IFI-Audioの真空管へのこだわり

「電子管(GE 5670)、これが重要なのです」。iFI-Audioのサウンドの秘密

iFI-Audio(翻訳:生塩昭彦)

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2017年04月28日

Mig25「フォックスバット」についての面白い話

(1) 米国空軍を震え上がらせ、クリント・イーストウッド主演の映画「ファイヤーフォックス」にインスピレーションを与えたのが、マッハ3以上で飛ぶこのジェット戦闘機だったのですが、それは(ファイヤーフォックスほど「イケテル」ものではなかったとはいえ)ジャンク部品を寄せ集めて作った安物ではありませんでした。

(2) 1機あたりのコストは、1970年代で100万ルーブルほどでしたが、これを現代の金額に換算すると3億5000万USドルほどになります。今日のF-22ラプターと同額です! そしてこの戦闘機は、数多くの重要な電子機器に電子管を使用していたのです。

(3) これには標的レーダーが組み込まれていましたが、あまりに強力なので、戦闘時や訓練時以外にスイッチを入れるのは犯罪行為でした。小動物なら、数100フィート離れたところから(マイクロ波によって)殺す能力を備えていたのです(電子レンジにかけられて死ぬのと同じ状態です!!!)。

(4) 最後に面白い話をひとつ ? 1973年、第四次中東戦争(欧米やイスラエルではヨム・キプール戦争と呼ばれています)の際、エジプトのMig25がシナイ半島上空でマッハ3.2の速度で偵察飛行をしているのを、イスラエル空軍のレーダーが記録しましたが、その時彼らはレーダーが故障したと思ったのでした。

ドイツとヨーロッパには、これと同等のシステムはありませんでした。アメリカ製の装置と共にJAN電子管を使うか、ドイツ郵便用のドイツ製の電子管(CCa、C3g, D3aなど)を使うかのどちらかでした。

大英帝国は(驚いたことに)軍事用電子管のために独自の相互サービスシステムを構築しており、1941年から使われるようになりました。英国軍は全般に民生用の電子管(後にはトランジスター)を使っていました。テストの結果軍事使用に耐えると保証されたものです。英国軍の電子管は、CV(Common Valve)の文字で確認できます。

一般的に、JAN/OTKのマークが付いた電子管はもっと頑丈で、技術的なパラメーターが非常に厳格で、変則もずっと少なくなっていましたが、そうでありながらも同時に民生タイプのものと互換性がありました。ドイツとヨーロッパの郵便用電子管は、全般に専用の設計で(唯一の例外はCCaです)、同様に頑丈に作られていました。英国軍と中国軍は厳選された(あるいは厳選されていない)民生用の電子管を軍事用機器に使っていました。

多くの点で5670は、その導入時には革命的な電子管となりました。表面上はVHF用のRF(高周波)機器だったので、800MHzまでの周波数帯域を使用することができ、そのおかげでリニアリティーが良好で、高調波歪み率が低く、オーディオ装置に使っても低ノイズだったのです。それなのに、5670電子管はオーディオ装置に多く使われることはありませんでした。なぜでしょう?

第一に、製造コストが比較的高い電子管だったため、大量生産にはあまり向いていなかった点が挙げられます。

第二に、砲撃管制コンピューターや通信システムなどを含めて、軍事用装置に幅広く使われていた点が挙げられます。


そのため、1980年代後期以前には、製造されたものの大半を米国陸軍とNATOが備蓄したのです。5670の製造は1980年代にほぼ完全に終了しましたが、備蓄分は1990年代後半にこれを必要とする装置の在庫がなくなるまで、保存されていたのでした。

第三に、5670が非標準的なピン配列を採用していた点が挙げられます。12AX7、12AU7、6DJ8/6922を見ると、どれもが同一の、あるいは極めて似通ったピン配列を採用しているのが分かります。ところが、5670のピン配列は根本的に異なっています。電気的には、そして内部設計の点では、6DJ8/6922に非常によく似ています。この6DJ8/6922はアメリカのハイエンドオーディオ装置で非常に人気が高かったのですが、5670を6922のソケットに差し込むことはできません。


物理的には可能です。メカニック的には5670は6922のソケットに差し込むことができるのです。しかしその結果は、プリアンプやプリメインアンプにとって致命的なものとなります。ヒーターとアノードピンがごちゃ混ぜになって、高電圧の電源がショートしてしまうからです。これをやったらおしまいです。

5670が採用されなかった要素のひとつ「価格面」

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