【特別企画】敵の足音なども聴きやすく

精度の高い音情報でゲームの勝ちを取りに行く。「Immerse with Audio-Technica」を試す

関根慎一

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2020年08月04日
PCゲームにおいて、勝敗の大きなカギのひとつとなるのは「音」情報だ。敵より先に敵の位置を掴みたい、戦闘を有利に進めたい。そのための判断材料となる、敵の足音などの「音」を、より聴きとりやすくしてくれるソフトウェアがあったら……? そんな方に注目していただきたいのが、このたび登場したパーソナライズ空間オーディオ・ソフトウェア「Immerse with Audio-Technica」だ。長年各種PCゲームをプレイする関根氏が、実際のプレイを通して実感した音響効果についてレポート&レビューする。


ゲームで勝敗のカギを握る「音」という情報

PCゲーム、とりわけ「バトルロイヤル」と呼ばれるジャンルのタイトルを遊ぶにあたって、「音」は重要な要素のひとつだ。数十人、あるいは数十チームの中から生き残りを目指すバトルロイヤルにおいては、様々な局面で「音を聴く」ことが勝敗を分かつ決定打になりうる。

「PlayerUnknown's Battlegrounds」(以下PUBG)や「Fortnite」といったバトルロイヤルのプレイングは、ゲームタイトル自体の派手なイメージの割に地味な事が多い。ほとんどのタイトルで、戦闘を有利に進める上で大切なのは「敵よりも先に敵の位置を掴む」ことだ。

ゲーム中に聞こえる音には様々な種類がある。プレイヤーのたてる足音や銃声、乗り物の駆動音、風切り音や波音、雨音、ドアの開閉音、窓ガラスを割る音などゲームによっていろいろだが、基本的には他のプレイヤーの居場所や行動を察知するのに役立つ情報だ。

索敵において視覚から得る情報はもちろん大事だが、敵が視認できないような長距離や、足音がはっきり聞こえるような至近距離戦では、敵のたてる物音に聞き耳をたてることも視覚情報と同じくらい重要になる。ゲーム内でどこから音がするのかがわかれば、敵の動きを察知するのに役立つ。逆に音の聴こえる方向が掴めなければ、場当たり的な対応しか取れないだろう。音の位置を察知する環境の差で勝敗が決する、ということは現実に起こりうるのだ。


ゲームの音を個人の耳に合わせた最適な立体音響にする「Immerse with Audio-Technica」登場

パーソナライズ空間オーディオを実現するソフトウェア「Immerse with Audio-Technica」(以下Immerse)は、音の聞こえ方、定位感を個々のプレイヤーごとにパーソナライズする技術であり、さらにオーディオテクニカ製一部ゲーミングヘッドセットに最適化しているのが特徴だ。開発は米国のスタートアップ企業Embody。音響科学と機械学習を組み合わせたソフトウェア開発を行っている、2016年創業の若い企業だ。

右耳の写真1枚をもとに、実生活における音の方向認識の仕組みを反映した立体音響プロファイルを作成。お気に入りのゲームのサラウンドサウンドを、個人の耳に合わせた最適なサウンドに変換する

2chヘッドホンでも擬似的に立体音響が楽しめるバーチャルサラウンドは、PCゲーマー向けにも以前から存在したが、定位感という点でそれなりのクオリティを求めるならば、ヘッドホンの他に別途サウンドカードなどの増設が必要になることもあって、ややハードルが高かった。ユーザー個人に合わせた定位感のチューニングを行うというのはソニーなど他社でも行われている試みであり、唯一無二というわけではないが、目を引く技術なのは確かだ。

記事執筆時点でのImmerse対応機種は、オーディオテクニカのゲーミングヘッドセットに属する「ATH-G1」、「ATH-G1WL」、「ATH-PDG1a」「ATH-PG1(生産完了品)」の4機種だ。ここではこのうち「ATH-G1」で「Immerse」を使用し、「PUBG」をプレイして感じたその効果をお伝えしたい。

現時点での「Immerse with Audio-Technica」対応製品。左から「ATH-G1」「ATH-G1WL」「ATH-PDG1a / ATH-PDG1」「ATH-PG1」※ATH-PG1は生産完了品


右耳の写真をもとに、個人に最適な立体音響プロファイルを作成

Immerseの設定方法は、ユーザーの右耳を写真に撮って、専用のWebサイトから送信するというもの。サービス側では受信した写真をもとに、耳の形状などを分析して立体音響プロファイル(「HRTFモデル」と呼ばれる)を生成し、ユーザーのアカウントに紐付けるという仕組みだ。このHRTFモデルはPCアプリを立ち上げてログインするだけで利用でき、特別な操作は必要ない。

筆者がスマートフォンでImmerse用に右耳の撮影をしているところ

HRTFは、「Head Related Transfer Function」(頭部伝達関数)の略。ある音が特定の位置から両耳に届くまでの特性を表すもので、個人によって異なっている音の聞こえ方の違いを表す数式である。このモデルをもとにユーザーそれぞれの関数(HRTF)を生成する。Immerseアプリによって最終的に出力される音はこの関数に合わせたものに変調しており、これによって個人の聞こえ方に応じて音が鳴っている位置の正確な再現や、定位の最適化を実現している。

オーディオテクニカの発表資料によれば、Embodyは「個人の耳の特性に合わせた空間オーディオに関するエキスパート」ということなので、耳形状の違いによる聞こえ方の変化についてのデータも持っていると考えられる。先述の通りEmbodyはソフトウェア開発に機械学習を用いているため、おそらく3Dモデル化した耳殻から関数を生成する段階で、研究データを活かしているのだろう。


セットアップや設定方法はシンプル。操作に迷うこともない

Immerseのセットアップに迷うポイントはほとんどないが、右耳の写真を撮る段階で、一旦モバイル用のWebサイトにアクセスして、サイト上から写真を撮影する必要がある点にだけ注意したい。WebサイトにはQRコード経由でアクセスするので、一般的な環境ならスマートフォンを利用することになるだろう。耳の写真を送信するとユーザーに合わせたプロファイルを生成している旨の表示が出るので、そのまましばらく待つと処理が完了し、アカウントへ自動的に紐付けられる。


Immerseの設定を始めると、QRコード経由でWebサイトに移動し、右耳の写真を撮るよう促される

撮影方法の動画チュートリアルも用意されている

撮影はWebサイト上で行う


送信前には最適な写真が撮れているか確認画面が出る

写真を送信すると、プロファイルを作成している旨の表示が出る

Webサイト上の処理が完了すると、PCアプリの操作に戻るよう促される


この時点でプロファイルとアカウントの紐付けが完了している
耳の写真を撮るのは一人では少し大変だったが、何度かやり直して無事送信できた。ちなみに、耳ではないものを撮影して送信しようとすると、撮り直すよう警告が出てエラーとなる。

Immerseのアプリで設定できる内容はシンプル。プロファイル(ユーザー)や使用するヘッドセットの切り替え、音量、ショートカットの有効/無効化、Presence(音場距離の微調整)、写真の再撮影だ。Immerse自体のセットアップはUIもわかりやすく、初見でPresenceの意味が少しわかりにくいくらいで、基本的には操作に迷う余地はないといってよい。

Immerseの操作画面

対応ヘッドセットを選択

設定画面。ホットキー設定ができる


ユーザープロファイル設定画面。ここから写真の再撮影もできる

サウンド設定。基本的には「自動チャネル検知を有効化する」にチェックを入れて使う

「Presence」の設定は、音が聞こえる距離を調整する項目。数値が大きいほど遠くから聞こえる


UI上部の「+/-」アイコンを押すと小型UIに切り替わる
ゲーム側のオーディオ設定も必要。タイトル別最適設定の検索も可能

Immerseを使う上で重要なのは、Immerseアプリ自体の操作よりも、ゲーム側の設定だろう。ゲームのオーディオ設定はタイトルごとに異なるため、それぞれ適切な設定をしないと想定された通りの聴こえ方にならない可能性がある。例えばPUBGの場合は、ゲームのオーディオ設定としてHRTFの項目が存在するので無効化が必要だし、「Tom Clancy's Division 2」では「ミックスタイプ」の項目を「ホームシネマ」に設定する必要があるなど、タイトルによって項目の設定内容や名称が異なるあたりがやっかいだ。

Immerseを使うときは、PUBGのHRTF設定をOFFにするのが望ましい

解決策のひとつとしては、ImmerseのWebサイト右下にあるヘルプの検索欄に、Immerseを適用して遊びたいタイトルの名称を入力する方法が挙げられる。Immerse側で適切な設定方法を伝える記事の用意があれば、検索欄に当該タイトルの項目が表示されるので活用しよう。もちろん検索に引っかからないタイトルもあるが、概ねスピーカー設定を「5.1」や「7.1」などのホームシアター設定に合わせて、ゲーム側のサラウンド機能、例えば「Dolby Atmos」や「DTS X」、HRTF設定などを無効にすれば想定に近い設定になるはずだ。

Tom Crancy's Division 2のオーディオ設定では手動で「ホームシネマ」に切り替える

実際にプレイ。「聞こえていない音がこんなにあったのか」

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