オーディオテクニカ「ATH-ADX7000/ATH-ADX5000」の差はどこに?ハイエンド開放型ヘッドホン聴き比べレビュー!
イヤーパッド交換で音はどう変わる?
次に、LE SSERAFIMの「Perfect Night」(44.1kHz/16bit)。メロウな雰囲気で、イントロの軽やかで浮遊感が心地よいギターリフが印象的な楽曲。
ATH-ADX5000は高域音の立ち上りが鮮明ながら、やや圧力が高く感じる。エフェクトの軽い歪がディストーション寄りに感じる場面も。クールで快活さに聴き応えを覚えるのは魅力だが、引き換えに長時間のリスニングは疲れ易いかもしれない。また、音と音の間に僅かながら隙間のような感覚があり、これが軽快な音調に繋がっているようだ。
一方でATH-ADX7000は、ギターの余韻が実に心地よく、音源を正確に表現しているように感じる。また、バスドラムなどの低域楽器はより低い帯域まで低歪に再現し、低く深みのある表現が音楽全体をリッチに感じさせる。
結果、低域から中高域が滲まず独立性を保つことで、中高域の解放感も増す。例えばボーカルは中を漂うように自由度を増し、開放型ヘッドホンの神髄をより発揮するかのようだ。ダイナミックレンジが広くレスポンスの良さも特筆に値し、強弱の波が魂を揺さぶるような表現は本機ならではと思える。
クラシックは、スケーターズ・ワルツ(カラヤン指揮/ベルリンフィル)を試聴。導入は軽やかなストリングスで始まり、ワルツが展開される直前のバスドラムの広大な響きも印象的な音源。ATH-ADX5000では低域のスケール感に限界を感じ、優秀ながらも広大とは呼べない感が残る。充分な高音質だが、音量が上がってくるとシャイニーな音調が強まるのも事実だ。
一方でATH-ADX7000は小音量から大音量まで低歪に再生。一貫性を保った正確なトーンが、楽曲が持つスケール感を大きく描き出す。滑らかさが抒情的な表現を濃く、ホルンの温かく雄大な響きも情緒的。ダイナミックレンジの広さはクラシック音楽、アコースティックの表現の幅を広げ、音楽性を豊かに感じさせてくれる。
最後に、ATH-ADX7000のイヤーパッドを出荷標準装着のベルベット素材からアルカンターラに交換するとどう変わるのか。主に低域のチューニングを狙ったものとのことだが、音全体が引き締まってシャープになり、繊細な音がよりクリアに。定位も鮮明さを増す。
装着時の肌感として、ベルベット素材より少し熱く感じるが、サウンドチューニングの一手段として活用できそうだ。音質傾向としてダイレクト感を求めるならアルカンターラ、広がり感やリッチさを求めるならベルベット素材という選択で良いだろう。
「コスパがいい」超高級機、ATH-ADX7000
今回の試聴では、ATH-ADX5000に対しATH-ADX7000にいくつものアドバーンテージが確認できた。ATH-ADX5000の優秀さは疑いの余地が無いが、比較すると全体の質という点においてATH-ADX7000の優位性は明白だ。
一方で価格差は小さくなく、購入時の検討事項になるのは言うまでも無い。明るく尖鋭なサウンドを好むなら、ATH-ADX5000という選択も大いにあり得る。
ATH-ADX5000とATH-ADX7000にはいくつかの違いがあるが、ATH-ADX7000の精度へのこだわりは、量産される民生用オーディオの枠を超え、工芸品と呼べる水準。この精度と結果として得られる低歪で正確な再生音を望むなら、ATH-ADX7000もまたコストパフォーマンスの面で納得の行く1台となるだろう。
(提供:オーディオテクニカ)
