【特別企画】Sound Reality Sereiesの新モデルを聴く

高橋敦が聴くオーディオテクニカ「ATH-SR9」。現時点での決定版オールラウンダー・ヘッドホン!

高橋 敦

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2016年11月18日

試聴に用いた曲の中で、ATH-SR9の特性に最もマッチしその力が特に存分に発揮されたと感じられた曲は、globeの「DEPARTURES(Remode 2 Ver.)」だ。

この曲のベースは低い音域で豊かな空気感を持たされている。そこが厄介なのだ。まず、その低い音域まで出せるヘッドホンでないとお話にならない。しかし出ていても出し方が緩ければ音の本体まで広がってしまい、空気感と合わさってボワ〜ンとだれたグルーヴになってしまう。

SR9は音像を横に膨らませずきれいに縦に沈み込ませ、またやや硬質な手応えの弾力も感じさせる。背景もクリアなので、低音の響き、空気感も豊かに届く。理想的だ。

コネクターとプラグのスリーブにはアルミニウム材を使用し、微振動の抑制にも配慮している

グルーヴといえばドラムスもよい。例えばスネアの音色は密で重みもあるのだが、スパンとヒップホップ的な抜け感もある。重みを出しつつ、もたつかせない。

高域側では、他の曲だとハイハットシンバルなどで感じやすいのだが、この曲ではピアノの手触りの生々しさも印象的だ。弦がハンマーで叩かれているそのポイントの直近に設置されたオンマイクっぽい成分の金属的で直線的な響きをしっかり感じられる。そしてそれが不快ではない。

「金属的で直線的な響き」はオーディオ再生において難しい。本当にしっかり再現しないことには、耳に痛い不快な音になりがちだからだ。オーディオの音作りとしてはそういう成分は「和らげて」しまうのが簡単ではある。しかしミュージシャンやエンジニアが意図してその音色を届けてきているのであれば、それを和らげてしまうのはどうなのだろうか…

オーディオテクニカはそこに真摯に取り組んできたメーカーで、これまでも高域表現に遊びを持たせない傾向が強かった。SR9はその線上での歩みをさらに深めたと言えるだろう。

代わりに、音源によっては例えば声の硬さや瞬間的な刺さりが気になることはある。だが伸びていない高域を伸ばすよりも、伸びている高域を整える方が自然な結果を得やすい。組み合わせる機器などシステム全体でのチューニングはやりやすいのではないだろうか。

軽量ながらしっかりヘッドホンを守る、レザー調のセミハードケースも付属

MSR7の特長である空間性も、引けを取らないレベルで継承。ただしMSR7では他の要素に比べ空間性が突出して優れていたのに対して、こちらは他の要素 − 低域の存在感などもぐんと向上しているため、相対的には、空間性が特別に印象的とは感じなくなった。これは「よい意味で」と捉えてOKだ。


ということで結論としては先ほどの話に戻るが、
「型番通りにATH-MSR7を全面的にアップグレードした音かと思ったらATH-WS1100の特長まで兼ね備えていた」
と驚かされた。

室内据置向けは別として、ポータブルも視野に入れたオーディオテクニカヘッドホンとしては現時点での決定版オールラウンダーの登場だ。ユーザーは「音の面では悩みが減り、予算の面では悩みが増え…」と結局悩ましいのだろうが、悩むに値する選択肢の登場は歓迎されることだろう。

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