文/折原一也

ここまで見てきたように、AQUOS DX2の大きな特徴に、BDへの録画機能の充実と、多彩なネットワーク機能が上げられる。ただし、DX2の魅力はこの2点にとどまらない。52/46/42V型モデルには、同社が新たに開発した「高画質マスターエンジン」が搭載されており、積極的に画質向上を図ったモデルとしても要注目だ。このページでは、DX2の高画質化・高音質化技術とその効果に迫ってみよう。

 

新開発「高画質マスターエンジン」は、新たに3つの高画質化処理を追加した、飛躍的に画質を向上させる映像処理回路だ。そのテクノロジーを簡単に紹介しよう。

高画質マスターエンジンの基板

第1の要素は、「Wクリア倍速」による120Hz駆動のクオリティを更に向上させたことだ。テレビで放送される映像には、撮影時のカメラ移動によって生じる動画のぼやけが発生する。動きベクトルの検出によってこの撮影時のぼやけを検出し、エンハンスなどの補正処理を加えることで、よりクッキリとした映像が再現できる。

第2の要素「アクティブコンディショナー」は、映像全体の質感を高めるトーン調整技術だ。一般的なカラーや黒レベル、カラー、ゲイン調整だけでなく、映像全体を解析して暗所や明所の混在する映像でも巧みなS字ガンマカーブに調整することで、情報量と色階調性をあわせもつ豊潤な映像を作り出す。なお、同時に働く「アクティブNR」はDX2に向けて更に調整を重ねており、画面内を細かく分割して映像を検出する事で、静止している部分と動いている部分を高精度に判別。違和感がないよう、効果的にノイズリダクションを働かせる仕組みを完成させた。

第3の要素は「なめらか高画質」。シャープがパネルからテレビセットまでを一貫して自社開発していることはご存じだろう。この、パネルを自社開発している強みは映像処理にも活きてくる。なめらか高画質では、液晶の開口率をピクセル単位で直接制御する事が可能で、バックライト制御とあわせて画面の明るさをコントロールする。明暗差が激しい映像では画面の明るさに破綻が出るテレビがあるが、なめらか高画質ではこのような映像にも瞬間的に追従できる。エコを両立しつつ、従来機とは段違いの強烈なコントラスト感を実現できたのは、シャープの総合的な技術力の賜物と言えるだろう。

「高画質マスターエンジン」が初めて搭載されたDS6シリーズの映像は、シャープ製パネルの能力を存分に引き出した完成度の高いものだった。DX2では、このエンジンをさらにブラッシュアップしたものを搭載しているのだから、その能力の高さは折り紙付きだ。

 

DX2の画質を向上させるもう一つの注目技術に「ぴったりセレクト」がある。RGBセンサーで照明の明るさや色温度を自動検出し、画質を自動調整。さらに音質まで調整する機能を盛り込んだ、総合的な最適化技術だ。

本体前面の右下にRGBセンサーを装備。部屋の照明の状態を正確に解析する

具体的なシーンを想定してみよう。例えば、日中に窓から外光が差し込んだリビングは、通常、テレビにとって非常に厳しいシチュエーションだ。照明のある部屋で調整した映像設定のままでは画面の明るさが足りず、パンチの足りない映像になってしまう。DX2では、ある一定の明るさ以上になると外光が差し込んだ部屋と自動的に判断し、色温度を高くする。これにより力強い画調になり、外光が差し込んだ部屋でも鮮やかでクッキリと見やすい映像に調整してくれる。

また一般的なリビングでは、照明の種類も白熱灯や蛍光灯など室内環境にバラつきがある。DX2の明るさセンサーの威力はここでも発揮され、前述の外光のほか、照明の明るさと色味で、外光・蛍光灯・白熱灯・暗室と、4段階で部屋の照明の状況を判別し、それにあわせて画質を自動調整する。色温度設定を例に取ると、蛍光灯ではクールな画質とし、白熱灯では、より落ち着いた色味に合わせる。さらに照明を落とした寝室や個室などで、真っ暗な部屋で視聴する場合は、色温度を低くして、よりシネマライクな映像に調整する。

さらに「ぴったりセレクト」では、ディスクの種類や映像ソースの種類による自動調整も行われる。BD/DVDの種類や映像内容によってノイズリダクションのレベルを調整するほか、映像ソースもフィルム素材の映画、ゲーム、写真などを自動的に判別し、それにあわせた画質に設定する。たとえば、より繊細な再現の求められる映画では最大ゲインを抑えるなどの処理を行い、フィルムの世界に浸れる画作りを行ってくれる。

またDX2では、録画機能一体型モデルならではの画質調整機能も盛り込まれている。録画した番組の再生を行う際、デジタル放送の番組情報から番組ジャンルを判別し、それに合致する映像に合わせこむほか、録画モードに応じてノイズリダクションの効果を調整するなどの処理を行ってくれるのだ。

 

「ぴったりセレクト」の画質自動調整機能について紹介してきたが、視聴する環境に応じて画質を自動調整する機能は他社にもある。では「ぴったりセレクト」だけにしかない優位性とは何かというと、それはズバリ、どんな設置状況にも対応できる柔軟さだ。

たとえばセンサーの近くに赤いランプを置いていたとしよう。すると、当然ながら赤い色がセンサーで検出され、そのままでは最適な画質に調整できなくなってしまう。「ぴったりセレクト」では「センサーの色温度」「センサーの照度」を手動で調整できるため、どんな設置状況でも正しい調整結果が得られる。

 
「ぴったりセレクト」では、「設定」から「部屋の照明設定」を選ぶ(左画面)ことでセンサーの色温度や照度を設定できる(右画面)

さらに「ぴったりセレクト」を選択した状態でも、非常に詳細な画質調整が可能。ガンマ設定が行えるのはもちろん、個別モードに入れば、色相、彩度、明度の3つの項目それぞれについて、R/G/B/C/M/Yの6軸で±30ステップの設定が行える。その気になれば、プロ用モニター顔負けのマニアックな調整ができてしまうのだ。

「ぴったりセレクト」はあくまで“かんたんさ”にこだわっているが、あらゆるシチュエーションに対応する懐の深さも併せ持っているのだ。

 
「ぴったりセレクト」モードでも、色相/彩度/明度のそれぞれを詳細に設定できる   もちろん「ぴったりセレクト」時にガンマ設定を行うことも可能だ
 

さらに「ぴったりセレクト」では、映像だけでなく音質の自動調整も行ってくれる。デジタル放送の番組情報から映画/音楽/スポーツ/ニュース/その他の番組ジャンルを判別し、自動で音質を調整するのだ。調整項目は多岐にわたり、周波数特性、オートボリュームの音量、サラウンド機能のON/OFFが自動設定される。パッケージソフトなど番組ジャンル情報が無い場合は、映画かどうかを判別して、映画に適した周波数特性とオートボリュームの音量へ変更を行う。またユニークな機能として、深夜11時以降はオートボリューム機能を自動的に働かせ、音漏れを抑える機能も装備している。

これだけ入念に作り込まれた自動画質・音質調整機能はほかに見あたらない。「ぴったりセレクト」搭載のDX2では、購入して設定した瞬間から、常に最適な映像と音声を体験することができるのだ。

 

ではいよいよ、実際にAQUOS DX2の試作機で視聴したインプレッションをお届けしよう。

BDディスクをスロットに入れると、BD内蔵機ならではの利便性がすぐに実感できる。自動的に「新・モーションガイド」が立ち上がり、右上にはディスクの内容をリスト表示。さらに右下にはプレビュー画面が表示され、内容を確認することができるのだ。このとき、現在視聴中の番組やネット画面は左側に大きく表示されるので、そのまま視聴を続けることもできる。

 
BDディスクをスロットに入れると、即座にディスクの読み込みがスタートする(左)。その後、右下でプレビュー画面の再生が開始され、内容を確認することができる(右)
 

はじめにBDソフト『グリーンディスティニー』を見てみよう。このソフトでは、チャン・ツィイー演じる盗賊が闇夜に舞うアクションシーンが序盤の見所だ。「ぴったりセレクト」でそのシーンを再生すると、静寂な街並みや夜空の階調と、そのすぐ後のシーンの、中国建築の煌びやかな装飾を格調高く描き出し、ソフトの世界観を見事に再現する丁寧な画作りが堪能できた。なお、試みに同一シーンで蛍光灯を付けて視聴してみると、全体の画面輝度が大きく上がるのはもちろん、ハイライト部が特に力強く伸び、また精細感もかなり強まるなど、たちどころに明所でも見やすい映像に変化する。

続いて、WOWOWでエアチェックした邦画『グーグーだって猫である』を再生。このソフトでは、邦画特有の柔らかな映像の表現力をチェックしたのだが、結論から言うと、作品の持つ雰囲気を再現しながら色味やディテールを上手に引き出す、絶妙な画作りに感嘆させられた。このソースはかなりノイジーかつ暖色系の画作りという特徴を持っているが、「アクティブコンディショナー」によって適度にノイズを抑えて見やすさを確保し、さらにもともとの暖色系の色合いを残しながらも、公園に集まった群衆の服のディテールはしっかりと描き出す。フィルムならではの質感が見事に再現されるだけでなく、画面全体の立体感が格段に高まるのだ。特に部屋の照明を完全に落とした際の画作りは絶品だ。

 

同じくWOWOWで録画した音楽ライブ『Perfume LIVE! ディスコ!ディスコ!ディスコ!』では、ダイナミックな色の再現力に注目した。ステージでダンスする3人、暗闇に浮かび上がるスポットライトなどが短いカット割りで編集され、非常に明暗差の激しい映像なのだが、DX2で見てみると、これらの要素を的確に表現するとともに、ステージを照らすライトの鮮烈な色もビビッドに再現する。これは主に「なめらか高画質」の効果が現れたものと考えられる。なお、このソースも明るい照明下と暗室の両方で視聴したが、明るい照明環境では輪郭を固めにした明瞭な映像を実現。さらに暗室では、スポットライトに照らされたハイライトの輝きと暗部の階調を両立させた絶妙な画作りで、ぴったりセレクトの高い適応能力を見せつけられた。

「ぴったりセレクト」による音質の自動調整機能が、予想以上に効果的だったことにも驚かされた。5.1chにて音声収録の映画を視聴すると自動的にサラウンドがONになり、自然な広がり感が得られる。また音楽ライブを再生しはじめると自動的に「音楽」モードとなり、ライブ感あるサウンドが楽しめる。ユーザーが何も操作しなくても、これらの切換えを自動で行い、最適な音質が得られるのは便利この上ない。

また、本機にはおなじみの1ビットデジタルアンプが搭載されているほか、内蔵のサイドポート・バスレフ型スピーカーによる低音の表現力も上々。気軽に映画やライブを楽しむといった使い方なら十分に対応できるだろう。

 
評価の高い「高画質マスターエンジン」に、新基軸の「ぴったりセレクト」を搭載した事で、大きく画質を向上させたAQUOS DX2。BD内蔵という大きな特徴だけでなく、画質面でも積極的に新技術を導入したことで、上位機に迫るほどの実力を手に入れた。「録画」「ネットワーク機能」「画質」。これらすべてを高い水準で融合させたDX2は、オールインワンテレビの真打ちと断言できる。