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藤岡誠のオーディオワンショット<第8回>

MCカートリッジ出力のバランス伝送への誘い<その5>「バランス伝送対応フォノEQアンプ」

2015/08/05 藤岡 誠
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藤岡誠が、自身の推薦するオーディオ機器、関連アクセサリー、あるいはコンポーネントの組合せ。またある時は新技術や様々な話題など、毎回自由なテーマで原稿を進めていく本連載。MCカートリッジ出力のバランス伝送をテーマとした第5回目は、バランス伝送対応フォノEQアンプを紹介する。

>>これまでの「MCカートリッジ出力のバランス伝送・昇圧方式への誘い」
<その1>MCカートリッジのバランス伝送・昇圧方式とは?
<その2>MCカートリッジのバランス伝送に必要な機器を紹介
<その3>対応フォノケーブルを試聴
<その4>対応昇圧トランスのお薦め製品

歴史と伝統を背負い、昔ながらのアナログオーディオの行為と作業を伴う

本稿のタイトルである『MCカートリッジ出力のバランス伝送への誘い』に関連した私のお薦め製品は、これまで「バランス伝送対応フォノケーブル」と「バランス伝送対応昇圧トランス」を紹介した。その途中経過から判断すると、特にMC型カートリッジを中心にアナログレコードの高音質再生にこだわってこられた方々にとっては“MCカートリッジ再生の追体験”ということで、“それなり以上”の興味を持って頂いているように思う。

どちらかというと高年齢層のベテランからの反響が多いのだが、20歳代後半〜40歳代の方々からも「是非とも挑戦してみたい」という少なからぬ反響があることがうれしい。いずれの世代の方たちも、今まで経験したことのないMCカートリッジの再生方式に興味をお持ちで、特に空間感や音像定位にこれまで以上の再現性を確認されているようだ。

MCカートリッジ出力のバランス伝送・昇圧(増幅)方式は、PC/ネットワークオーディオやハイレゾなどといった昨今のデジタルオーディオ界のトレンドとは大きく異なり、歴史と伝統を背負った、まさしく昔ながらのアナログオーディオの行為と作業を伴う。実行するにはそれなりの資金を必要とするが、それにも関わらず広い世代間での反響に少しばかりの驚きを感じている。また、幾つものメーカーの同方式に対する動きもこれまでにない活性が見受けられ、私としては実に頼もしい限りである。

高SN比を求めるならば初段がバランス伝送対応・昇圧トランス採用の製品がいい

それでは引き続き、バランス伝送・昇圧(増幅)対応のフォノEQアンプの私のお薦め機種を提示しながら、それらの内容などについてシンプルに紹介することにしよう。ただ、あらかじめ明確化しておくが、HA(ヘッドアンプ)内蔵のバランス伝送・増幅対応フォノEQアンプ(ユニット)は、SN比について過多な期待はしない方がいい。つまり、これまで何回となく述べている、「発電コイルの片側がアースラインから切り離されたフローティング伝送・増幅だから、アースラインからのノイズの混入がない」という特徴を否定しないが、「だから必ずSN比がいいはずだ」と思い込んではいけないということだ。確かに理論的には高SN比が期待できるのだが、事実と現実はそれを裏切ることもある。

それは昨今のトランジスターなどの半導体自体に、全体的かつ相対的にSN比の低下傾向が認められるという寂しい現実があるからだ。理論と実際の狭間の落とし穴ということである。もしも、高SN比を求める場合は、初段がHAではなくバランス伝送対応・昇圧トランスを採用した製品を使うのがいい。その一方、HAを初段としたタイプは、昇圧トランス方式で付加されがちな固有のキャラクターがなくワイドバンドで、音場空間の自然な再現性、特に奥行き方向の表現は素晴らしいことを知っていていい。

■バランス伝送対応フォノEQアンプ(ユニット)を紹介

さて、バランス伝送対応フォノEQアンプは、本稿の<その2>で紹介したように欧米メーカー製が多くバラエティーに富んでいる。

(ところで、実際にお薦め製品を紹介する前に<その2>の『バランス伝送対応フォノEQアンプ』の項目で“ケンブリッジオーディオ(オーストリア)”と記しているが、これは私の完全な誤記。ここで“ケンブリッジオーディオ”を“Pro-Ject”に訂正させていただく。国名はそのままである。)

そこで本題に戻るが、ここではコストパフォ−マンスを重視して紹介する。そうした欧米メーカーの製品展開に対して日本の状況はどうか? といえば、現時点で僅か1社のみの参入に過ぎず寂しい限りだ。とはいえ、その寂しさはいつまでも続くわけではないから期待していていい。

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