各種パーツに独自カスタマイズを実装

iFi audioのポタアン「hip dac」のテクニカルノートが公開。「iFi全部載せ」の技術詳細を解説

ファイルウェブオーディオ編集部:筑井真奈

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2020年04月14日

【2】アナログ回路へのこだわりートゥルーバランス設計とボリューム回路


iFi audioのポータブルオーディオ製品は、非常に低価格かつコンパクトなサイズで、「バランス駆動」を実現していることに大きな特徴がある。それは「hip dac」に関しても同じことである。

そもそもバランス駆動とは、「左ch+/左ch-」「右ch+/右ch-」と4チャンネルのアンプを別々に駆動する方式で、音声信号を伝送する線は4本必要になる。デュアルモノ構成とすることで、干渉ノイズや左右のチャンネルセパレーションにおいて有利とされているのだ。一方のシングルエンド駆動では両方の「-」がグラウンドと共通化されているため、3本の信号線があれば良い。昨今のヘッドホンブームのなかでも「バランス駆動」は非常に重要なトピックであるが、iFi audioはまさにその市場を牽引してきた存在である。

バランス駆動の仕組み。左右それぞれのチャンネルで、正相と逆相(Inverted)が別々のアンプによって駆動されている

「hip dac」に搭載されるヘッドホンアンプは、フラッグシップである「Pro iCAN」シリーズから取り入れたもので、入り口から出口まで、フルバランス設計で設計される「トゥルー・バランス」設計であることが大きな特徴である(内部回路にもシングルエンド駆動を搭載していない)。さらに、ボリューム回路をアナログ設計しているのも、音質面を踏まえた彼らのこだわりである。

デジタルボリュームは安価に設計できるが、「ボリュームを下げるたびに解像度が落ちてしまう」というデメリットがある、とiFi audioは考えている。そのため、良質なアナログ・ポテンショメーターを搭載、抵抗値を変えることでボリューム調整ができるアナログ方式を採用しているのだ。

また、増幅回路には4チャンネルのオペアンプ「OV4627」を採用している。こちらも「xDSD」などにも搭載されているアナログアンプだが、汎用品ではなく独自のカスタマイズを施したJ-FETオペアンプとなっている。

テクニカルノートから引用しよう。
伝統的なシングルエンドよりもバランスが有利な主要点は、以下の3点が挙げられます。
・ドライバビリティー:出力電圧が倍になるので、より大きな、より珍しいタイプのヘッドホンを駆動することができます。
・クロストーク:理論上は1,000倍減少しますが、実際には数倍デシベルというレベルでもっとずっと改善します。
・干渉&ノイズの遮断:大幅にキャンセルされます。

「hip dac」は、ますます普及しているバランス型ヘッドホンの利点をすべて享受できるように、バランス入力&出力を装備しています。模範的な回路を支えるために、「hip dac」は精密なアナログ・ボリューム・コントロール・ポテンショメーターを使用しています。通常のデジタル・ボリューム・コントロールは使用していません。デジタル・ボリュームだと、フルボリュームでないと「ビット」数が減るので、ダイナミックレンジの上下が切れてしまうのです。増幅ステージにはOV4627を使用し、屋外でも並外れたソニック・パフォーマンスを引き出します。

バランス出力アンプは、±が逆転した電気経路を使って、それと同じだが正反対のオーディオ信号をヘッドホン・ドライバーの左右のボイス・コイルに送るというトポロジーになっています。これによってスルーレートとパワーが2倍になるので、オーディオ・パフォーマンスは聴感上も測定上も改善します。標準的な「シングルエンド」のヘッドホンと比べてTHDとクロストークが減少します。


もうひとつiFi audioのバランス回路の特徴は、3極TRSプラグを挿し込んでもなんの問題もなく使え、その上でバランス駆動による利点を得ることができる「S-Balance」という考え方を実装していることにある。

「S-Balance」は、nano iDSD BLにおいて初めて搭載された技術である。通常のシングルエンド駆動では、左右chがグラウンドを共有しているため、ノイズや干渉の原因になりやすい。しかし、「hip dac」においてはアンプはデュアルモノ構成となっているため、左ch、右chを別々のアンプで駆動している。そのため、左右のグラウンドが(シングルエンドの場合とは異なり)左右独立している。その結果クロストークが低減されるというのがiFi audioの考え方である。

「S-Balance」の仕組み。左右のグラウンドが独立しているため、クロストークが低減されるとしている

このS-Balanceは、中国系メーカーで採用されている「3.5mm PROバランス端子」や、HiFiMANが採用している3.5mm 4極バランス端子などとの互換性も考えられている。多種多様な製品や規格が乱立するポータブルオーディオ市場において、どのような相手との組み合わせにおいても最適なパフォーマンスを返すことが、ブランドの大きなポリシーであることが窺える。

テクニカルノートを見てみよう。
「S-Balance」は、「hip dac」のほかに、xCAN、xDSD、nano iDSD BLに採用しています。インイヤーモニター(IEM)は非常に高感度なのが典型です。このために私たちはS-Balanceを用意しているのですが、それはIEMに特別に合うように設計された独自の回路トポロジーなのです(3.5mmソケットを使用)。

S-Balanceの場合は、第2アンプ(バランス駆動の際に使われる2つめのアンプ)は使用しませんが、信号にノイズや歪みが加わることはなく、感度の高いIEMに完璧に合っています。チャンネルごとの専用の「-」ワイヤーが各チャンネルのアンプのスター・グラウンドにまで装備されているので、チャンネル間にクロストークが生じないことが確保されています。

S-Balanceは、TRRS 3.5mmバランス配線及び3.5mm PROバランス配線(チャンネル・セパレーションを維持する)のヘッドホンとフルに互換性があり、サポートしています。これこそがS-Balanceのポイントです。S-Balanceは3.5mm TRS接続も問題なく使うことができます。Hifiman/3.5mm PRO/OPPO PM3など3.5mmコネクタを装備した製品とも互換性があります。


DACチップとXMOSを独自カスタマイズして音質を追求

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