HOME > レビュー > “新世代セパレートスタイル”の提唱。M2TECHのDACプリ「Young MKIII」とパワー「Crosby」を聴く

主要なフォーマットを全て網羅しつつ、より身近な感覚でセパレートシステムの醍醐味が味わえる

“新世代セパレートスタイル”の提唱。M2TECHのDACプリ「Young MKIII」とパワー「Crosby」を聴く

公開日 2018/03/21 15:11 岩井 喬
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE


BTL駆動では音像の奥行き表現に大きな差

今回の試聴では、スピーカーにテクニクスSB‐G90を用意。

まずはYoung MkIIIと1台のCrosbyによる通常のステレオモードで試聴を行ってみた。Young MkIIIは単体DACとしても優れており、きめ細やかでクールな艶をまとった滑らかなサウンドが特徴となっている。Crosbyとの組み合わせではそのスッキリとした高域の音色に加え、低域のハリ出し良いリッチなサウンドが広がる。ヴォーカルの口元はソリッドに際立ち、ピアノのアタックも硬質で澄んだ響きを持つ。ロックのリズム隊は適度な締りを見せつつも厚みよく、どっしりとした押し出しを見せる。シンバルやホーンセクションの響きは輝きがあり鮮やかだ。音場は明瞭な定位感を得られる一方、奥行きは幾分浅めである。

Young MkIIIのリアパネル。USB 入力を始めとしたデジタル入力に加え、RCA × 1 のアナログ入力を装備

ここでCrosbyを2台用意し、ブリッジ接続によるBTL駆動を試してみたが、ひと際低域の制動性が高まり、切れ味の良い締まったものへと進化した。アタック&リリースのスピードも向上し、オーケストラのハーモニーも抑揚良くスムーズに表現。重心も低く、ローエンドの伸びも自然で落ち着き良く臨場感溢れるものとなった。ロックのリズム隊もグリップ良く、スッキリとした滲みない描写となる。ヴォーカルもシャープに描かれ、ハリ良く滑らかな艶を放つ。

Young MkIIIと同一サイズとなるパワーアンプ、Crosbyのリアパネル。ブリッジモードはここに用意されたスイッチで切り換え可能。スピーカーターミナルも大型で、コンパクトながらケーブル接続も容易だ

ハイレゾ音源になると音像の分離感、余韻の階調性の細やかさが一層際立ってくる。Crosby単体のみの時に比べ、BTL駆動では音場の立体感に大きな差が生まれており、奥行き方向の深さ、DSD音源における余韻の豊潤さ、音離れの良さなど、音源の持つ情報量を巧みに引き出してくれた。5.6MHz音源の生々しい声の質感や肉付き感、MQA音源のクリアで見通し良い音場のリアリティなど、単体時よりも明確に感じ取ることができる。

Young MkIIIとCrosbyによるセパレートシステムのメリットは、現在主要なフォーマットを網羅するM2TECHならではのデジタル技術の高さ、そしてデスクトップサイズの筐体でフロア型スピーカーも難なく鳴らせる環境をスマートに実現できる点にある。加えて、USB-DACに相応のプリメインアンプを組み合わせる予算の範囲で2台のCrosbyを用意することで、リッチかつ高解像度なセパレートならではの高品位なサウンドを楽しめる。これが最大の優位点だ。

(岩井 喬)



<Specification>
【Young MkIII】●デジタル入力:AES/EBU(XLR)、S/PDIF(RCA 同軸デジタル、光TOS)、USB(B タイプ)、Bluetooth ●アナログ入力:RCA × 1 ●出力:XLR × 1(2 番ホット)※ XLR-RCA 変換プラグ付属●電源入力端子:5.5/2.1mm(センタープラス)●出力電圧(0dBFS 時):2.7Vrms(RCA 変換アダプター使用時“nomal”)、5.4Vrms(RCA 変換アダプター使用時“high”)、5.4 Vrms(XLR“normal”)、10.8Vrms(XLR“high”)●出力インピーダンス:100 Ω(RCA 変換アダプター使用時)、200 Ω(XLR)● S/N(0dB FS 時):120dB(XLR、A 補正)、116dB(RCA 変換アダプター使用時、A 補正)● THD+N(− 3dB FS、1kHz 時):0.0008%(XLR、0.003%、RCA 変換アダプター使用時)●対応サンプリングレート:PCM → 44.1/48/88.2/96/176.4/192/352.8/384Hz(352.8kHz 以上はUSB 入力のみ対応)、DSD → 2.8/5.6/11.2MHz(いずれもUSB 入力のみ対応)●ビット数:16 〜24bit(USB 入力のみ16 〜32bit)●ボリューム調節:0 〜− 96dB(0.5dB ステップ)●ミュート:− 20dB ●バランスセッティング:± 6dB(1dB ステップ)●位相:0°180°●オートオフ機能:OFF、10 〜240 分(10 分刻みで調整可能)●電源電圧:15V DC 300mA ●消費電力:4.5VA ●外形寸法:200W × 50H × 200Dmm ●質量:2.0kg

【Crosby】●音声入力端子:RCA × 1、XLR × 1 ●音声出力端子:スピーカー× 1(Y ラグ、バナナ対応)●感度:1.25Vrms ●入力インピーダンス:47k Ω(RCA)、20k Ω(XLR)● S/N:115dB(ステレオ)、118dB(ブリッジ)● THD+N:0.005%@60W 出力/ 8 Ω●出力電圧:60W(ステレオ/ 8 Ω)、110W(ステレオ/ 4 Ω)、180W(ブリッジ/ 8 Ω)●電源電圧:100 〜130VAC 50/60Hz ●外形寸法:200W × 50H ×200Dmm ●質量:3.0kg ●取り扱い:ENZO j-Fi LLC.、(有)トップウイング



本記事は「季刊・オーディオアクセサリー 168号 SPRING」からの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。

前へ 1 2

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE