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【特別企画】真空技術を音に活かす

あのサーモスが真空技術で作った“本気のオーディオ” 。VECLOS「SSB-380S」レビュー

2018/05/25 山本 敦
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内筒・外筒の2層構造となっているエンクロージャーのギャップは、1,000万分の1気圧以下の高・真空状態になっている。真空層と大気の間で生まれる圧力差が内筒・外筒の表面に強い張力をもたらすことで、エンクロージャーの剛性を高める効果がある。また内筒から発生する不要な振動が真空層によってシャットアウトされることで、音の透明感と見晴らしの向上にもつながるという。

真空エンクロージャーの断面図

MSA-380とSSB-380Sはともに細長い筒型のエンクロージャーを採用している。フロントバッフルをコンパクトな形にすることで、ユニットの背面に回り込む不要な音の回折を抑えながら明瞭な音像定位と臨場感を引き出す。

両機は、ともにパイオニアが専用開発した52mm口径のフルレンジユニットを1基搭載する。軽くて剛性の高いアルミニウム製の振動板をパイオニアの広帯域再生技術「HSDOM」によって解析し、ピストンモーションと分割振動をコントロールする。滑らかでキレのある中高域再生が特徴だ。さらにシリンダースプリング状のバタフライダンパーや稀少マグネットを採用した磁気回路、大口径のボイスコイルを組み合わせ、背面バスレフポート構造としたことで力強い低音再生を可能にする。

アルミ振動板のフルレンジユニットを搭載

ステンレス製エンクロージャーの先端にユニットを装着する段にも、サーモスが魔法びんで培ってきた技術が活きている。内部の高い密閉性を保ちながらビスによる不要な共鳴を避けるため、エンクロージャーの先端にユニットを “ねじこんで” 取り付けているのだ。これは魔法びんの止水技術を応用したものであり、ねじこみパーツとの接点にはシリコン製のパーツを配置してユニットを一段と強固に固定している。

円筒型エンクロージャーを支えるベース部にはアンプのほか、SSB-380SにはDAC回路やBluetoothレシーバーなどが搭載されている。コンパクトな本体を見てわかるとおり、ベース内部のわずか7-10mmという狭いスペースに基板や部品を配置した。スピーカーのエレクトロニクスまわりの開発にはパイオニアをパートナーに迎え、何度となくカットアンドトライが繰り返されてきた。基幹部には音質と電力効率に定評のあるテキサス・インスツルメンツのクラスDアンプICを採用。電源部にアンプICに起因するノイズが侵入しないよう、基板のレイアウトも繰り返しパターンを最適化した。

ベース部とスピーカーはジャンパーケーブルでつながる

本稿の主役であるSSB-380Sは、ハイレゾ対応のUSB-DACを搭載するデジタル入力に特化したスピーカーだ。PCにつないでUSBオーディオ再生を楽しんだり、スマホやタブレットに保存した音源をBluetooth接続によって手軽に楽しめる。

DACのICチップにはヴェクロスのエンジニアたちが狙った音をとことん追求してきた結果、旭化成エレクトロニクスの “VERITA”「AK4490EN」が採用された。DSDは11.2MHz、リニアPCMは768kHz/32bitまでのネイティブ再生に対応する。48kHz系と44.1kHz系を個別に持つデュアルクロック仕様として、音楽再生の精度も追求している。

サウンドを追求した結果、DACチップには旭化成エレクトロニクス「AK4490EN」を採用した

SSB-380Sは、専用に設計されたディスクリート構成ヘッドホンアンプが搭載された点が、兄弟機であるMSA-380との違いだ。デスクトップ環境で高品位なスピーカーリスニングとヘッドホンリスニングが楽しめる汎用性の高さは、コンシューマーモデルならではだ。

ユニットの傾きを最大45度まで5度間隔で調整・固定できるデザインとして、限られたデスクトップのスペースに置き、ベストなリスニングポジションが得られるところはSSB-380SとMSA-380共通の特徴だ。

細かな角度調整によってベストなリスニングポジションに設置可能

左右のスピーカー間はケーブル接続になるが、長めの3.5mmアナログ音声ケーブルと交換すれば左右の距離を少し離しながら自由にレイアウトできそうだ。リビングルームなど大きめの部屋でも、BGM感覚でクリアな音楽を満たせるパワーを備えている。エンクロージャーはガンメタリック系の落ち着いた色合いとして、繊細なヘアライン処理を加えて高級感を持たせた。最新のMacBook Proなどとのセットアップも映えそうだ。

左右は3.5mm端子のアナログケーブルで接続

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