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【特別企画】トップシェアブランドの戦略機

いま体験すべきプロジェクターの筆頭、BenQ「HT5550」は“HDRエキスパート”モデルだ

公開日 2019/09/03 06:00 大橋伸太郎
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本機のピクチャーモード「BRIGHT」「VIVID TV」「CINEMA(REC.709)」「D.CINEMA」「USER」から、発色が鮮やかで輝きがあるVIVID TVで見た。背景の夜空が締まって落ち着くのはD.CINEMAの方で、スクリーンのゲインと回帰特性によってはこちらを選ぶといい。なお、シーンに合わせた最適なアイリス値を算出・出力するダイナミック絞り機能は、ダイナミックアイリスが動いて少々見辛いので切ったほうがいい。

5つのピクチャーモードを用意。メーカーではリビングでのSDR視聴は「Cinema(Rec.709)」を、暗室でのHDR視聴は「D.Cinema」を推奨している

クリエイターが考え抜いた映像の地肌を忠実かつ克明に描き出す

HT5550の本領が発揮されるのが4K UHD BDであり、HDRというユーザーが戸惑いやすい機能にフォーカスし機能特化を進めたホームシアター専用機が本機だ。したがって、4K UHD BD視聴時のようにHDR信号が入力されると、基本的にピクチャーモードは「HDR10」に固定される。別途「HDR」メニューをオフにしない限り、ピクチャーモードは選べない。

細かい調整は可能で、HDRレベル調整±2がマニュアルで動かせる。ブリリアントカラー、ダイナミック絞り、ワイド色域などのオン・オフができる一方、ガンマカーブ選択はPQ固定となる。HDRの恩恵を確実にユーザーに届けたいわけだ。

この日真っ先に見たソフトは、アポロ11号の月面着陸を描いた『ファースト・マン』。HDR10の威力が最も発揮されるソフトだ。

4K UHDBDでHDR映像をチェック

劇場での初見で気付かず、HT5550で分かったことがあった。ニール・アームストロング船長が主人公だが、映画の全編を通じてもう一つの存在の影とまなざしを感じせる。それは、造物主だ。しかし、それは人格性を持つ神でなく、人間が有史以来見ることも体験もできなかった神聖にして不可侵の永遠の領域を差し、光つまり映像の光線描写によって暗示的に存在を感じさせる。月面を輝かせる苛烈な白光、家族の日常を見守る甘美だが憂いに満ちた色温度の低い地上の午後の光、シークエンスごとに「光」は千変万化な現れ方をするが、根源の光は一つで人間存在への無言のまなざしがある。

本作の撮影に用いられたカメラはアトーン(仏製の映画撮影用カメラ)のペネロープ(6Kデジタルカメラ)を主力に、A-Minima(16mmフィルムカメラ)まで多種多様なカメラとレンズを使いこなし、一つに束ねて映画が出来上がっている。映画の進行に連れての光と陰影の変化にHT5550は寄り添い、撮影意図を見る者に伝える。

映画終盤のチャプター17、造物主の洗礼の祝福を受けたかのような宇宙服の神々しい輝きはHDRの的確な再現が生み出した映像だ。続くチャプター18、月の地平線に浮かぶ小さな地球の青の色相と彩度の堅持はCinematicColorの効果。月の地表と漆黒の宇宙のコントラストも力強く甘さがない。亡き子のブレスレットがクレーターに吸い込まれていくシーンは小さくなって闇に溶けるぎりぎりまで粘り、映画の感興を大切にする優れた映像機器であることに感銘を受けた。

次に見た4K UHD BDが、『アリー/スター誕生』。ハイコントラストでカラフルなルックの映画だ。クローズアップが多く解像感も豊か。デフォルト設定だとややハイコントラスト過ぎに感じたため、HDRレベルを−1に下げた。

HDR輝度のメニューから±2の範囲で調整が可能

筆者はDLP単板方式で避けられないカラーブレイキングへの目の感度が高いのだが、HT5550の場合、杞憂だった。皆無ではないのだが、ぎらついた見え方でなく、やわらかく目立たず、DLP方式であることを忘れてしまう。HT5550のカラーホイールはRGBRGBの6セグメント(速度は非公開)でごく一般的な形式なので、TIのチップセットの開閉動作の制御とホイール同期の精度の両方で進歩を遂げたということだ。

鮮鋭感重視の傾向があり、俳優の輪郭、奥行き表現にDLP方式に由来する硬さが感じられ、4Kエンハンスで近景の人物が強調され引付けられるので、Cinema Master機能の「PIXEL ENHANCER4K」をデフォルトの12→10に下げると好結果が得られた。シャープネスを15→12に、色濃度も50→45に下げるとLCOS高級機に近い落ち着いたバランスが現れる。積極性に調整した方がいいのはHDRエキスパートの本機とて同じだ。

コントラストや色調だけでなく、「Cinema Master」などBenQ独自の項目から細かな追い込みができる

映像作品には撮影監督が考え抜いて設定したルックがあり、光と色調、陰影に映画のメッセージが潜んでいる。HT5550は固有のルックに密着し、映像の地肌を忠実かつ克明に描き出しスクリーンに定着させる。

同社近年の4K HDRと色域の研究成果を満載し、高価格な製品に対抗する映像力を携えてHT5550は登場した。ビギナーには、HDRのエキスパートぶりが頼もしく、中級者には打てば響くフレキシブルな調整範囲の広さが魅力となる。秋から年末に大作映画が続々と4K UHD BDで登場、来年は東京五輪の4K放送が待つ。HT5550は、いま体験すべき4K HDRプロジェクターの筆頭にある。

(企画協力:ベンキュージャパン株式会社)

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