリモコン。通常のDVDプレーヤーのリモコンとほぼ変わらない。これ1台ですべての操作が行える

LinkTheaterの使い方をもう少し詳しく紹介しよう。本体にDVD・CDドライブを内蔵した本機は、映像はアナログのコンポジット、S端子、コンポーネント出力とD4端子をそなえ、音声はアナログと同軸/光出力を装備する。以上のなかからテレビやオーディオ機器への映像・音声出力を選べばよい。パソコンからのデータを受け取るためにLAN端子を積んでいるが、本体に無線LANの受信機能を内蔵しているので、家庭で無線LANを使用している場合は、それを利用すればワイヤレス接続でパソコンと自在につながる。パソコン側には専用ソフト「PCast Media Server」をインストールしておくだけでよい。

以上で準備は完了。本機の設定画面でネットワークを確認してみよう。無事につながっていれば、ログイン画面にサーバーを選ぶメニュー画面が表示され、本機の内蔵ドライブに加えてネットワーク上のパソコンが表示されるはずだ。リモコンで任意のパソコンを選ぶと、そのパソコンのHDDに保存されている動画、音楽、写真データの一覧がテレビ画面に表示される。フォルダを選んで、聴きたい曲や見たい映像ファイルを選択すれば、テレビやオーディオですぐに再生が始まるという手順である。

本機の電源を入れると上のようなログイン画面が表示される。ここで接続するPCやHDDを選択する 接続する機器を選ぶと再生するコンテンツを選択する画面に進む 「音楽ジュークボックス」を選んだ場合は、プレーリストやジャンル/アーティスト/アルバムごとの再生なども可能
トラック名の一覧から聴きたい楽曲を選ぶと再生がスタートする 静止画の再生も、同様にファイルのリストから表示したいものを選択する

動画再生は、一覧表示のほか、ジャンルや出演者ごとの絞り込み表示も行える

付加機能として音楽再生中に画面に写真アルバムを表示したり、パソコンではなく、バッファロー製のネットワーク接続に対応した外付けHDDからデータを読み取ることもできる。実際の使い勝手を考えると、音楽または映像サーバーとして常時起動しておくパソコンを一台割り当てるか、外付けHDDを利用するのが便利だろう。

以上の操作のなかで特に難しい点はないが、無線LANのアクセスポイントを認識して接続する際に、手動設定が必要な場合もある。バッファロー製のアクセスポイントには設定を自動化するAOSSという機能が用意されているので、同社製のアクセスポイントを利用する場合は、その機能を活用するとよい。

再生可能な映像、音声のフォーマットは、バッファローのサイトに詳しく掲載されている。映像はMPEG2、XviD、WMVなど、音声はMP3、WMA、AACなど主要なフォーマットにはほぼ対応しているし、WMV HD形式のハイビジョンデータも画質劣化なしにディスプレイに伝送できる。メニュー画面もHDディスプレイを意識した高解像度仕様も用意され、静止画表示のクオリティも高い。

設定画面(オプション)。スクリーンセーバーや字幕言語など様々な設定が行える 設定画面(DVD)。テレビのアスペクトなどを設定できる 設定画面(IPアドレス)。MACアドレスなども確認することができる
設定画面(アップデート)。ネットワーク経由で最新のファームウェアをチェックし、ダウンロードすることができる 設定画面(ネットワーク)。同社独自の簡易ネットワーク設定機能「AOSS」や、WEPの設定などが行える
自宅試聴室で本機の音を確かめる山之内氏
バッファローとオーディオのつながりは冒頭に紹介したが、同社はいまでも音へのこだわりが強く、製品にもその姿勢が反映されている。デコーダーチップやD/Aコンバーターは高画質仕様、ハイファイ仕様のデバイスをそれぞれ積んでいるし、LinkTheaterの最新限定モデルである「PC-P3LWGK/DVD」は、ドライブの制振対策、高音質パーツ(サンヨーのオーエスコン)の採用など、パソコン周辺機器としては異例の音質対策を盛り込んでいる。実際に、フルコンポーネントサイズの外見も含め、パソコン周辺機器というよりはAV機器に近いテイストを持っているから、DVDレコーダーやCDプレーヤーと並べて設置してもまったく違和感がない。

音質対策の成果は、標準仕様の製品と比較すれば簡単に聴き分けることができる。パソコン内に保存したwavファイルを本機を介して再生してみたが、情報量の余裕と低域のエネルギー感に明らかなメリットが感じられ、大いに感心した。既存モデルに比べて空間情報を豊富に再現するためか、奥行き感や立体感もよく出てくる。

筆者の音楽サーバーには、CDの音楽データに加えて、DATやリニアPCMレコーダーで録音した音楽データがwav形式でたくさん入っているのだが、それらの音源をオーディオシステムでモニターする用途にも本機はうってつけの存在といえそうだ。パソコンでテレビ番組を録画しているユーザーはもちろん便利に使えるが、楽器や生録を楽しむ音楽ファンにもぜひお薦めしたい製品である。

山之内 正
Tadashi Yamanouchi

神奈川県横浜市出身。東京都立大学理学部卒。在学時は原子物理学を専攻する。出版社勤務を経て、音楽の勉強のためドイツで1年間過ごす。帰国後より、デジタルAVやホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。趣味の枠を越えてクラシック音楽の知識も深く、その視点はオーディオ機器の評論にも反映されている。

対応OS:Windows XP/2000/Me/98SE、MacOS X 10.3 
再生可能メディア(ディスク):DVD-Video、DVD-Audio、ビデオCD、スーパービデオCD、オーディオCD(CD-DA) 
再生可能ファイル:オーディオファイル/MP3、WMA、AAC、Ogg、非圧縮WAV、画像ファイル/JPEG、GIF、TIF、BMP、PNG、動画ファイル/MPEG-1、MPEG-2、DivX(ver3.11、4、5)、XviD(+MP3/AC3)、RMP4 
無線LAN: IEEE802.11g/IEEE802.11b 
外形寸法:420W×50H×265Dmm(突起物除く) 
質量:約2.7kg
バッファロー 製品詳細ページ
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Phile-webニュース【バッファロー、高音質モデルなどDLNA対応ネットワークメディアプレーヤー3機種】