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圧倒的な描写力を誇る大口径標準レンズ、ニコン「NIKKOR Z 50mm f/1.2 S」特別レビュー

2021/06/04 山田久美夫
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■自然でクセのないボケ、心地よい操作感


ボケも自然で素直だ。フルサイズ対応の大口径レンズなので、当然もとよりボケは大きい。しかし本レンズのボケの魅力は、大きさというより、ピント面から次第にボケていく過程が、実に滑らかでクセのない点にこそある。

最近の大口径レンズや高解像度レンズは、ピント面の描写を重視するあまり、大きくボケた部分よりも、ピント面からわずかにボケた部分(微ボケ)にクセが出るケースが多い。


また、特定の距離域で妙にボケの輪郭が立ったり、いわゆる二線ボケ傾向になったり、非球面レンズ採用レンズでは、ボケの中の明るさが均一でなく、年輪のようなリングが見られるケースもある。

だが、本レンズのボケには、そのような気になるクセは、まず見られない。今回のレビューのため、様々な条件で撮影したが、そういったボケに出会うことはなかった。

一方で、画面周辺において、点光源が完全な円形ではなくレモンのような形になる口径食は見られる。だが、ライバルとなる他社の大口径標準レンズと比較すると、それもよく抑えられている印象。気になる場合は、F2程度まで絞り込めば、画面周辺部の点光源でもきちんと丸く写るので安心だ。


外観は高級感のある高品位なもの。サイズは大口径中望遠レンズ並みで、正直、大きくて重い。そのため、お世辞にも携帯性がよいとはいえない。しかしながら、本レンズの描写を体感してしまうと、その大きさや重さですら許容する気になってしまうから不思議だ。

AFは大口径レンズと思えないほど軽快で静音。狙った場所にスーッと実に心地よくピントが合う。精度も十二分。開放付近は被写界深度がきわめて浅く、手持ちでは撮影者自身の微妙な揺れでピントを逃してしまうため注意が必要だ。

また、ここまで被写界深度が浅いと、AFエリアをピンポイントに設定しても測距しきれないこともあり、実際、マニュアルフォーカスで撮影したほうがスムーズなケースもあった。

だが、マニュアルフォーカスの操作感の心地よさも、実は本レンズの隠れた魅力。フォーカスリングの回転とフォーカスの移動量がとてもリニアで、きわめて人間の感性にあった動きをするため、ピントが合っていく過程も楽しみながら撮影できるだろう。

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