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THX認証を取得した実力機

“DLPの雄” BenQのハイエンド4K/HDR対応プロジェクター「HT8060」レビュー

公開日 2018/06/19 10:00 大橋伸太郎
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公称最大輝度は2,200lmだが、出画した瞬間にスクリーンに光が漲る。非常に明るくパワフルなプロジェクターだ。「シネマ」モードを選択しても眩しいほどだ。HDRの明部を強調した印象で、クロマ濃度も高く厚い発色。標準設定では力強いが、HDRらしさを強調した派手な画とも取れる。

さて先述した通り、本機の特徴の一つが、THX HDディスプレイ規格認証取得だ。Rec.709準拠だが、BT.2020のソフトを見る場合も、カラーモードを「THX」に切り替えるとバランスがぐっとよくなる。

ピクチャーモードを選んだうえで、輝度やコントラストなどの設定も好みに合わせて調整できる

結論を先に言えば、プリセットのモードを選び、そのままの設定で見るなら「THX」だ。レンズシステムは6群14枚で品位に不足はなく、DLP方式らしい鮮鋭感が味わえ細部の表出に優れる。『4K夜景』の夜の灯火がきりっと引き締まりHDRのピークが冴え美しい。描画の輪郭に癖がなく描き込みが緻密で画面に立体感がある。つまりDLP方式の良い面が端的に味わえる。

単板DLP方式に不可避のカラーブレイクは非常によく抑えられている。視線を故意に動かすと色のちらつきが出るが、普通に映像に見入っている範囲ではほとんど気付かず、DLP方式を忘れている自分に気付く。カラーブレイク発生という点では、最近の直視型4K/HDR対応テレビの方がむしろ目に付くくらい。

本機はスペック以上に明るくパワフルな反面、黒浮きの傾向があり、これはカラーモードを切り替えても変わらない。本機のセールスポイントの一つが適応型ダイナミックアイリス(Dynamic Black )。シーンの輝度レベルを分析して輝度とコントラストを自動調整するわけだが、標準設定どおりオンにしておきたい。

『ラ・ラ・ランド』はデフォルトだと明るいため、「THX」をベースにコントラスト47(50がデフォルト)、ブライトネス48、カラー48で見た。先述のHDR輝度で調整を試みたが、一目盛りでも変化幅が大きく、ピークを抑えるだけでなく映像全体のカラーバランスが変わってしまい、これは標準設定に戻した。他項目を調整した結果、カラフルで艶のある、満足のいく画に変わった。打てば響くというか、画質調整で大きな変化があることが本機の特徴だ。

詳細設定からより細かな追い込みが行える

付属のリモコン。「CinemaMaster」「HDR」などの設定画面を直接呼び出せる

カラーブレイクは先述の通り、ほとんど気にならなかった。この点は単板DLP方式の最先端の製品として大いに評価できる。筆者の目はカラーブレイクに敏感なほうだが、気が付くと2時間10分の本作の最後まで本機がスクリーンに映し出す映像に没入していた。

大柄な筐体はダテでなく、本機HT8060は万事余裕を持って作られた製品だ。電動ズーム、フォーカスなど画面調整の電動を止め「人力」にしたのも、画質に直接関わる部分にコストを投じたのだと思う。

標準設定の画質はダイナミックモードかと見まごうほど明るく、4K/HDRの演出効果も感じられ、大きなパフォーマンスを秘めている。したがって、本機の持てるパフォーマンスをソフトに忠実に開花させるためには、ユーザーは手間を惜しまず自分で調整を試みる必要がある。

そう、本機はソフト毎に最適なポイントを探り当てていく製品なのだ。しかし、映像のルックとそれがぴたり一致するとDLP方式の手練、BenQらしい鮮鋭感豊かな映像が現れる。それが他の製品で得られないHT8060の醍醐味であり魅力と言える。

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