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海上忍のラズパイ・オーディオ通信(3)

“ラズパイ・オーディオ” の音質を高めよう! 「クロックダウン」で再生を追い込む

2015/07/31 海上忍
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ワンボードコンピュータ「Raspberry Pi 」でオーディオを楽しむための方法を、あれこれ模索しながらご紹介していく連載企画の第3回をお届けします。第1回は概要を紹介し、第2回ではオーディオメーカー、クリプトンに音を聴いてもらいました。今回はさらに音質を高めるための方法として「クロックダウン」を行ってみました(編集部)

■ラズパイ・オーディオにおける「クロック」の意味

いわゆるPCオーディオにおいて、「クロック」は2つの意味で使われる。ひとつは、システムクロック(マスタークロック)で、信号を一定間隔で量子化するときに基準とする装置のこと。デジタル/アナログ信号を変換するとき基準であり、セラミック振動子や水晶発振器など利用するクロックによって位相雑音やジッターが影響することは、本稿で説明するまでもないだろう。

Raspberry Pi 2 Model Bの心臓部となるSoC「Broadcom BCM2836」。ここにCPU(ARM Cortex-A7)とGPU(VideoCore IV)が格納されている

もうひとつのクロックは、CPU/SoCの動作基準となる時間の単位であり、性能を示す数値だ。PCはクロックの整数倍の時間をかけて命令を実行していくため、一般的にこの値が大きいほうが処理能力は高い。現在のPCに搭載されているCPUは、複数のコアを搭載し並列処理することでパフォーマンスを高める手法をとるため、クロック数イコール処理能力とはならないが、PCの性能を示す重要な指標であることに変わりはない。

ラズパイ・オーディオでUSB DACを使うことは、最初に挙げたほうのクロックの問題を回避する意味合いもある。USB Audio規格ではアシンクロナス転送をサポートしており、送り出し側ではなくUSB DAC側に搭載されたクロックを基準とすることで、データ通信を行う際のタイミングの影響を減らせる。つまり、送り出し側であるRaspberry Piのクロック精度に期待せず、USB DAC側の高精度なマスタークロックを使うことで、位相雑音やジッターを抑えようという狙いだ。

Volumio/Raspbianには「raspi-config」というツールがあり、メニューから選ぶだけでクロックアップできるが、クロックを微調整することはできない

ということは、最初に挙げたほうのクロックは、音質向上を目的としたカスタマイズにおいて喫緊の課題とはならない。USB DACおよびUSBケーブルの問題として、Raspberry Pi本体から切り分けることができるからだ。ラズパイ・オーディオの音質向上/カスタマイズを図るとき重要なのは、むしろ後者の「クロック」だといえる。

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