藤岡誠のオーディオワンショット<第8回>

MCカートリッジ出力のバランス伝送への誘い<その5>「バランス伝送対応フォノEQアンプ」

藤岡 誠

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2015年08月05日
4機種目はメイドインジャパンの製品だ。フェーズメーション「EA-1000」¥900,000(税抜)がそれだ。国産機としては高価だが、世界的にも比類のない構成と内容を知れば誰もが納得することになる。価格としては、PhonoModule+IN7+OUT3でカスタマイズしたオクターブの価格と極めて近似し、真空管採用という点でも類似性があるから詳細に比較するのも面白いだろう。

Phasemation「EA-1000」

本機EA-1000のフォノイコライジングはMM/MCに対応。MC入力は自社開発・製造の昇圧トランスで対応。勿論、XLRバランス入力端子も装備する。写真からも理解できるだろうが、フォノEQアンプ(ユニット)でありながら、左右ch完全に独立筺体化され、電源部さえも独立した3ピース構成であることだ。さらに、電源部については「電源供給も完全に左右独立させたい」という特別なこだわりを持つ方のために、別売で専用追加電源「PS-1000」¥320,000(税別)があり、これを加えれば“ACケーブルから左右ch完全独立電源供給”ということになる。

EA-1000の電源部。別筐体となっている

そしてもう一つの注目点は、電源の高圧整流管を含めて回路構成が完全真空管方式であることだ。増幅段は12AX7の無帰還SRPP回路。EQ回路はCR型で、一般的なRIAAカーブに加えてモノーラルLP、SPレコード用のカーブも併せ持たせている。出力は12AU7の単管並列接続のカソードフォロアー回路からXLR端子とRCA端子へ送りだされる。

以上のようにEA-1000は、完全モノブロック構成だから左右chの連動性はなく、操作においていささか面倒な側面も否定できないが、その面倒や不便さを物ともせず、アナログレコードの超高品位再生を志向する方々にとっては、この上ない凄い存在として君臨するわけだ。

聴こえは、最高水準SN比が印象的で、高性能バランス伝送対応昇圧トランス+真空管のユニットアンプによる無帰還CR型EQ回路からの音質・音調は文句なし。エナジーバランスも極めて良好。様々な楽器の質感も半導体方式では得られない温かさと自然さを感じる。その上で、前述した3ピース構成でなくては得られない空間再現性と音像定位は「素晴らしい」の一語に尽きる。


以上のような本格派製品とは別に「もっとお手頃価格の製品で楽しめないだろうか?」と考える方もおられよう。そこで紹介するのがオーストリアのPro-Ject(プロジェクト)「Phono Box RS」である。これはオープン価格だが実売は160,000円程度のようだ。

Pro-Ject「Phono Box RS」

コンパクトながら多機能でMM/MC型に対応。入力インピーダンス、入力容量、ゲインの微細な調整が可能。RIAAカーブとDECCAカーブの切換えやサブソニックフィルター機能も付属。入力と出力はXLR端子とRCA端子を装備。HAはOPアンプで構成されている。特別に高度なポテンシャルは持たないが、MCカートリッジ出力のバランス伝送・昇圧(増幅)方式の入門用として巧みに造られていると思う。お手頃価格で楽しめるユニットだ。本機にも注目されたい。


【筆者プロフィール】
<藤岡 誠>
大学在学中からオーディオ専門誌への執筆をはじめ、50年を越える執筆歴を持つ大ベテラン。低周波から高周波まで、管球アンプからデジタルまで、まさに博覧強記。海外のオーディオショーに毎年足を運び、最新情報をいち早く集めるオーディオ界の「百科事典」的存在である。歯に衣を着せず、見識あふれる評論に多くの支持者を得ている。各種の蘭の他、山野草の栽培も長年に亘る。

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