コストパフォーマンスの高さにも注目

【レビュー】ラックスマン「E-250」 - レコードに刻まれた音を余さず引き出すフォノイコライザー

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大橋伸太郎

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2016年11月07日
「21世紀のアナログ」の自然で肉感的な音楽を、E-250が引き出す

ビル・エヴァンス・トリオ『ワルツ・フォー・デビイ』は、トリオの楽器全ての再現帯域が広い。ベースが音程を問わず音圧が一定、輪郭がシャープで切れ込みが良く、響きに自然な透明感があり芯が伝わる。スコット・ラファロの指使いが克明で響きに曇りや滲み、肥大がなくどこまでも鮮明で明澄。ハイレゾ192kHz最良の再生に一歩も引かない対峙の構えだ。

E-250は、アナログレコードから膨大な情報量を引き出してくれた

イングリッド・フリッターのショパンはホールでの録音だが、ステージの広さ、天井の高さが見え、冷え冷えした膨大な空気量を感じさせる音場感がある。水平方向の広がりが豊かでグランドピアノの筐体に相応しい音の幅がある。高域から低域まで鍵盤を走る両手の動きも見え、倍音のやや仄暗い輝きが魅力的だ。高周波領域の折り返し歪のないアナログと、最新録音技術の取り合わせで生まれる「21世紀のアナログ」の自然で肉感的な音楽を、E-250が引き出してみせる。

ダイアナ・クラールの名盤『ライブ・イン・パリ』(44回転盤)。本作はライブ録音でピアノ、ボーカル始めエコーの描写の自然さ、巧拙が決め手。アナログならではの自然な生きた音場描写に到達するかどうかがポイントだ。E-250での再生は、低域が鍛錬された筋肉のような引き締まった量感がある。ベースが滲まず力強くリズムを刻み中音量でも浸透力豊かで、音楽の安定した支えがステージサイトの生々しい臨場感を生んでいる。

ステージ楽器の遠近リアリズムも新鮮で、中央のダイアナのハスキーなボーカルがうっすらとエコーを伴って宙空に描かれる様は、思わず陶然となり目を瞑ってしまう。リズム楽器が優雅なスウィングを奏でる第2曲目は、軽妙なブラシワークの解像感、控えめに音場に忍び入るストリングスの描写、金管の漂うような粋な入り方、音場空間の重層的な描写が混濁せず自然な一体感を生んで美しい。

ラックスマンのプリメインアンプ「L-550AXII」と組み合わせて試聴

印象的だったのがノラ・ジョーンズの『カム・アウェイ・ウィズ・ミー』。肉声が安定したセンター定位で、宙空にくっきりと等身大に描き出す。発声の強弱、英語のディクションが滑らかで自然、ノラの温かくて香しい息づかいが伝わってくるようだ。バックの演奏も煌めくような倍音の光輝を放ち、演奏者たちの脚がステージにしっかりと付いた実在感がある。本機の特長の音の密度、濃さが発揮され、これまで何十回も本盤を聴いた中で最上級の再生だ。

ラックスマンの最新フォノイコライザー「E-250」の持ち味は、同社らしいナチュラルでヒューマン、しなやかな瑞々しさである。アナログ、デジタルの境界を越えて演奏会の空気をそのまま再現するオーディオといえよう。これだけの音と機能が備わっていると、再生カーブの切り替え機能もあればと欲が出てくる。時代に左右されず不断にアナログを作り続ける、ラックスマン次回作へのリクエストとしよう。

(大橋伸太郎)

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