マランツの新しいセパレート型AVアンプには革新的な機能が数多く盛り込まれており、使いこなしがいのある内容に仕上がっている。製品紹介サイトを見て最初に気付いた読者も少なくないと思うが、AV8003には2つのリモコンが付属していることがまず目を引く。

この2つのリモコンはそれぞれ役割が異なっており、一つはボタン数の少ないシンプルタイプのリモコン(RC101)、もう一方は液晶パネルをそなえた新コンセプトの多機能リモコン(RC2001)である。前者はマルチゾーンリモコンと呼ばれ、主にマルチゾーンからの操作に重点を置いて簡便な操作性を実現していることが特徴だが、簡単なモード切り替えでメインゾーン機能の操作も可能。普段使いにはこちらだけでほぼすべて対応可能だ。後者は大型の液晶パネルを活用して初期設定などを含む詳細な機能をフルに使いこなす用途に向き、プログラマブル機能を生かした他機の操作も含め幅広い操作が可能になる。実際に両方のリモコンを使ってみたが、基本的な操作ロジックさえ理解すれば液晶リモコンも非常に使いやすいと感じた。

左はシンプルタイプのRC101、右は多機能リモコンRC2001

ピュアダイレクトモードへの切換ボタンは、AV8003のフロントパネル内にも設けられている
特にAV8003の入出力インターフェースはセパレート型のメリット生かし、大変に充実している。アナログ伝送ではパワーアンプ間とバランス接続(マルチチャンネル)が利用できることはすでに紹介した通り。さらにHDMI1.3a端子は出力を2系統そなえ、2機種のディスプレイを使い分ける際の利便性が高い。各種ケーブルを接続した状態でも奥行きが浅めになるように設計されている点は、本機のハンドリングの良さのポイントの一つだ。

音質に関わる機能のなかでは、ピュアダイレクトモードの効果の大きさに注目したい。本体のピュアダイレクトボタンを操作することでソースダイレクトとピュアダイレクトを選択可能で、音場、音像など空間再現力を中心に差が出ることを確認した。主にBDのPCM音声で検証したが、余韻も含めた全体の広がりにも違いが出たし、低弦の解像感、セパレーションも向上する。


ネットワーク関連機能の充実ぶりはAV8003の大きなアドバンテージの一つだが、それについては実際にBDレコーダー(ソニーBDZ-X90)と接続した際の使い勝手を中心に紹介することにしよう。

ネットワーク機能のトップ画面。音楽や写真、動画にアクセスできるほか、サーバーを個別に選択することも可能 サーバーへの接続を選ぶと、登録されたサーバーが一覧で表示される。今回テストしたBDZ-X90を選択すると、X90内の動画が表示できる

本機はDLNAをサポートしており、DTCP-IP対応機器と組み合わせることによって、デジタル放送のハイビジョン番組なども自在に楽しむことができる。家庭のネットワーク環境が急速に充実したことで、そうした用途は今後飛躍的に広がる可能性があり、対応機器も着実に増えている。

本機とBDZ-X90をLANケーブルによって、家庭内ネットワークに接続し、いくつかの初期設定を行うことでDLNA機能はすぐに利用できるようになる。設定のなかで欠かせないのはBDZ-X90のホームサーバー機能をオンにしておくことだが、それ以外にも機種によっては録画機側にクライアントとしてAV8003を登録する操作が必要になる場合がある。いずれにしても基本的な設定なので煩雑な操作はないし、AV8003の側ではほとんど何も設定する必要がない。 録画機だけでなく、DLNAサーバー機能をサポートするソフトウエア(たとえばWindows Media Player 11)がインストールされたパソコンやDLNA対応NAS(ネットワーク接続可能なハードディスク) などもサーバーとして活用できることはいうまでもない。サーバーが複数ある場合はそれらを横断してコンテンツ一覧を表示することも可能だ。

ジャンルごとに番組を一覧表示することも可能。左には番組のかんたんな情報が表示される



番組再生中は早送りや巻き戻し、一時停止などの操作も行える
別室に設置したBDZ-X90をネットワークに接続した状態で本機の「ネットワーク」ボタンを押し、最初に表示されるメニューから「Server」を選ぶと、そこから先は本機のリモコン操作でBDZ-X90のコンテンツを自在に選ぶことができる。

メニュー経由でジャンルやフォルダの選択が可能で、例えばスポーツを選ぶと録画済み番組のなかから該当する番組だけがタイトル名とともにリストアップされる。そのなかからDRモードで録画されたコンテンツを選ぶと、ほとんど待たされることなく映像と音声がスタート。液晶リモコンの操作で早送り/早戻しや一時停止の操作も自由自在で、その応答性も非常に優れていた。一度体験すれば使い勝手の良さは誰もが認めるに違いない。