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「Accordo」の美点を引継ぎ低域を強化

聴き手に高揚感をもたらすスピーカー、フランコ・セルブリン「Accordo Essence」レビュー

公開日 2020/04/07 06:30 山之内 正
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■彫刻を思わせる造形が美しいスピーカー「Accordo Essence」

名機が居並ぶハイエンド・ブックシェルフ型スピーカーのなかで、フランコ・セルブリンの「Accordo」は特に評価が高く、発売から10年を経た現在も人気は衰えていない。その設計思想を受け継いだフロア型の「Accordo Essence」は、セルブリンと共同で開発を手がけてきたマッシミリアーノ・ファヴェッラが完成させた渾身の作だ。創始者セルブリンに敬意をはらい、代表作の本質という意味を込めてAccordo Essenceと名付けたという。

フランコ・セルブリンのフロアスタンディングスピーカー「Accordo Essence」。ペアで185万円(税抜)

Accordoに比べてサイズはひとまわり大きくなったものの、特徴的な断面形状は完全に一致し、平行面がないエンクロージャーを寄木で組み立てる手法も変わらない。無垢ウォルナットとアルミ・マグネシウム合金のプレートで組んだ構造体は堅固そのものだが、アーチ型フォルムが描く曲線は優美で柔らかく、ソリッド感との対照が鮮やかだ。どの角度から見ても隙のない造形はスピーカーというより楽器や彫刻作品を思わせる。

フランコ・セルブリンの遺志を継ぎ、Accordo Essenceを完成に導いたマッシミリアーノ・ファヴェッラ

スタンドにネットワーク回路を内蔵するAccordoとは異なり、フロア型のAccordo Essenceは本体内に回路を収めている。それでもサイズが生む余裕は明らかで、200Hz以下を受け持つ18cmウーファーの追加に見合う容積を確保する。Accordoは小型スピーカーのなかではバランスの良さが際立つとはいえ、ソースによっては低音楽器にあと一歩の実在感と厚みが欲しくなることがある。低音再生能力の強化は、Accordo Essenceの開発目標の中心に位置するテーマなのだ。Accordo Essenceがどんな低音を聴かせてくれるのか、期待が募る。

ミッドウーファーとトゥイーターの構成も基本的にAccordoの設計を引き継いでいる。フェイズプラグ付きの15cmドライバーは中域に集約して振動系の負荷を減らし、高域は今回も29mm径のシルクドーム型トゥイーターが担う。このトゥイーターはラグナー・リアンが開発したユニットをそのまま採用したものだ。

トゥイーターとミッドウーファーはAccordoのものを踏襲、ウーファーは18cmコーン型ユニットで本機のために専用設計された

あえて同じユニットを使うのはAccordoの美点をできるだけ忠実に伝えることが狙いだが、今回、フロア型に伴ってフロントバッフルの面積はかなり大きくなっている。立体的な空間再現や表情豊かな音楽性など、Accordoの長所がエンクロージャーの大型化によってスポイルされてしまうことはないのか。そこも今回の聴きどころの一つだ。

Accordo Essenceのスピーカー端子部

■質感の高い低音で、声の実在感と表情の豊かさを伝える

輸入元(アーク・ジョイア)の試聴室に出かけ、ブルメスターのフラグシップ級コンポーネント群と組み合わせてAccordo Essenceを聴いた。今回は同じ環境でAccordoも聴くことができたので、両者の違いも併せて紹介しよう。

アーク・ジョイアの試聴室にてAccordo Essenceを聴く

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