HOME > レビュー > 音質だけでなく操作感も劇的進化! ラズパイオーディオを動かす「Volumio 2」開発版を試す(後編)

海上忍のラズパイ・オーディオ通信(12)

音質だけでなく操作感も劇的進化! ラズパイオーディオを動かす「Volumio 2」開発版を試す(後編)

公開日 2016/03/30 10:00 海上 忍
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
■フルスペック動作しなかったUSB DACでDSD 5.6MHz再生が!

設定/カスタマイズの自由度という点で納得できない部分はあるものの、オーディオ機器用OSという点でVolumio 2に見るべき点は多い。

まず、USB DACの互換性が向上した。現行バージョンのVolumio 1.55は、ある種のDACチップ/USBオーディオチップとの相性問題があり、サンプリングレート48kHz以上のハイレゾ音源を再生すると周期的にノイズが出る機器が存在する(実際にはVolumioの問題ではなくMPDが使用するデコーダの不具合)。その問題が、どうやら解消されたようなのだ。

実際、オーディオテクニカ・AT-PHA100を試したところ、Volumio 1.55では再生に難があった96kHz/24bit以上のFLACでノイズが発生しなかった。まったく音が出なかったDSD(DoP)も、スペックどおり5.6MHzまでの再生を確認している。AT-PHA100本来の低域の張り、高域の伸びと解像感の高さが存分に発揮されていたことを付けくわえておこう。

AT-PHA100ではFLAC再生時の断続的なノイズが発生しなくなり、DSD(DoP)もスペックどおり5.6MHzまで再生可能となった

SquashFSとOverlayFSの採用も、Volumio 2 -- 正確にはベースとなったDebian Jessie -- における見どころの1つだ。SSHでリモートログインして「df」コマンドを実行すればわかるが、/usrや/binなど読み取りが主体の領域はイメージファイルに収められ、SquashFS(読み取り専用のファイルシステム)によりループバックマウントされている。

そこへOverlayFS(上層と下層のディレクトリを結合するユニオンファイルシステムの一種)の機能によりルートディレクトリを重ねることで、必要となれば書き込みも可能になる。

これらはオーディオとは無関係な解説と思われるかもしれないが、実のところオーディオ機器として重要な進化のポイントだ。SquashFSは圧縮機能を備えているため読み取り速度向上効果があり、システムブートに要する時間が短縮される。

システム終了はほぼ一瞬で完了だ。コマンド/アプリケーションは(ループバックデバイスなので)メモリ上に展開されるため、1GBあるメモリの半分近くは固定化されてしまうが、実行までの速度が大幅に改善され、それが音楽再生やWEBインターフェイスの反応を含むあらゆる処理に反映されている。

Volumio 1.55(左)とVolumio 2(右)でdfコマンドを実行したところ。システムファイルをRAM上に置いているため、レスポンスが大幅に改善されている

これにあわせ、MPDの操作感も大幅に改善されている。手動で更新を指示しなくても楽曲を追加すれば即座に反映され(オートアップデート機能)、選曲時のファイルブラウジングも引っかかりを感じることなく動作する。アルバムアートワークの自動取得など外観の変化もあるが、このキビキビとした操作感がVolumio 2最大の収穫と言っていい。

RC1が公開されたということは、間もなく正式版が登場することを意味する。WEBインターフェイスの設定項目減にやや疑問を覚えるが、ファイルシステムの変更がもたらした操作感の大幅な向上とUSB DACサポートの改善は、本連載がいうところの「ラズパイ・オーディオ」に劇的な変化をもたらす。Raspberry Pi 3の発売というタイミングもあり、導入を検討するいい機会ではないだろうか。

(海上 忍)

前へ 1 2 3

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE