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【特別企画】「画質を大きく左右するのは映像エンジンの完成度」

東芝初の4K有機ELテレビ「レグザ X910」高画質化の理由 − 評論家・山之内正が徹底解説

公開日 2017/03/06 11:34 山之内 正
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「ローカルコントラスト復元」は、文字通り画像の明るさに応じてコントラストを適応的に制御する技術で、中間輝度部分のリニアリティを確保しつつ、ガンマカーブを補正して高輝度領域の階調とテクスチャーを引き出すことが狙いである。

「ローカルコントラスト復元」の搭載によって、高コントラストながら暗部と明部の階調も細かく復元するという

たとえば『レヴェナント:蘇えりし者』の雪原や焚き火の描写が好例で、限られた輝度範囲の中とはいえ、高輝度部のテクスチャーを復元することによって、HDR本来の立体的でリアルな描写力を引き出すことに成功している。

画質傾向チェックには『レヴェナント:蘇えりし者』などを視聴した

絶対的な明るさでは液晶テレビが優位に立つのは間違いないのだが、有機ELテレビは漆黒を忠実に再現することによって、コントラスト感については液晶が到達できないほどリアルな描写ができる。

薄型のスタイリッシュなデザインも特徴

ローカルコントラスト復元は、ハイライト部分についても立体的な描写を実現するメリットがあり、それによってコントラスト感の余裕をさらに広げる効果が期待できる。

特に、照明を抑えた環境で映画や音楽を楽しむような場合は、絶対的な明るさよりもコントラスト感の方が画質を左右する決め手になることが多い。

店頭で明るさだけを比べてしまうとそのメリットに気付きにくいので、できれば現実の視聴環境に近い場で画質を確認することをお薦めしたい。

そのほか、インパルス駆動でホールドボケを抑制する有機EL専用の「ハイクリア」「ハイモーション」ドライブモードなども搭載。様々な技術を盛り込んで高画質化を図っている

■「X910の映像が現代の4Kテレビの最先端を切り開いていることは間違いない」

最後に、内蔵スピーカーの音質にも触れておこう。

X910はパネルの薄さを最大限に活かすとともに、パネル面とスタンドの前面を揃えたスタイリッシュなデザインを採用しているため、内蔵スピーカーに十分な容量を確保するのは難しい。そこで、今回は低音方向の再生範囲を拡大するとともに、内蔵イコライザーの特性に工夫を凝らすことによって、不自然さのないバランスを実現している。

スタイリッシュなデザインを実現するための制約の下でも可能な限りの高音質を狙い、スピーカーボックスの容量を従来よりも大容量化するなどしている

スタンドがテレビ画面よりも前に出ない「フラッシュフロントスタンド」を採用。これによってスクリーンだけが際立つシンプルなフロントシェイプを実現

特に人の声のナチュラルな再現性と自然な定位感は、サイズや構造面での制約を感じさせないレベルを実現していると感じた。もちろん外付けのオーディオシステムと組み合わせることでさらにバランスの良いサウンドを実現できるとは思うが、限られた条件の中で最大限のクオリティを引き出すことに成功した意味は大きいと思う。

中高域のイコライザーのバンド数を213バンドへと大幅に増加させた


X910の映像が現代の4Kテレビの最先端を切り開いていることは間違いない事実である。そのクオリティを確保しつつ、今後の市場拡大に向けてさらに思い切った設計にチャレンジしていただきたい。それがレグザを強固に支持するファンへの答えになるのではないだろうか。

(特別企画 協力:東芝映像ソリューション)

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