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【特別企画】トップシェアブランドの戦略機

いま体験すべきプロジェクターの筆頭、BenQ「HT5550」は“HDRエキスパート”モデルだ

公開日 2019/09/03 06:00 大橋伸太郎
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世界のプロジェクター市場においてトップシェアを持つBenQ(ベンキュー)が、ホームシアター向けのハイエンドモデル「HT5550」をリリースした。4K HDR対応DLPプロジェクターとして同社が技術を注ぎ込んだ、いま最も注目すべき1台の実力をレビューする。


プロジェクターのトップシェアを誇るBenQから登場の注目機

プロジェクターの勢力図に今変化が起きている。

この数年でNetflixに代表される4Kストリーミング動画のコンテンツが躍進した。大画面ホームシアターが伸長していく上で、高解像度かつ高画質のコンテンツは牽引役だが、従来、こうした最先端のコンテンツには、放送方式やフォーマットの壁があった。

それが、配信というグローバルでボーダーレスな高画質コンテンツが出現し、有料CS放送やパッケージソフトという狭い世界に閉じこもっていた4K UHDが広く流通するようになり、高画質プロジェクターの世界的な需要の広がりがもたらされたのである。

今その中心にあってプロジェクター市場を席巻する勢いなのが、BenQだ。インタラクティブ・フラットパネルからスマートディスプレイまで、ディスプレイの総合メーカーである同社は、プロジェクターに関してビジネス用途で評価されるとともに、ホームシアター用途ではコストパフォーマンス面でも人気を集めた。そして2016年には “HomeTheater” の略称を冠してフルHDのDLP機「HT2150ST」を発売。日本のプロジェクター市場に再進出した。


BenQは一貫してDLP方式を採用してきた。2017年には、フルHDでの定評をベースに0.66インチDMDを搭載してLED光源で4K解像度の映像を投写する「HT9050」を完成。翌2018年に「HT8060」がTHX HD認証を取得した。本年5月発表の「HT2550M」は、コンパクトな0.47インチDMDで4K HDRに初対応。同時に2018年の日本国内4Kプロジェクター分野で、BenQはシェア1位の座に着いた。

その後も開発の手を緩めることがなく、矢継ぎ早の製品リリースには目を見張るばかりである。技術開発と商品企画の両面で、現在最も勢いのあるプロジェクターメーカーといえよう。

BenQジャパンがさる2月、新製品発表会を催した。DCI-P3を95%カバーした4K HDRプロジェクター「HT3550」、ポータブルプロジェクター「GV1」が展示会の主役だったが、それ以上にAVジャーナリズムの強い関心の的となったのが、参考出品の上位機「HT5550」である。

「HT5550」

4K HDRとDCI-P3に完全対応。中央にレンズシステムを置くセンターレイアウト。前面吸気・排気のシンメトリカル構造、ブラックアウトされた筐体は、0.47インチDMDの利点を活かしコンパクト。しかし、その面構えと存在感にはホームシアタープロジェクターの主流たらんとする覇気と自信がみなぎっている。

この日、HT5550は「発売日未定」の参考出品に止まり映像を体験することができなかったが、大きな期待を残した。そのHT5550が、実勢価格で34万円前後と、多種多様なデバイスが競合する激戦区にデビューした。それでは、HT5550とはどのようなプロジェクターだろうか。

こだわりのオールガラスレンズや広色域が実現する感動画質

HT5550をひと言で表現すれば、0.66インチDMD搭載の同社大型機で培った4K HDRと広色域技術を傾注した、0.47インチDMD搭載の戦略機だ。

ネイティブ解像度は1,920×1,080で、同社のDLP 4K UHDテクノロジーで4倍密化して、830万ピクセルを表示する。もう一つのキーテクノロジーが、Cinematic Colorだ。HDRコンテンツ視聴時に表示する映像の色域をRec.709からDCI-P3カバー率100%までマニュアルで拡張する。ちなみに後者の色域面積は前者の1.25倍で、RとGの色域の拡張が目覚ましく、4K HDRの基準であるBT.2020規格の70%相当となる。

入出力端子は背面に集中。HDMIは2系統を備える

垂直方向60%、水平方向23%のレンズシフトに対応、設置自由度を高めている

光源はコンベンショナルなUHP、最大輝度1,800ルーメンと必要十分。レンズシフトは手動だが、垂直方向60%、水平方向23%と有効範囲が広い。特筆大書すべきは6群11枚のレンズシステム、日本製LCOS高級機並にフロントエンドまでオールガラスレンズである。プロジェクターの画質の何割かはレンズの品位で決まる。HT5550に大いなる期待が寄せられるゆえんだ。

6群11枚のオールガラスレンズは4K HDR再生に向けた特注のもの

ファイルウェブ視聴室にHT5550を持ち込み、4K各種ソフトを視聴した。最初に入力したのは、筆者がパナソニックの4Kビデオカメラ「HC-WZXF1M」の2160MP4モードで撮影した鎌倉花火大会(今年の7月10日撮影)の映像だ。

自身が撮影した高画質映像を大画面で視聴

同カメラの2160MP4モードの場合、HDR記録が適用されないが、SDRを忘れさせる肉眼視さながらの光の大輪がスクリーンに開花し息を飲む。夜空につかの間輝いて消える各色が白っぽく色落ちせず、近年豊かになった花火の発色に本機の広色域が寄り添い感動的だ。

次ページ劇場では気づかなかったことをHT5550の描写で理解

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