一体型のハイエンド機をレビュー

マランツ「SR8012」を聴く ー “全チャンネルがHi-Fiクオリティ”の最上位AVアンプ

大橋伸太郎

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2017年12月15日
ステレオ音楽ソースから試聴開始すると、アンプ部および電源部強化の効果はてきめんで、SR7010に比べても鮮鋭感が増し力強くキレのある音質だ。サラウンドアンプでありながら各chでHi-Fiアンプのクオリティを目指したというマランツのコメントも頷ける。

今回の視聴システムの一部

BDミュージックソフト『魅惑のコンサートグランド・ファツィオーリF278(PCM192K/24bit)』は、HDMI入力においても定位の正確さが秀逸。音場の水平方向にピアノが伸びやかに響きの翼を広げ、トリルの発音位置の微妙な変動(つまり指使いの描写だが)の克明さや倍音の豊かさ、分解能からDACの優秀性と情報量が分かる。アナログマルチチャンネル入力とHDMIとの比較も各種試みたのだが、音楽ソースのレビューと併せて詳細は次回の記事に譲ることにして、関心の集中するサラウンド映像再生に移ろう。

■分解能とオブジェクトの移動表現に優れたサラウンド再生

映画音響の再生でもSR8012が大きな進展を実感させた。DSPのデバイスは変わっていないが、先述した基板の独立化が奏功していることと、やはり電源部強化でマルチチャンネル同時出力時の余裕が格段に改善された印象だ。具体的には、セパレーションとオブジェクトの移動表現の鮮明さでSR8012は、SR7010にかなり差を付ける。

フロントパネルを開けたところ

最初に視聴した『ブレードランナー完全版』(4K UHD-BD ドルビーアトモス)の第一のチェックポイントは空中パトカーの移動表現で、SR7010もいいが、SR8012は飛行の軌跡が鮮明さとなめらかさを増し、音場内で自在に曲線を描いて消える。視聴室の壁を取り払ったような音場の広がりがあり、効果音はじめ音の断片のその中の出現も天衣無縫。本作の音響のコンセプト、つまり方向を喪失し、漂流して行くような浮遊感のある音場が研ぎ澄まされた感がある。

次に視聴したのが、今年の人気タイトル『ラ・ラ・ランド』(4K UHD-BD ドルビーアトモス)。セブとミアが映画館で「理由なき反抗」を見るチャプター8、冒頭の背景に響く同作サウンドトラックは、低解像度だが量感がありなめらかで映画の華。続くグリフィス天文台のダンスシーンも、オケの音色にからりとした色彩感と艶、ふくらみがあり、サラウンドアンプとの音調ニュアンスの違いの表出に成功している。

チャプター14は、ハリウッドシネマミュージカルの名作「巴里のアメリカ人」へのオマージュだが、パーカッションの躍動感と響きの濁りない解像感にアンプ部の足腰の強さを再認識させられる。チャプター15のトランペットソロの音の移動、続いてワルツ音楽が高潮していくリッチな音圧感と、分解能を失わない響きのクラリティに仕事を忘れて聞き惚れる。一言でいえば、エモーションを伝えることに長けた厚くしなやかな音だ。

「SR8012」のリモコン

新たにHEOSテクノロジーに対応したことで、リモコンにもHEOSボタンが加わった

マルチチャンネル同時出力時のアンプの歪みの判断材料になる定番ソフトが、デジタルアニメーションのオムニバス『SHORT PIECE』(2K BD ドルビーTrueHD 96kHz 5.1ch)の第一篇「九十九」。冒頭の篠突く雨は力のないアンプは全チャンネルから出音する雨音がガサガサ歪みっぽく、電気臭くなるのだが、SR8012は雨音の肌理が細かく、なめらかで湿った雨の匂いが視聴室に冷ややかにたちこめてくる。

本作のもう一つの視聴ポイントが移動表現の切れ味と克明さだが、SR8012は360°旋回シーンで音に途切れがない。終盤にゴミの怪物が音場に高々と現れ、動き回る怪物の轟音が細かなデジタル音の集成で成り立っていることがわかる鋭利な分解能だ。



デジタル部分、DAC、DSPの性能はSR7010から大きく進歩した。さらにその伸びしろを余裕ある電源部、アナログ部がバックアップ、引き出し開花させた印象。冒頭にマランツの高級サラウンドアンプ、イコールセパレートアンプ、と書いたが、妥協のない設計手法が今、一体型の傑作を生んだのだ。

(大橋伸太郎)

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