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イタリアの美しすぎるオーディオブランド

美しさと音質を両立、PathosとCharioのシステムが奏でるイタリアン・オーディオの魅力

2019/12/05 土方久明
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オーディオファンに人気のCHORDの代理店、タイムロードが新たに輸入販売を開始した、イタリアの「Pathos(パトス)」と「Chario(チャリオ)」。2社の洗練されたデザインのプロダクトを見ると、「美しすぎるオーディオブランド」と呼びたくなる。今回は、パトスのプリメインアンプ「Classic One MkIII」とチャリオのスピーカー「Lynx(リンクス)」を組み合わせて、イタリアらしいオーディオの魅力を満喫した。


まずは、ブランドのプロフィールを簡単にご紹介しよう。イタリア北部の町ビツェンツァに本拠地を構えるパトスは、1994年に創設されたアンプブランド。特許取得の独自技術「INPOL」を始めとした独自技術を武器にデザインの良い真空管/半導体のハイブリッド構成アンプを多数手がけている。

もう一方のチャリオは、1975年に設立したミラノ郊外に本拠地を構えるスピーカーメーカー。キャビネットにイタリア産の天然木を用いてハンドクラフトされる、非常に美しいスピーカー製品を多数手がけている。

つまり両ブランドとも、官能的なデザインと職人の手によるハンドクラフトの精神を持つイタリアらしさが満載のオーディオ機器なのである。

ハイブリッド方式のプリメインアンプ「Classic One MkIII」

パトスのClassic One MkIIIは、チャンネルあたり70W(8Ω)の出力を確保した2チャンネルのプリメインアンプだ。プリ段はオーディオ用途で使用例の多い三極管「ECC88」真空管を2本、増幅段にはAB級MOS FETを用いた、いわゆるハイブリッド式を採用する。

Pathos「Classic One MkIII」¥398,000(税抜)

従来モデルからの刷新点としては、アナログ式だったボリューム回路がバーブラウン製ボリュームIC採用によるデジタル式ボリューム回路に変更されたことや、リモコン対応になったこと、オペアンプがMOS FETとなり低ノイズ、低歪み化を実現したことなどが挙げられる。更にスピーカー端子のショート時の保護回路の追加やスピーカーターミナルの素材変更など、音質と使い勝手の両面で進化を遂げている。

2本の真空管を搭載するプリアンプとAB級MOS FETの増幅段によるハイブリッドテクノロジーを採用する

スピーカー端子は、保護回路の追加やスピーカーコネクタを樹脂で覆われた安全なものに変更するなど強化を図った

ハイブリッド式を採用した事で外形寸法は230W×145H×480Dmmとコンパクトに抑えられているが、いざとなればブリッジ機能を使いモノラルアンプとして使用し、より高い駆動力でスピーカーを鳴らすこともできるようになっている。

入力はXLRバランス1系統、RCAアンバランスを4系統備える。また、スピーカー出力は2系統用意されRCAテープ出力を1系統装備

モダンクラシックなデザインのスピーカー「Lynx」

一方、チャリオのスピーカーLynxは同ブランド中で最も小型なブックシェルフスピーカーだ。ロングランモデル「Constellationシリーズ」を刷新した新製品で、人気の理由となっていた美しいデザインはそのままに、無垢材部分以外のバッフルプレートは新たにセラミック微粒子を含有した塗装を施して、美しさと傷への対応性を向上させるなど、上級モデルと同等の使用木材・製造手法を新たに採用した。

Chario「Lynx」¥OPEN(予想実売価格198,000円前後)


キャビネットは、イタリアン・ウォールナット無垢材とHDF材を組み合わせている
ユニット構成は2ウェイの底面バスレフで、ウェーブガイド付きの新型ドライバーによる38mmのトゥイーター、ペーパーコーンの130mmウーファーを搭載し、クロスオーバー周波数は1,500Hzとなっている。


トゥイーターは、38mm口径のソフトドームを採用

ウーファーは、130mm口径のペーパーコーンを採用

イタリア本国では主にリビングスペースへの設置を想定しているというが、200W×360H×280Dmmの手頃なサイズ感は、日本の多くのオーディオルームにもマッチする。

室内の雰囲気がグッと変わる!モダンで美しいデザイン

2機種の大きな魅力として外せないのが、設置した部屋のインテリアを強化するような美しくインパクトのあるデザイン。これは全くの余談であるが、筆者も車と時計はイタリア製を愛用しており、本製品とのデザインの共通点を感じずにはいられない。この2つのプロダクトを1階の試聴室に置いた瞬間、室内の雰囲気がグッと変わってモダンになった。

ここからは、設置から試聴までの流れで感じた印象をお伝えしたい。まずはClassic One MkIIIを設置したのだが、筆者が1階で使用しているカッシーナ製のラックとマッチングが良くて嬉しかった(最初はウッド製のラックではないとデザインマッチングしないと思っていた)。メインシャーシは美しいヘアライン仕上げとマットブラックのトップパネルにより構成され、その上部には真空管とイタリアンレッドのトランス、さらにアルミのカバーに覆われた電源部が載せられている。この色使いはまさにイタリアのセンスだ。

一方のリンクスも負けていない。職人によって一品一品ハンドビルドされたキャビネットはイタリアン・ウォールナットの無垢材とHDFによって構成され、抜群の質感を持っている。多くのスピーカーが突き板仕上げの中、組み上げに非常に手間がかかる無垢材のウォールナットを選択したことに感心する。同社は1975年から無垢ウォールナットを組み上げスピーカーとして作っていたので、適切な加工方法を取得していたのだという。彼らは「無垢のウォールナットは美しさの点でイタリアのハンドメイド製品の必須要素である」と考えているそうだ。

高い再生能力で、オーディオファイルも納得の音質

見ているだけで惚れ惚れとしてしまう2機種の組み合わせだが、実際の音はどうだろうか? 今回はソース機器の選定に迷ったのだが、実際の使用シーンをイメージし、思い切って高品質DAPのAstell&Kern 「A&futura SE100」をソース機器とした。

プレーヤーには、Astell&Kern 「A&futura SE100」を使い試聴した

最初に再生した楽曲は、この組み合わせで聴くならもうこれしかないと用意していた、イタリアの人気ジャズレーベル「AlfaMusic」のアンドレア・ベネベンターノ・トリオ「Trinacria」。DAPに音源を入れて、ステレオミニジャックとRCA変換ケーブルを使いClassic One MkIIIと接続、再生ボタンをタップした。

その瞬間、Lynxからは明るく快いピアノが聞こえてくる。そう、これを期待していたのだ。オーディオ的な性能の高さはもちろん、それ以上に心揺さぶられる艶やかで色彩感溢れた官能的な音がする。色彩のあるピアノと弾力感あるベース。イタリアジャズは絶対にこう鳴らすべきだ、という音がするのだ。付属の美しいリモコンを使って音量を可変させる。こんな当たり前の動作でも高揚感が増すのだから嬉しい。

続いて、女性ジャズボーカルを聴いてクオリティを確認する。まずユニットの性能が予想以上に高いことが分かる。トランジェントが良く音離れにも優れている。ボーカルはリアルだが、その音を適度に響くキャビネットが余韻を加えて気持ちの良さを増している印象だ。

また、スピーカーのサービスエリアが広いこともよかった。最初はスピーカーセンターでしっかりと聞いていたのだが、ちょっと席を立って部屋の別場所に立った時でも気持ち良い音がする。スピーカーのインピーダンスが4Ωかつ能率が86dbと決して高くないので、最初は「鳴らし切れるかな?」と少し用心していたのだがClassic One MkIIIの駆動力は問題なく、バスレフ式で低域もリッチに出るLynxと帯域バランスの相性も良かったことは特筆したい。

試聴が終わった後にLynxの低域表現に興味を持ち、輸入元経由でバスレフの構造を確認したのだが、キャビネットと専用スピーカースタンドの間に閉じ込められた空気を、ダクトの気流から高周波成分を排出するローパスフィルターとして利用しているほか、低域の音圧増加につながる音響インピーダンスエンハンサーとしても利用しているなど、高度な設計が施されていることが判明した。本スピーカーの使いこなしのコツとして、壁などの反射面からある程度離して設置すること、また上記の理由により剛性の高いスタンドを利用すると良さそうだ。

リッチな低音の秘訣は、底面に配置されたバスレフポートに隠されていた

趣味が多様化し、音楽を含めて充実したライフスタイルを送ろうとする人たちが増えている今、オーディオ製品におけるデザインの重要度は大きく増している。さらに言うなら、若い世代から年配の世代まで、幅広い層でデザインに対するニーズが上がっており、必然的にオーディオ機器には優れたプロダクトデザインが求められている。

デザインが気に入ってオーディオ機器を購入するのは大いにアリだし、今回ご紹介した2機種の場合、デザインがすばらしい上でオーディオ的な再生能力も高く、オーディオファイルも納得できる音質を備えている。まさに時代性にマッチしたパトスとチャリオの製品には、今後もしっかりとアンテナを張っておきたい。

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