同社初の全段管球式モデル

現代のアナログはここまで到達した。ラックスマンの管球式フォノイコ「EQ-500」レビュー

井上 千岳

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2015年07月15日
■実はラックスマン初となる全段管球式のフォノイコライザー

今年で実に創業90周年を迎えるラックスマンが、記念モデルの先陣を切って発売したフォノイコライザーアンプ「EQ-500(関連ニュース)」。トランス入力・全段管球式という構成はいかにもラックスマンらしいと思われそうだが、実は管球式のフォノイコライザーはこれが初めてだ。

「EQ-500」¥500,000(税抜)

厳密に言えば「EQ-88」というモデルが存在するが、これはプリアンプ「CL-88」専用機で、電源もそこから取る(関連ニュース)。だから完全な単体機としては、本機が初となるわけだ。

老舗のラックスマンにして初の製品ということは、現在のアナログブームを裏付けるような事実であると言っていい。そして21世紀の今日だからこそ知ることのできるアナログの未知の魅力を、本機は思う存分引き出してくれる。こういう製品の紹介は、実のところ大変嬉しいものである。

長年の経験とノウハウで回路構成やパーツを吟味

余計なことはさておいて、内容に入ることにしよう。フォノイコライザーは信号の増幅とRIAA補正を行うものだが、それほど複雑な回路構成を必要としない。本機では双3極管ECC83(12AX7)を片側2本ずつ使用し、SRPP2段に構成している。この間にCR型のRIAAイコライザーが入る。

「EQ-500」の内部構成

RIAA専用の無帰還CR型増幅回路

RIAAイコライザーはカッティングの際に定振幅となるように設定された特性を、逆のカーブをかけて元に戻す回路である。RIAAカーブは1kHzを中心に2オクターブだけ平坦(定速度)になっていて、その上下は−6dB/octの直線として表される。しかし実際にはそんなにきれいになることはなく、ある程度丸みを帯びた山型を示すのが普通だ。このためあまり厳密なことを言っても始まらない。

本機では極めてシンプルな抵抗とコンデンサーによる補正回路が組まれている。基本的には1次のフィルターだから、それほど複雑にする必要もないわけだが、パーツの選択には逆に入念な配慮が要求される。そこは長年の経験とノウハウに基づいて、吟味が行われているようだ。

このRIAAイコライザーを挟むSRPP回路は言うまでもなくプッシュプルの増幅段だが、ここではインピーダンスを低減する意味が大きい。本来SRPPはただの抵抗をつないだのに比べて、出力インピーダンスを3分の1あるいはそれ以上に低くすることができる。微細なアナログ信号の場合これが効果的で、ノイズや歪みの減少に大きく貢献する。

さらにこの後ろにECC82(12AU7)によるカソードフォロワーをパラレルで搭載し、さらに低インピーダンス化を進めている。そして出力トランスには2次側に中点を設け、バランス出力を形成する。

大雑把に見れば以上である。なお電源には整流管81EZとチョークトランスを装備し、純管球式構成を貫いている。

大型出力トランスやMC昇圧トランスにはスーパーパーマロイ製を採用

少し細かい機能面を見ておきたい。入力は3系統だが、セレクターで選択されていない端子は、アースにショートされてノイズの混入を遮断する。そしてMC型はトランス入力である。トランスは左右2基ずつ搭載され、入力インピーダンスは40Ωおよび2.5Ωとなっている。コアに初透磁率の高いスーパーパーマロイを採用して、微小信号への応答性を高めているのが注目される。なお出力トランスにも同じく、スーパーパーマロイが使用されている。

背面端子部

大型出力トランスと4基のMCトランス

MM入力は昇圧トランスをバイパスするが、切り替えの後で負荷容量と負荷インピーダンスが調整できるようになっている。容量は6段階、インピーダンスは30k〜100kΩまで連続可変だが、MCの場合はすでにトランスを通っているのでこれは専らMM用と考えるべきだろう。ただトランスの2次側インピーダンスが変わることによって相対的に1次側も変化するので、MC型にも関係はある。

6段階(0/50/100/150/200/300pF)の負荷容量切替機能と負荷インピーダンス可変機能(30k〜100kΩ連続可変)を装備

ハイカット、ローカット、バランス接続の位相切り替えなど豊富な機能

面白いのはアーティキュレーション機能が装備されていることで、本機から信号を送ってなじませるという。要するに消磁で、昔ユーザー間で知られていたプリアウト端子を活用する方法を正規化したものである。

「現代のアナログはここまで到達した」

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