BDを搭載するフルハイビジョンカメラがこれまでなかなか登場しなかったのは、メカドライブやコーデック用LSIなど重要部品について適切な既存デバイスがほとんど存在しないため、多くの部品を新規に開発する必要があるというのが大きな理由である。

日立はハイブリッドカメラ開発時にもグループの力を結集して新規デバイスを数多く開発しているが、フルハイビジョンモデルに必要な基幹技術ははるかに数が多く、難易度の高さもSD解像度のハイブリッドカメラの比ではない。特に、フルハイビジョンならではの膨大なデータ量の演算を低消費電力かつ小規模な回路規模で実現することは非常に難しいとされているので、日立の新技術には各方面から注目が集まっているはずだ。

今回、DZ-BD7Hに盛り込まれた新規開発の基幹技術は、主なものだけ数えても4種類に及ぶ。その内訳は、撮像素子、画像処理LSI、映像・音声コーデックLSI、そして8cmBD/DVDメカドライブである。いずれもビデオカメラの根幹をなす部分であり、光学ブロックや操作機構部などとともに、フルハイビジョン仕様を完全に満たす必要がある。

信号の入り口から見ていくと、撮像素子は1/2.8型のCMOSセンサーで、これは米国のAlta Sens社と日立の共同開発。プログレッシブ式で原色カラーフィルターを採用しており、動画撮影時は総画素数約530万画素のなかからフルハイビジョン画素相当分(約207万画素)を切り出して利用。静止画撮影時は432万画素を使用する。周辺部の画素は動画用の電子式手ぶれ補正に利用する領域だ。特に静止画撮影時の精細度の高さが目を引き、他社のハイビジョンカメラとの差異化が期待される部分である。

総画素約530万CMOS撮像素子

画像処理LSIは、大画面視聴を想定してS/Nと色純度の大幅な改善を実現したフルハイビジョン用LSIを自社で開発。Advanced CCM(Correlative Coefficient Multiplying Method)は、DVDモデルのアルゴリズムを進化させたもので、特に輝度変化の大きい部分での色の純度向上が期待できるという。

映像処理LSI

映像・音声コーデックLSIは今回の核心技術の一つで、演算能力の高さを生かして複数コーデック(MPEG4 AVC/H.264、MPEG2、JPEG)に1つのLSIですべて対応。さらに、MPEG4 AVC/H.264からMPEG2へのダウンコンバートもこのLSIでサポートすることが特徴だ。DZ-BD7Hはこの機能を利用し、HDDに記録したHD映像をMPEG2に変換してDVDにダビングすることができる。

映像音声コーデックLSI

同LSIは動き予測技術として、16×16画素のマクロブロックごとにフレーム/フィールド処理を切り替えて動画時の精細感を確保する適応型処理を盛り込み、さらにフレーム間予測とフレーム内予測を組み合わせた符号化を導入し、記録レートと画質のバランスを追求。ビデオカメラの場合、消費電力を抑えることも重要な課題であり、今回のLSIはその点でも満足のいく性能を達成している点に注目したい。このコーデックLSI「Picture Master Full HD」も日立の自社開発で、カメラだけでなくさまざまなフルハイビジョン機器への応用が期待される注目デバイスである。

映像音声コーデックLSI
8cmBD・DVD用メカドライブは小型化と消費電力の低減が大きな課題だが、日立はハイブリッド機を想定した効率的な機構開発を進めてきた経緯があり、今回のBDメカにもそのノウハウが生かされている。サイズはDVD用メカとほぼ同等まで小型化することに成功し、厚みも限界と思われるほどに薄く仕上げられている。実際に動かしてみるとわかるが、動作音はカメラ本体に耳を近付けなければ気付かないほど小さく、それも断続的な動きをしている。これは容量の大きいバッファを利用した間欠記録を行っているためで、消費電力の低減に大きな効果を発揮する。

そのほか、光学系に非球面レンズ搭載の10倍ズームレンズを積むなど、フルハイビジョンモデルならではの高画質技術を数多く搭載している。