HOME > レビュー > MCカートリッジ出力のバランス伝送への誘い<その5>「バランス伝送対応フォノEQアンプ」

藤岡誠のオーディオワンショット<第8回>

MCカートリッジ出力のバランス伝送への誘い<その5>「バランス伝送対応フォノEQアンプ」

公開日 2015/08/05 12:19 藤岡 誠
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
次に1993年に設立されたアメリカのAyre(エアー)「P-5xe」¥400,000(税別)を紹介する。オリジナルは2002年に登場したMC/MM型カートリッジ対応の「P-5x」。これの電源回路を改善し2006年に発売されたのが本機P-5xe。現在、同社唯一のフォノEQアンプ。勿論、バランス伝送・増幅対応。全段がFETディスクリートのバランス回路でノンNFB、パッシブRIAAの採用など機能・構成はオリジナルをそのまま踏襲。寸法、重量も変化はない。入力端子はXLR/RCAに対応。これらの端子直近でインピーダンス切換え(100Ω/1000Ω/47kΩ)ができる。出力端子もXLR/RCAを装備し、両入力に対してそれぞれ独立して3段階のゲイン切換えが可能。

Ayre「P-5xe」

P-5xeの聴こえは、ワイドバンド&フラットレスポンスで帯域内に固有のキャラクターがない。低域方向はスッキリと伸張し、中域と高域方向はナチュラル。ストレートな方向性を持つが質感として無機的ではないのがいい。勿論、ステージイメージは非常に優れて音場空間が自然で音像がくっきりする。真面目な音の方向性だ。

3機種目は、構成や機能などにおいて強烈な独自性を持ったモデルだ。ドイツのOCTAVE(オクターブ)「PhonoModule」¥620,000(税別)がそれで、基本的には真空管方式。本機の母体は同社のプリアンプ「HP-500SE」のフォノEQ部。別売される各種各様の「入力モジュール」と「出力モジュール」をユーザーの使用目的・必要性や好みに応じて選択・装着して機能のカスタマイズができるのが大きな特徴。本体のRIAAフォノEQ回路はいずれも双3極管のECC83(12AX7)、ECC81(12AT7)、ECC88(6DJ8)で構成され、電源は完全別筺体から供給される。豊富な入力モジュールや出力モジュールについての詳細は輸入元のフューレンコーディネート社のWEBページやカタログなどを参照してほしい。

OCTAVE「PhonoModule」

ここでは「PhonoModule」+「IN7」+「OUT3」のカスタマイズを提案する。ちなみに「IN7」は、バランス伝送対応・左右独立昇圧トランス方式の入力モジュール。昇圧比は1:20。入力はXLR専用。価格は¥340,000(税抜)。「OUT3」は双3極管ECC88を内蔵した出力モジュール。出力はXLR端子とRCA端子を装備。詳細は省くが、このOUT3を装備するとXLR端子に限るが、出力を可変/2段階切換え/固定という具合で選択が可能である。価格は¥129,000(税抜)。なお、本体には入力モジューは3ユニットまで、出力モジュールは1ユニットのみ装備が可能である。

「IN7」

PhonoModule+IN7+OUT3でカスタマイズした場合の聴こえは、入力モジュールにバランス伝送対応・左右独立昇圧トランス方式のIN7を組合せているから当然だが極めて高SN比だ。帯域感は格別ではないがエナジーバランスは良好でダイナミックレンジも十分に確保される。高域方向は硬質感がなく、どちらかというと穏やかな方向性。妙な密度感や明るさを演出しない中域周辺も自然。低域方向は十分な分解能がありコントラバスでは弦と胴の響きが融合する。

次ページフェーズメーション「EA-1000」を聴く

前へ 1 2 3 4 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE