オーディオテクニカ「ATH-ADX7000/ATH-ADX5000」の差はどこに?ハイエンド開放型ヘッドホン聴き比べレビュー!
また、ハウジングのパンチングメタルの加工精度向上や仕上がりの良さ、そしてその奥に覗くバッフルプレートの精緻感溢れるな美しさなど、ATH-ADX7000は見過ごしてしまいそうなディテールにまでも魂が込められているように感じる。

ほか、ベルベット素材のイヤーパッドは艶が美しく、アルカンターラはマット調で落ち着いた印象。両モデルとも基本として挟圧は適度な弱めで、装着感に大きな差は感じないが、アルカンターラはベルベット素材よりも少ししっかりしていて、音質と併せ好みで選ぶと良いだろう。
ATH-ADX7000/ADX5000比較レビュー:「精度の高さ」が音に表れている
試聴は、両モデルのインピーダンスを考慮し、いくつかの据置型ヘッドホンアンプで小手調べした後、最も鳴りが良く感じたソニーの「TA-ZH1ES」を選択。条件を揃えるためにφ6.3mmシングルエンド接続で行った(※ATH-ADX7000にはバランスケーブルも付属するがATH-ADX5000はシングルエンドケーブルのみ付属)。
まずはダイアナ・クラールの「California Dreamin'」。 優秀録音音源で明瞭なボーカルは機器が持つ音色の判断に適する。ATH-ADX5000は解像感が高く、明瞭なトーンでダイレクト感が心地よい。
しかし、ややクールで声色がやや硬く感じる場面も。表現の範囲内と言えるが、シンバルなどの打音がチィッチィッと鼓膜に残る場面も。振動板のタングステンコーティングは尖鋭な表現と引き換えに、素材固有のトーンが時折顔を出すのは否めない。
一方のATH-ADX7000。アンプを選ぶ感はあるが、「TA-ZH1ES」との組み合わせでは本領を充分に発揮できる印象。基本として歪感が少なく耳触りの良さが印象的。「精度の高さ」が音に表れていると実感できる。

特に抑揚のダイナミックさに明らかな違いが。中低域に厚みが乗り、ボーカルは表情豊かでリッチなトーン。コーラスが層を成して生まれる厚みも心地よい。聴き込むとピアノの艶やかさにもハッとさせられる。
分析的に聴くと、音の分離が良く、また一音一音に適度な厚みと輪郭を纏って躍動的。ほか、空間の広さや奥行、音場の厚み、超高域で気になりがちな歪のような飽和も皆無。階調豊かに電気信号を音として描き切るようだ。
結果、そうしたディテールの丁寧な再現が、音の分離の高さとハーモニーで美しさを紡ぎ出し、透明感に溢れる余韻までも美しく感じる。ATH-ADX7000で追い求めた高精度と低歪は実際のサウンドとしても明らかな「差」として体感できた。
