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【特別企画】

これぞ8K時代のAVアンプの先駆け。デノン「AVC-X6700H」「AVR-X4700H」レビュー

2020/08/27 大橋 伸太郎
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強力なアンプ部でより伸びやかなサウンドを生む「AVC-X6700H」

それでは、AVC-X6700Hを聴いてみよう。ヨハンナ・マルツィは、引き締まった音像が中央に原寸大で現れ演奏は力感に富み生々しい。AVR-X4700Hに比べ帯域が広がっていることがわかる。ジェームズ・テイラーのスタンダード集(CD)のヴォーカルの質感がしなやかで厚く、歪みっぽさ、軽さがない。バックの演奏の低音楽器の音色がしなやかに弾んで楽しい。

デノンのアンプの魅力はダイレクトな鮮度感と演奏の温度感、力強さ。そうしたデノン「らしさ」を色濃く備えていて、11ch中の2chでスピーカーシステムをドライブしていると思えないのびのびとして骨太な音質だ。

サラウンドはトップスピーカー2列/6発の7.2.6構成で聴いた。この構成で再生した『地獄の黙示録』は筆者に強烈な印象を与えた。イマーシブサウンド初期の課題だったのは、トップスピーカーからの出音にクロストークがあることだった。この存在がオブジェクトの定位や移動表現を曇らせていた。

最上位モデル譲りの密度の高いパワーアンプにより、より伸び伸びとした表現を聴かせてくれる

AVC-X6700Hはプリアンプ部のデバイスの配置を見直しそれまでクロスしていた信号経路を短くシンプルに変えた。前世代機AVC-X6500Hと引き回しのパターンを比較すると、従来の左右に加え上下(プラスマイナス)まで対称化が徹底されたことが視認される。こうした細かい設計変更の積み上げがクロストークと歪みの追放に役立ったのである。

トップ6発の威力は最早絶大。戦闘ヘリが入り江を空爆するシーンは、広々したデノン試聴室のそこかしこに爆発の水柱が高々と屹えたつ。音場のどこにでも音が描けオリジナルに忠実なサウンドデザインが現れる。音場の拡張と精度の向上も顕著。『ワルキューレの騎行』のソプラノが宙空に冷厳に浮き上がり、音場を切り裂き美しく狂気じみた響きに背筋が寒くなる。



さて、2機種をどう位置付けるか。両機種ともHDMI2.1の新機能や8K/MPEG-4 AACデコードに対応。AVR-X4700Hのデジタル部はAVC-X6700Hとほぼ共通で、下位機種との地力の差は大きく、音質は上位機種に迫る。価格対内容比の高さに加え、アンプとしての総合バランスは秀逸である。

一方のAVC-X6700H。DTS:X Proも視野に入れ13chまでの拡張能力を持つ11ch一体型は家庭で実現できるイマーシブ再生のフルスペック。モノリス・コンストラクションという多ch再生時代のユニークなアンプ技術も光る。業界の牽引役としてのプライドから音質も着実な進化。サラウンドアンプのベンチマークといえる。

8K対応の新プレミアムサラウンドアンプシリーズは音質の充実にめざましいものがあった。デジタルサラウンドとイマーシブサウンドを牽引するデノン最前線がここにある。

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